基本的に好きな言論人で、用済みになるまで一生ついて行きたい識者ですが。
その宮崎哲弥さんにも賛同できない部分があるので記しておきます。
トータルで見ると、8割9割くらいは支持しているので、そこは誤解無きようお願いします。
宮崎さんの民主党への批判は妥当だと思います。私も、可能であれば民主の解党的再編成に期待したい。しかし宮崎さんが考察しているように、野党がリベラル勢力としてまとまる意味があるのでしょうか。すでに公明も含めた与党勢力が左右にウイングを広げているではありませんか。宮崎さん自身が自民党長期政権の構想(党内での左右による疑似政権交代)を語っておられたことを見ても、自民党単独ですら左右にウイングが開いていることに異論はつかないでしょう。自民と民主の差は政党ガバナンスの強さであり、民主党が左右にウイングを広げていること自体が問題とは言えません。
野党を再編し、その新しい政党ではイデオロギー的な重要案件では党議拘束を外し、改革勢力としてまとまることで党の分裂を防げばよい。そして与党の踏み込めない改革案で国民に分かり易い差異化を示し、そこで勝負すべきです。与党だけでなく官僚にプレッシャーをかけ、一番重要なアベノミクスのブラッシュアップを進めることが、国民にとっての最大利益となります。
これに対しては、改革そのものを悪く印象付けたい宮崎さんには異論があるかもしれません。
4月14日の放送で宮崎さんが仰った江戸時代の改革の例えは支持できません。あの時代は石高制です。現物支給の武士にすれば、インフレだと経済基盤が狂います。宮崎さんは「質素倹約」が道徳的に良いからと、それが経済的にも良いとは限らないと論を展開しましたが、当時の改革の動機に道徳など関係なく、むしろ武士の不道徳ゆえに町人からの借金を踏み倒しているではありませんか。さらに現代の経済理論を江戸時代に当て嵌め改革が間違いであるとすることも、例えとして不適切な部分があります。引き締めをしないと幕府がもたず、戦国時代に逆行すれば経済はもっと悲惨な状態に陥ったでしょう。従って当時としては改革に妥当性があったと言えます。そこを踏まえずに改革を悪と結論することは、半ば虚偽の論法を用いた印象操作なのです。
もちろん金融引き締めの負の側面を語ることは妥当性があるでしょう。当時の町人経済への影響が現在の経済学の正しさを証明していることも、ご指摘どおりです。リフレ政策の正しさを確認する材料として、江戸時代の経済を引用する意味はあります。そして現代、「改革」の美名のもとにおかしな政策が語られることもあります。それらの点は宮崎さんに賛成です。
しかし現在の全ての改革勢力が、おかしいわけでもないでしょう。例えば維新の江田氏はみんなの党を結成する前から財政規律に対して慎重の立場です。景気を損なわない様、必要な財政出動は認めています。その上での「身を切る改革」です。行き過ぎた質素倹約で経済を失速させる愚を戒めながら、是々非々で取り組んでいます。ですので維新がパワハラ・マタハラ・女学生へのLINE脅迫などロクデナシ議員の寄せ集めで問題だらけでも(応援したいのに号泣)、改革勢力の全てが間違いとするのは行き過ぎです。維新が国民に税金を取り戻す「ねずみ小僧」的な役割を果たす限り、たとえ盗人兼チンピラ的なエモーショナルな雰囲気が漂っていても、少なくとも3分の理くらいはある改革政党です。
宮崎さんが改革の失敗ばかりあげつらい、国民にとって必要な改革があることから目を逸らさせてしまっては、官僚の思う壺でしょう。
民間出身でしがらみのない野党議員は、農業政策や郵便事業の規制を指摘し追及しています。年金制度に於ける官僚説明の矛盾も指摘しています。話に具体性と説得力があり、国民の利益を考えて戦っている様子を見て、口先商売の言論人が情報取得先の官僚を批判しない姿より、よほど信頼感があります。
自民党が官僚へのガバナンスのため摩擦を避け、記者クラブの記者や言論人も馴れ合いで批判を自粛すると聞きます。ですので与党議員とそれに近しい言論人には、官僚からの毒入り情報が流布されているとみるべきです。今の宮崎さんの様に、傍から見ていて明らかにおかしいことを語っている人には、外からそれを指摘しないといけません。
安倍総理の米国演説に於ける海外公約についても、宮崎さんの言には不足があります。
「日本を元気にする会」(国政政党)の山田太郎参議院議員は、安倍総理が中東演説で約束した対テロ資金について、これも国会の予算審議前だったことを指摘しています。自民党の擁護者が、野田元総理の消費税導入海外公約を引用し民主党に意趣返しをしたとして、それでもって今回の件を「撃ち方止め」にしていいわけはありません。今、安倍総理のやってることは、これはこれで重要問題だと認識せずに民主国家と言えるのでしょうか。
民主党がブーメランを喰らって頼りにならないなら余計に、言論人こそが自民党を大いに批判すべき時ではありませんか。ネトウヨ的なリスナーに媚びることが優先とは情けない。さらには疑似政権交代案ような、市民目線から外れがちな宮崎さんの言論に危うさを感じています。
いくら産経の番組とはいえ、民主主義を優先しましょうよ。