江戸川大学社会学部ライフデザイン学科 2年 相澤真一

 

はじめに

 2008年10月30日に行われた第61回ローカルデザイン研究会では、埼玉県坂戸市で食育サークル“バッタクラブ”を主宰されている川畑輝子さんをゲストに招き、“連携から始まる食育※1と地域作り”をテーマに講演をして頂いた。

 

バッタクラブ

 川畑さんがバッタクラブを主宰するきっかけとなったのが、歯科医院での食事相談である。川畑さんは大学で管理栄養士の免許を取得後、歯科医院に就職した。そこで、小さい子供を持つ親の虫歯と食に関する様々な質問を受けていると、「甘いものを食べさせてないのに何で虫歯になるの?」、「牛乳を毎日飲ませているのに……」等、短絡的な意見が多く、子供の健康を守る基本的な部分である“よく食べ、よく遊び、よく寝る”の三要素が死角に入ってしまっていると感じ、その思いから食育サークル“バッタクラブ”を設立した。

 設立当初は食育という言葉も周知されていない時代、川畑さんが「食の大切さを子供たちに」と持ちかけたところで返ってくる言葉は、「では料理教室を」だった。そこで、川畑さんは独自の料理教室を展開していく。以下はその一部である。

 料理を始める前に、素材を説明するための紙芝居やパネルシアターを作って演じ、栄養教育をする。

 稲作体験や市民農園での作物の栽培等、生産力の育成。

 実際に畜産場へ赴き、ハムやソーセージとなる子豚と触れ合うことによって命の大切さを知る道徳教育。

 こうした活動を展開する事で、子供たちが無意識のうちの食に関する知識を身につけ、健全な食生活を実践すること=食育が実現されている。

 

地域との連携

 また、川畑さんは、バッタクラブ内だけでなくスポーツ少年団との連携や、“元気にし隊”※2のサポート、城西大学での出前講義等、様々な組織と連携して食育の推進活動や食を通じた地域作りをしている。

 

食育を日本の個性、地域の個性へ

今回の川畑さんの話を聞いて私が考えたのは、食育を日本の、そして地域の新しい個性にすれば良いのではないかという事である。

2005年6月10日、食育基本法が成立した。食育によって国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことを目的としている食育基本法は、総理大臣と12省庁の大臣と国家公安委員長までが参加した国家レベルで食事をどうにかしようと捉えた、世界的に例のない法律である。均一化が進み、個性が失われつつある日本において、こうした法律は新しい個性を見出す糸口だと言えるだろう。私たち一人一人が食の意識を高めることで新しい日本の姿が見えてくる。

また、こうした流れの先駆けとも言える川畑さんの今後の発展を心から祈りたい。ありがとうございました。

 

※1……様々な経験を通じて食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てることである。2005年に成立した食育基本法においては、生きるための基本的な知識であり、知識の教育、道徳教育、体育教育の基礎となるべきもの、と位置づけられている。単なる料理教育ではなく、食に対する心構えや栄養学、伝統的な食文化についての総合的な教育のことである。

※2……公募で集まった坂戸市民メンバーで構成される無報酬ボランティア組織。健康づくりのサポートを行っており、健康に関するイベントやセミナーを行っている。