あるシングルライダースジャケットの話
去年から書こうと思いつつ、
ばたばたしていて書きそびれていた
あるシングルライダースジャケットの話。
長めなので革ジャン好きの方以外の方は面白くなくてすみません。
その、あるシングルライダースとは、
大昔に購入したバンソンのF。
懐かしの渋カジ御用達の有名モデルの
スターとかボーンなんかと同じ、アメリカンクラシックス
というラインナップの中のモデルです。
同じシングルでもバンソンで有名なのはこちらのド定番ENF、エンフィールド。
胸と袖はファスナーなのでライダースではありながら
ライニングがオプションだったり、
サイドポケットが普通の箱ポケットだったりでタウンユース寄りです。
まあこれも後にホースハイドのモデルを買っちゃったんですけどね。オレ。
今回とりあげているFは定番のエンフィールドより
本格的ライダースユースなのです。
私とこのFとの出会いはこんな感じでした。
20年以上前、雑誌の広告に目が留まりました。
かっこいいじゃん!
キャメルのキャラクターのラクダのJoe君。
このかっこいいJoe君が着ている服をざっと
私なりに鑑定してみたところ、
まず、穿き込んで退色したジーンズ。
左足の外シームのねじれと
うしろポケットのステッチからリーバイス501のリジット。
こまめに洗濯しながら三年位穿いたモノですね。
足元のエンジニアブーツ。
一番有名なのはレッドウィング。
しかし彼の後ろ姿からヒールのリフトが肌色の樹脂じゃなくて黒。
これでシャフトが501の裾に響くくらい太ければウェスコのBOSS。
しかし501でもすっきり収まっているのであれば、
チペワのエンジニアブーツだろうという所まで読み解きました。
さて、この革ジャン。かっこいいじゃん!
見たこと無いシングルだけど、脇バックルの付き方がバンソンぽい、
これはブーツやジーンズから考察して
きっと現存するモデルに違いない!
欲しいやん!
と、革ジャンを買う時はいつも上野アメ横の
ジャラナか舶来堂に行くわけですが、
当時も早速行ってみると、ジャラナにありました。
やはり現存するモデルだったんだ、さすがオレ。
ジャラナでいつも通り少しおまけしてもらって購入。
当時12万円くらいだったかな。
これが自称革ジャニスト私ひらかわの初バンソンでした。
余談ですがこの時、舶来堂の社長(たぶん中国の人)、
”Fはかっこ悪いからうちでは取り扱って無いアルヨ!”
(アルヨ!は私の頭の中での偏見でそう聞こえただけかも)
と軽くディスられ、
心の中で、”ふん!おめーとは好みが合わねーな”
と思い店をあとにしました。
この社長、ちょいちょい意地悪なもの言いするんですよね。
まあ、のちにこの舶来堂の社長からエアロのハーフベルテッドを
おまけしてもらって買うんですけどね。オレ。
その節はシェイシェイ、ありがとちゃん、という事で。
さて話は戻って最近の話。
去年、2019の10月頃、
見覚えのあるシングルライダースを発見しました。
お、Fじゃん。と思ってましたが
よく見ると、
なーんか違うなー、
!!ん!
ショット?!
バンソンFと同じデザインの他社品シングル発見。
調べると680というmodelらしいです。
こんな特徴的なデザインで他メーカー製なんてアリなんだ!?
インスパイア?いやいや!
オリジナリティなんてクソ食らえって事っすか?
でもショットは安いから嫌いじゃないぞ。
という事で購入してみてバンソンFと比較した所、
細かいところが何箇所か違ってました。
大きな違いは外袖が一枚袖。
背中にバックヨークが無い。
襟裏にスナップが付いてない。
プアな造りの脇ベルトと簡易なその取り付け方法。
ここは逆にハトメなんか要らないから二つ折り切りっぱではなく、
もっとしっかりしたベルトにして向きも外向きに倒すべき。
ライニングはフリースじゃなくてナイロンボア。
着た感じはシェイプがもっさりしてる。
腕は上腕が太い。
この感じ、
ショットらしいなぁ。
革もあのショットなモテっとした革です。
わかる人にはわかりますよね?
動きやすいけど
良くも悪くも包まれてる感が希薄。
こう言うのって先にデザインした
デザイナーならわかる感覚があるんですよね。
湧き出る感性で本当に無から作ったものと
”前から作ろうと思ってて作ったものがたまたま似てた”
という後発のクサい”自称の偶然”。
そして最初に作った者は思うんですよね、
”パクるならせめて劣化させないでくれよ”
とね。
例えば革ジャン好き、バイク好きなら
このバンソンを着ればすぐわかる事なんですけど、
各ディテールの意味するところ。
ガッシリと三枚巻き形成で作った
ウエストベルトの縫い付け向き。
バンソンは硬いベルトを外に倒してあるからこそ
バックルを留めた時にテンションがかかって
きっちり出る、ウエストのホールド感。
キャメルのJOE君の後ろ姿を見てもわかる違いです。
外袖を何枚かのパネルに分けているのは
革の節約じゃなくてフィット感を出す為。
エリ裏のジャンパーホックは
バイクで走行中、風で襟がまくれない為。
取り外しのライニングがナイロンボアのシールじゃなくて
フリースを使用しているのは保温性の高さから。
ライダースはバイクで走って、安全で
バタつかなくて寒くなくてなんぼですから。
何故こういった、革で作った上っ張りは
”ライダースジャケット、モーターサイクルジャケット”
と呼ばれるのか、考えながら作らないとね。
うわべをなぞっただけのコピーをするとこんな事になるんだな、
と、思いました。
そんな事を言いながらも
バンソンはバランスが取れた良いメーカーですが、
価格抑えめのショットも良いメーカーだと思います。
今回のFもバンソンは10万円以上、ショットは10万円以下ですから
手に入れ易さではショットは頑張ってくれているところですよね。
事実私が17歳の頃、人生二着目は良い革ジャンが欲しくて
少ないバイト代を貯めてアメ横に行って
一日中見て回ってなんとか買えた革ジャンは
6万円くらいのショットでしたし。
買えてうれしかったし。
手に入れやすいって重要ですよね。
でも今回のこの同型2着の違いは
この両メーカーの違いを
凄く表してる気がしました。
と、
とあるシングルライダースジャケットのお話でした。