父は一酸化炭素中毒から退院後は、1年以上ケアホームにステイ。
その間、往復250キロを日帰りし通う日々でした。
子供は小学校入学したて。
実家に宿泊できない状態で、自分の農業関係組織の運営もありました。
当然、実家の火災の処理をするゆとりもありません。
また、父が自分で行いたいと頑固に言い張り
ゴミ処理もできませんでした。
実家の片付けをされている方ならご経験があると思いますが、
「勝手にモノを捨てられては困る」というアレです。
家中真っ黒ですから、できるところから煤を掃除しましたが
これが見た目以上に困難でした。
掃除しても掃除しても、空気がめぐる以上、
煤は舞い続けます。
一見きれいに見えても、空気が動く限り煤がめぐるのです。
駄目にした掃除機は3台。
どんなにマスクをしても鼻の中が真っ黒になります。
壁紙の柄のようなごく微妙な凹凸にも積もっています。
2〜3時間掃除するとくたくたになってしまいます。
今思えば、煤にはダイオキシンが含まれているので
具合が悪くなるのです。
ゴミは産業廃棄物扱いです。
ところが、消防署で罹災証明を取っていないので
ゴミを実家がある自治体で処理できません。
バタバタで日々過ぎていく中で、
父から真夜中に電話。
認知症の居住者だらけのケアホームにいるのが辛いと言って
生まれて初めて父が泣くのを聞きました。
父が戻れる部屋一つと最低限の場所などを懸命に清掃しました。
風呂場とトイレは、プロに頼みました。
父も徐々に認知症状が出て、ますます片付けをできなくなりました。
きれいなスリッパで煤の残る部屋に行ってしまい、
煤が再び家中に回り始めました。
そして、父は帰宅して数年で他界しました。
ようやく片付けができるようになって出てきたのが火災保険証。
保険会社に連絡しましたが、罹災証明がないのです。
そこで新たに被害リストの提出を求められました。
お風呂場もこんな。掃除しても、染み込んだ汚れの一部は取れません。
プロでも完全にきれいになることはありません。
続く。