目次

命中率を上げる宣言特技

命中率を上げる常時特技

《牽制攻撃》とは

《斬り返し》とは

《牽制攻撃Ⅰ》vs《斬り返しⅠ》

命中率と期待値の関係

どちらを習得すべきか


命中率を上げる宣言特技

この記事では、sw2.5の宣言特技《牽制攻撃》《斬り返し》について、共通点や相違点を比較し、どちらを選ぶべきか検証します。


戦士系技能を習得するキャラクターにとって、攻撃を命中させることは重要です。ですが、初期作成は特に命中力が不足しがちです。


たとえば、人間のファイターのサンプルキャラクター(→「Ⅰ」26ページ)は、命中力5です。


初期作成卓のボス戦で登場することが多いボルグ(→「Ⅰ」441頁)に対し、近接攻撃で命中を試みるなら、能動側受動側は以下の通りです。


能動側:PC(命中力判定)

受動側:魔物(回避力判定)


PCの戦士系技能レベルは2、器用度ボーナスは3です。


能動側の命中力判定の達成値は、5+2dです。


受動側の回避力判定の達成値は、11(固定値の場合)です。


能動側(PC)は、出目7以上で攻撃を命中させることができます。


出目が7以上、つまり2dの期待値なら、なんとか攻撃を命中させることができます。


上記の例において、命中率は約58.33%です。


サンプルキャラクターは、器用度の2dの出目が11と上振れているため、同じ構成なら命中力4になる可能性が高いです。


この場合、出目7では当たりません。


したがって、命中率を上げる工夫が欲しいです。


武器攻撃の命中率を上げる代表的な手段は以下の通りです。


・戦士系技能レベルを上げる

・その他系技能を習得する

・命中力を上げる種族特性を使用する

・命中力を上げる魔法を行使する

・命中力を上げる武器を選択する

・命中力を上げる特技を習得する


この記事では、特技について掘り下げます。


命中率に関係する特技のうち、初期作成から習得することができるのは、以下の2つとなります。


《牽制攻撃》

《斬り返し》


上記の宣言特技は、いずれも武器による攻撃の命中率を上げることができます。


魔物のサイコロを振るか、固定値を使うかはGMの任意です。この記事では検証の簡略化のため、魔物の以下の項目を固定値で処理するものと仮定します。


・命中力

・回避力

・生命抵抗力

・精神抵抗力

・一部の特殊能力


次に、命中率を上げる常時特技について記します。


命中率を上げる常時特技

命中率は宣言特技だけでなく、常時特技で上げることもできます。


《命中強化Ⅰ》の詳細は、以下の通りです。


・冒険者レベル7以上

・あらゆる命中力判定に+1のボーナス修正


また、冒険者レベル13以上の作成では《命中強化Ⅱ》に置き換えが発生します。


・冒険者レベル13以上

・あらゆる命中力判定に+2のボーナス修正


《命中強化》は条件やリスクがなく便利ですが、習得可能レベルが高いのが難点です。


作成レベルが上がるほど、命中率を上げる手段は他にも増えていきます。


常時特技は、宣言特技にはないメリットもあります。


ほとんどの宣言特技は「1回の●●(例:近接攻撃)」に適用されます。


※例外はグラップラーが習得可能な《インファイト》等です

《インファイト》も命中力を上昇させる宣言特技ですが、習得が5レベル以上のグラップラーのみで条件も厳しく、今回の考察からは割愛します


したがって、攻撃回数が増えるグラップラーや《両手利き》を習得しているマギテックシューターは、常時特技の恩恵が大きくなる傾向があります。


したがって、下記の宣言特技は前述の攻撃回数の多くなる構成では採用される可能性が低いです。


《牽制攻撃》

《斬り返し》


以上を踏まえた上で、まず《牽制攻撃》について解説します。


《牽制攻撃》とは

《牽制攻撃Ⅰ》の詳細は、以下の通りです。


・近接、遠隔攻撃を行うときに宣言

・攻撃1回に有効

