1960年代のスーパースポーツモーターサイクル、
メグロK3から連綿と受け継がれるWの系譜のバイク
それがW800。
鉄フレーム、直立した360度クランクの
空冷並列二気筒という伝統の構成です。
スワローハンドルとビキニカウル仕様がcafeというモデル。
先祖バイクのW1とかW3はOHVですが、
同じOHVでプッシュロッドがドーンと外に出ている
ハーレーとかとは違って
シリンダーの内側にプッシュロッドが貫通していて
W1系のエンジン外観はスッキリしています。
しかしこのW800はOHVではなくてOHCのくせに
わざわざシリンダーの外側横に
ふっといシャフトを通して
ベベルギアを回してカムを駆動させています。
ご先祖様のW1とかと見た目も変わってしまうのに
何でこんなめんどうな事やってるのか?
と思っていたけどエンジンをかけてみると
ここから出るメカノイズを聴いて、
あえてこの機構にして
W1のノイズに似せているのかなと思いました。
2021年式のエンジンはユーロ4規格の為か
排気音もノーマルでもそこそこ良い感じです。
サイレンサーはキャブトンマフラー型。
キャブトンマフラーの名称のもとは
名古屋あたりの古いバイクメーカーで
「キャブトン」の意味も面白かった
と思ったけど忘れた。
CABTONのCがCAMEでOが大阪だった気がする。
ググって下さい。
馬力も50そこそこ、ロングストロークだしフライホイールも重く
吹け上がり、吹け下がりともに穏やかなエンジンで
気持ちいい速度域は80キロ以下くらいです。
何よりブレーキもそこまで効かないので
のんびりどこまでも走るのが向いてます。
重量は220キロくらいでそれなりにあるけど
フレームのパイプの肉厚を増やして剛性を上げているからか、
もしくは重量配分が最新のコンピューターで
計算しつくされているかなのかわからないけど
むかしの空冷鉄フレームの220キロくらい車重のあるバイクのような
停車時傾けるとフロントとリアが
反発し合いながらよじれる
みたいな重さは感じないです。
車幅もスリムなので跨ると体感だと20キロくらい軽く感じます。
むかしのバイクのドン臭さを巧妙に演出した現代のバイクって感じです。
スポークホイルのチューブタイヤはソフトな乗り味の演出に貢献してます。
乗った感じはむかーしのバイク風、
あくまで風。
高速道路で車線変更したりするとワンテンポ遅れて動く感じ。
コーナーはフロントがタイヤ一本分くらい外を回っていく感じで
後ろ乗りでおもに二次旋回で曲がっていくバイクだと思いました。
80年代のバイクブームを体験した人にはしっくりくるのではないでしょうか。
パワーもフラットでゆったりしていますが
車体はわりと今風にかっちりしていて
あくまで昔風の演出的味付けなので
昔のバイクみたいに簡単に破綻する事が無く
安心して走れます。
このW800、インジェクションとは言え、
スタート直後の冷間時に
アクセルを大きめに開けるとノッキング音がするので、
もしかしてこの個体の故障かと思ってカワサキプラザの方に伺ったら
”まさにノッキングです、空冷のそういうエンジンなので
暖まるまで優しく開けて下さい”
と聞いて、
私実は、、、
色々人様に言えない事があるのですが、
その中のひとつで差し障りがあまり無さそうな事なので
今ここで告白すると、実は今までバイクを28台乗り継いで来ましたが、
もちろん大切にはしていましたが、
ほとんどのバイクはモノ、機械、としか思えなくて
大した愛情も持っていなかったのです。
しかしプラザの人の言葉を聞いて、このW800、
冷えてる時はいたわらないといけないなんて、
バイクにもかかわらず、なんか可愛くてときめいてしまいました。
そう思うと360度クランクのボコボコした音とかも愛おしく感じてしまい、
走行音だけを録音して聞いたりして、
なんか新しいフェティッシュの扉を開いてしまいました。
ここのところずっとメガスポーツとかスーパースポーツとか
バッキバキにキマってしまっているバイクばかり乗っていたので
とても新鮮な体験でした。
しかしそんな可愛いW800をクローズドコースに持ち込んでみると、
最高速も170か180くらいしか出ないのですが
120くらいをオーバしてーコーナーに入ると、
何よりタイヤの剛性が負けてわかりやすくヨーイングを起こします。
言い方を変えるとフレーム>エンジン>足廻りの順に強いです。
まあ言わずと知れたそういう演出のバイクです。
思ったんですけど遅いトラックの後ろになっても
追い越さなくても
”まっいいかっ”と思える
数少ない大型バイクです。
私も昔乗っていたハーレーもまた、のんびり行こう、
と思えるバイクでしたがW800はかなり感じが違って
あそこまで始祖鳥っぽくなくて
Tレックスくらいの古さという感じです。
迷ったら両方乗るべきバイクです。