見直して欲しい、IUDのよさ
IUDとは柔らかいプラスチックでできた器具で、子宮の中に挿入することによって避妊効果を発揮します。「子宮の中に異物を入れる」ということが敬遠されていますが、ピルとは違う種類のメリットがあります。
詳しい説明の前に
IUDの歴史について
今でも「リング」と呼ばれるIUD
1930年にドイツの産婦人科医グレーフェンベルクが、それを改良して1932年に日本の太田典礼がリング状のIUDを考案したのが「リング」の始まりです。どちらの医師も避妊が当時の政策に反するものとして投獄されています。太田リングはその後も使われ続け、リングという名称が定着しました。
ちなみに現在日本で使われているIUDは魚の骨のような形、あるいはT字型をしています。
太田リング生みの親、太田典礼とは
1922年、アメリカからサンガー夫人が来日し、育児制限の講演をしました。その影響を受けた太田博士は、後の衆議員議員、加藤シズエと共に育児制限運動に参加し、婦人科医として太田リングを考案しました。ところが、これが、富国強兵を進める国策に反するとして投獄されてしまいました。敗戦後は国会議員に当選し、妊娠中絶を合法化する優生保護法を立法化しました。
太田氏について、おまけ
極端な思想の持ち主で、今なら大バッシングを受けるような発言を繰り返していた人です。安楽死運動をすすめ1976年に「安楽死協会」を発足させましたが、安楽死をさらに進めて、老人の自殺を提案したり、重症の障害者を社会発展に貢献できない優先性のない人だと発言したり、植物人間に人格がないなどと言った人です。「安楽死協会」は「日本尊厳死協会」と名を変えました。晩年は体調をくずし療養生活をされ、ご自身は自殺なさらず85歳で急逝されています。
アメリカにおけるIUD
1960～70年代、アメリカではいくつものIUDが発表されました。このころのIUDの不具合による合併症の記憶がアメリカ人には深く残っているようで、アメリカでは未だに医師にも患者にもIUDに対する誤解が多いようです。IUDとrumor（噂）で検索すると都市伝説のような誤解の数々が出てきます。例えば、硬いプラスチックの一部が子宮の入り口にとび出ているせいで、性交時にペニスの先に突き刺さってしまうような製品が事実あり、それが未だに噂となって残っています。アメリカでIUDが敬遠される最大の原因は1970年に発売されたDalkon Shield という製品です。IUDの尻尾の部分（除去時に引っ張るための紐）の材質が感染（子宮内～骨盤内感染）の原因になったのですが、そのことが判明して発売中止になった後でも1980年代初めまで一般に知らされることがなく、感染症になった女性の多くが訴訟を起こしました。IUDは怖いものという印象のせいで、IUDの普及率は1981年から1995年までの間に7分の1くらいに減りました。
IUDが敬遠された時代を経て
現代のIUDは安全で、特に新しいIUDはピルよりも避妊効果が高く、何よりもピルで問題になる血栓症のおそれがないという点が大きなメリットです。
世界のIUD使用状況
2010年のデータで、世界中で1億8000万人以上の人がIUDを使用しています。世界の平均でみた避妊方法の割合の第1位は女性の不妊手術で30％、そして第2位がIUDで23％、第3位がピルで14％です。
日本でのIUD
1998年のデータで、日本のIUD普及率は約3.1％です。非常に低いです。
世界的には中国の普及率が高く約30％、1億1500万人以上の女性が使用していると報告されています。また、他の発展途上国で27％と高く先進国全体で6.7％と低いという大きな特徴がありますが、先進国の中でもノルウエーやスウェーデンといったスカンジナビア諸国の普及率が27％と高いのが異色です。ノルウエーやスウェーデンのIUD普及率が高いのは、たぶんIUDに対する正しい知識が伝えられているからだと思います。
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