・命中力判定に+1のボーナス修正

・クリティカル値+1


攻撃1回に有効で、近接・遠隔攻撃を問わず、宣言することができます。


クリティカル値が上昇し、命中時のダメージ期待値はわずかに悪化します。


また、冒険者レベル7以上で《牽制攻撃Ⅱ》に置き換えが発生します。


変更点は以下の通りです。


・冒険者レベル7以上

・命中力判定に+2のボーナス修正

・クリティカル値の上昇なし


また、冒険者レベル11以上になると《牽制攻撃Ⅲ》に置き換えが発生します。


・冒険者レベル11以上

・命中力判定に+3のボーナス修正

・クリティカル値の上昇なし


《牽制攻撃Ⅰ》は初期作成から習得できます。


ほとんどの宣言特技は「1回の●●(例:近接攻撃)」に適用されます。


《牽制攻撃Ⅰ》も例外ではありません。


命中に必要な出目と命中率の関係をまとめました。


命中に必要な出目と、能動側の試みが成功する確率の関係は、以下の通りです。

 

必要な出目 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3
命中率(%) 2.78 8.33 16.67 27.78 41.66 58.33 72.22 83.33 91.67 97.22
命中率(%) 8.33 16.67 27.78 41.67 58.33 72.22 83.33 91.67 97.22 97.22


※必要な出目:宣言特技なしで命中に必要な出目

※上段:宣言特技なし

※下段:《牽制攻撃Ⅰ》を宣言


宣言特技なしで出目7で命中すると仮定して、命中率の変化を計算します。


宣言しない場合→宣言する場合の変化)


《牽制攻撃Ⅰ》58.33%72.22%


《牽制攻撃Ⅰ》を宣言すると、命中率は約1.24倍に増加します。


宣言特技なしで出目7で命中するなら《牽制攻撃Ⅰ》を宣言すると必要な出目は6です。


《牽制攻撃Ⅱ》なら、出目5で命中します。


《牽制攻撃Ⅱ》の命中率は83.33%です。


《牽制攻撃Ⅲ》を宣言するなら出目4です。


《牽制攻撃Ⅲ》の命中率は91.67%です。


次は《斬り返し》の考察です。


《斬り返し》とは

《斬り返しⅠ》の詳細は、以下の通りです。


・「用法:2H」の武器で近接攻撃を行うときに宣言

・攻撃1回に有効

・攻撃が回避された場合は、もう一度同じ武器で同じ対象に命中力判定を行う

・複数を対象に攻撃を行う場合は、攻撃を回避された対象すべてにもう一度命中力判定を行う


攻撃1回に有効で、《牽制攻撃》と異なるのは「用法:2H」の武器でなければならない点です。


また、冒険者レベル7以上で《斬り返しⅡ》に置き換えが発生します。


変更点は以下の通りです。


・冒険者レベル7以上

・1回目で命中するとダメージ+4

・複数を対象に攻撃を行う場合は、1回目の攻撃が命中した対象から任意の1体を選んでダメージ+4


余談ですが、《全力攻撃Ⅰ》《全力攻撃Ⅱ》への置き換えが冒険者レベル9です。


したがって、冒険者レベル7または8の作成なら《斬り返しⅡ》《全力攻撃Ⅰ》の上位互換となります。


《斬り返しⅠ》は初期作成から習得できます。


ほとんどの宣言特技は「1回の●●(例:近接攻撃)」に適用されます。


《斬り返しⅠ》も例外ではありません。


命中に必要な出目と命中率の関係をまとめました。


命中に必要な出目と、能動側の試みが成功する確率の関係は、以下の通りです。


必要な出目 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3
命中率(%) 2.78 8.33 16.67 27.78 41.66 58.33 72.22 83.33 91.67 97.22
命中率(%) 5.48 15.97 30.56 47.84 65.97 82.64 92.28 97.22 99.31 99.92


