自分の部屋に、一冊だけ不思議なアルバムがある。
一枚も写真が入っていない代わりに、カットした画用紙がしまってある。
その時その時の気分で色を塗った画用紙。
一色じゃなくて、何色も使って、得体の知れない模様が出来上がっている。
さらに、香りまでつけてある。
これもやっぱり、その時のお気に入りの香りを適当につけたもの。
もちろん、ものによっては香りがもう消えかかっているのもあるけど。
定期的に色を塗って、いつの間にか画用紙の切れ端が増えていったんだけど、
毎度毎度そんなに考えて色を塗ってるわけじゃない。
例えば、色塗りの途中で面倒になってそのままアルバムにしまったものや、
コーヒーをこぼして、その跡が完全に消せなかったものもある。
でも、後から見ると、そんな空白や汚れも何か芸術的に感じて、
一人で満足して眺めている。
もちろん、人に見せたことはない。
客観的に見て、価値のあるものじゃないと思うから。
もっとも、普通の家族アルバムとかだってそれは同じだろうだけど。
でも、ふとした時に思い出してこのアルバムをめくると、
自分に勇気を与えてくれる。
この前、友達が写真を見せてくれた。
世界的な名所で撮った写真で、確かに景色は綺麗だし、映っている人たちも楽しそうだった。
SNSのアイコンにでもしたら、なんか良い感じになりそうな写真だな、
なんて考えて、友達と別れた後、自分もそんな写真を探してみた。
だけどもちろん見つからなくて、気づくと画用紙のアルバムをめくっていた。
あの写真とは比べ物にならないし、そもそも写真ですらないけど、
何故か少しだけ安心できた。
一瞬だけ、「このアルバムを見せてみようか?」なんて頭によぎったけど、
理解されるはずがない、とすぐに気づいて思わず一人で苦笑した。
その代わりに、久しぶりに新しい切れ端を追加しようかと考えて、
とりあえず画用紙だけ切って、その日は寝た。
その画用紙を目の前にして、
何色で塗ろうか、何の画材を使おうか、今回は香りはどうしようか、
と今考えている。
何も思いつかなければ、白紙のまま入れてしまうし、
気分が乗らなければ、用意した切れ端は破り捨ててしまう。
さあ、今回はどうなるかな。