ずいぶん前のはなしです。
以前勤めていた会社は、
レンタルスペースも保持していたので、
常にいろんなお客さまが出入りしていました。
特に多かったのは、
うるさがたのオジサマ。
そんな方々と話す機会がたくさんあったので、
20代だった私は、人生について
たくさんのことを教えていただきました。
その中でも、
特にご自分の美学を持っていて、
ハッキリと意見を主張される方と
たまたまふたりで話す機会がありました。
その方は、本業以外に
建築設計もするという
多芸でセンスが良くて、
お話もとてもお上手なひとで、
おかげで
私はあまり緊張せず、
ゆったりと
お話させていただくことが出来ました。
おまけに、その方、
様々なことに造詣が深くて、
趣味も盛りたくさん!
最近は釣りが楽しくて
と、おっしゃいました。
「ところで、
あなたはどんなことが好きなんですか?」
と、聞かれたので、
読書と映画やお芝居観るのが好きです、
と答えたら、
「それは趣味じゃない、娯楽ですよ。」
と、おっしゃいました。
「趣味というのは自分で積極的にすること。
読書も映画観るのも、受け身だよね。
ただ、ひとが創ったものを眺めてるだけだよ。」
私は少し考えて、
「それって無趣味ってことですか?」
と、聞いたら、
「僕の定義だとそういうことだね。
趣味は人生を豊かにしてくれるよ。
自分の好きなことを探してごらん。」
私は本も映画もお芝居も
大好きで、
それからもらえる感動で、
自分はとても豊かな気持ちになれるのにな…
と、その時は、
その方の真意がいまひとつ分かりませんでした。
おととし頃から、
友人のおかげで、
山に登るようになって、
急にこの「趣味」のはなしを思い出しました。
不器用で、
運動神経も良くない私は
何かを作ったり、
運動したりすることに、
ブレーキをかけていました。
上手に出来ないことは
楽しめない。
コンプレックスから、
こんな思い込みをしていたと思います。
食わず嫌いだったなとも思います。
山に登ろうとしたのも、
友人の話がとても素晴らしかった!のと、
ともかく日常と違う環境に触れたいという、
その時の逼迫した状況からでした。
こんな私でも
なんとか無事に
山に登って降りて来ることが出来るのは、
ひとえに、
この友人のおかげですが、
それでも、
自分でやりとげられたという
大きな大きな感動は、
自分の自信につながりました。
それに、
山の中にいると、
素直になって
いろんなことを想うことが出来ます。
今でも私は、
読書も、映画やお芝居観ることも大好きで、
自分の人生を豊かにしてくれる、
と思っていますが、
山に登ることで得られることは、
たぶんこの方のおっしゃっていた
趣味の醍醐味なのかなと
今さら思っています。
これからもずっと
山登りは続けていきたいですが、
苦手意識があってもいいから、
いろんなことを体感してみたいなと
考えています。