※必要な出目:命中に必要な出目

※上段:宣言特技なし

※下段:《斬り返しⅠ》を宣言


出目7で命中すると仮定した場合の命中率の変化を計算します。


宣言しない場合→宣言する場合の変化)


《斬り返しⅠ》58.33%82.64%


《斬り返しⅠ》を宣言すると、命中率は約1.42倍に増加します。


出目7でなんとか命中する状況では、通常なら五分五分といったところです。


《斬り返し》を宣言すると命中率は8割を超えます。


両手武器を装備しなければならない、という条件こそありますが、初期作成ならリルドラケンのファイターで《斬り返しⅠ》を習得すると、高火力でかなり命中が安定します。


〈メイス〉以外の武器を使いたい人にもお勧めな宣言特技です。


次は、2つの宣言特技の確率まとめ表です。

《牽制攻撃》vs《斬り返し》

確率表を統合しました。


宣言特技なしで命中に必要な出目が11以上なら《牽制攻撃Ⅰ》を宣言する方が命中率は高くなります。


必要な出目が10以下なら《斬り返しⅠ》を宣言する方が命中率は高くなります。


必要な出目 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3
命中率(%) 2.78 8.33 16.67 27.78 41.66 58.33 72.22 83.33 91.67 97.22
命中率(%) 8.33 16.67 27.78 41.67 58.33 72.22 83.33 91.67 97.22 97.22
命中率(%) 5.48 15.97 30.56 47.84 65.97 82.64 92.28 97.22 99.31 99.92


※必要な出目:宣言特技なしで命中に必要な出目

※上段:宣言特技なし

※中段:《牽制攻撃Ⅰ》を宣言

※下段:《斬り返しⅠ》を宣言


ほとんどの戦闘で《牽制攻撃Ⅰ》よりも《斬り返しⅠ》の方が命中率は高くなるはずです。


《牽制攻撃Ⅰ》を宣言するケースと《斬り返しⅠ》を宣言するケースの命中率の比較は次の通りです。


宣言しない場合→宣言する場合の変化)


《牽制攻撃Ⅰ》58.33%72.22%

《斬り返しⅠ》58.33%82.64%


宣言特技を宣言しない場合に命中力判定で必要な出目が7場合、以下のことが言えます。


《牽制攻撃Ⅰ》《斬り返しⅠ》の比較なら、後者の方が命中率は高いです。加えて、クリティカル値の悪化もありません。


次に、命中率と期待値の関係について考察します。


命中率と期待値の関係

武器攻撃をするとき、ダメージの期待値は


(命中時のダメージ期待値)×(命中率)


で求められます。ここで大事なのは、命中率が●倍になればダメージ期待値も●倍になる点です。


《牽制攻撃Ⅰ》を宣言する場合はクリティカル値が上昇するため、命中時のダメージ期待値が下がります


命中に必要な命中力判定の2dの出目が7の場合、前述の宣言特技を宣言すると、命中率の上昇率は以下の通りです。


宣言しない場合→宣言する場合の変化)


《牽制攻撃Ⅰ》:1.29倍

《斬り返しⅠ》:1.42倍


《斬り返しⅠ》の変化は非常に大きいです。次に、必要な出目が5の場合の変化を検証します。


必要な出目が5のとき《牽制攻撃Ⅰ》を宣言するケースと《斬り返しⅠ》を宣言するケースの命中率の比較は、次の通りです。


宣言しない場合→宣言する場合の変化)


《牽制攻撃Ⅰ》83.33%91.67%

《斬り返しⅠ》83.33%97.22%


これを踏まえて、与えるダメージの期待値の変化率を計算します。


宣言しない場合→宣言する場合の変化)


《牽制攻撃Ⅰ》:1.1倍

《斬り返しⅠ》:1.17倍


出目7でなんとか命中する場合と比較すると、出目5で命中するなら期待値の上昇率は控えめです。


次に、必要な出目が9の場合の変化を検証します。


必要な出目が9のとき《牽制攻撃Ⅰ》を宣言するケースと《斬り返しⅠ》を宣言するケースの命中率の比較は、次の通りです。


宣言しない場合→宣言する場合の変化)


《牽制攻撃Ⅰ》27.78%41.67%

《斬り返しⅠ》27.78%47.84%


これを踏まえて、与えるダメージの期待値の変化率を計算します。


宣言しない場合→宣言する場合の変化)


《牽制攻撃Ⅰ》:1.5倍

《斬り返しⅠ》:1.72倍


出目7で命中する場合と比較すると、命中率の上昇率は大きくなります。


(経験的に自明のことかもしれませんが)攻撃を外す確率が高いほど、命中率を上げるべきです。


「命中率を上げるかダメージを上げるか」という代表的な状況は、習得する練技を決める時です。以下のような構成のキャラクターで「どの練技を習得するか」を考えてみます。


初期作成

種族:リカント(生まれ:斥候)


グラップラー2

スカウト1

エンハンサー1


命中力なら【キャッツアイ】、ダメージなら【マッスルベアー】を習得します。命中力+1ダメージ+2の選択で、それぞれが機会費用となります。


能力値、特技は以下の通りです。

※ポイント割り振り(→ET54頁)で作成

※武器は〈チェインスティック〉想定(命中+1、威力15、C11)


A:13+5=18

B:13+5=18

C:5+7=12

D:5+8=13

E:7+7=14

F:7+5=12


《武器習熟A/格闘》《追加攻撃》


上記の構成で練技を含めない命中力は6、ダメージ期待値は約23点([獣変貌]の効果を含む)です。仮想敵は、ボルグ(レベル3の蛮族)です。


ボルグは回避力4(11)、防護点3です。


命中時の適用ダメージ期待値は約17点です。魔物の回避力を固定値で処理するなら、必要な出目は6(命中率72.22%)です。


命中率を考慮した適用ダメージの期待値を計算します。


●練技なし

約17×0.722=約12

●【キャッツアイ】使用

約17×0.833=約14

●【マッスルベアー】使用

約21×0.722=約15


グラップラーは攻撃回数が多く、出目6で命中するならダメージを優先した方がいいという結論になりました。


ただ、同じダメージ+2の重みはレベルが上がってダメージが増えるほど小さくなります。高レベル作成で命中に必要な出目が6なら、命中率を上げるべきです。


た、より高レベルの魔物がボスとして登場するシナリオも、魔物の回避力が上昇するため、命中率の優先度が高くなります。


余談ですが、前衛がこのキャラクターの場合、後衛がドルイドだと【ウイングフライヤー】が行使できて非常に強力です。


どちらを習得すべきか

極端に命中率が低くなるような状況を除くほとんどのケースで《斬り返しⅠ》を宣言する方が、命中率は高くなります。


したがって、条件さえ満たすなら《斬り返しⅠ》を習得するのが得策です。


注意点として《斬り返し》を宣言できるのは「用法:2H」の武器で近接攻撃をする場合に限られます。


つまり、遠隔(射撃、投擲)攻撃や、「用法:1H」の武器(片手武器)を用いた近接攻撃で《斬り返し》を宣言することはできません。


したがって、満たすべき条件が厳しい宣言特技であると言えます。


なお、冒険者レベル7以上の作成なら《斬り返しⅡ》を宣言した攻撃で、1回目の命中力判定で攻撃に成功するとダメージに+4します。


中〜高レベル帯では、戦闘準備や補助動作で真語魔法【ブリンク】を行使する魔物に対して《斬り返し》は有効な対策となります。


《牽制攻撃Ⅲ》は多くのケースにおいて《斬り返しⅡ》よりも高命中率となりますが、前述の理由から、条件さえ満たすなら《斬り返し》を習得すべきというのが個人的な見解です。


また、レベル帯が上がるほど、宣言特技以外の手段で命中率を補う手段が増えていきます。


次回