目次

戦闘のバランス調整

典型的な敵の陣容

なぜ魔法の敵を出すのか

ボス戦の具体例

まとめ


戦闘のバランス調整

ファンタジー系TRPGにおいて、戦闘は重要な要素です。

 

特に、オリジナルシナリオや既存のシナリオをキャンペーン卓に合わせてレベル調整するような場合、GMは敵の編成をよく考える必要があります。

 

魔物は、大きく分けて物理ダメージを主体に戦うタイプと、魔法ダメージを主体に戦うタイプの2つがあります。

 

前者の場合、PC側の前衛は回避力を上げて攻撃を回避するか、防護点を上げて被ダメージを減らすことで対策します。

 

後者の場合、防護点で魔法ダメージを軽減することはできません。

 

したがって、魔法ダメージは物理ダメージよりも対策手段が少なく、GM側からすると調整が必要な要素となります。

 

魔法を行使する魔物は調整が大変なので、GM初心者のうちはできるだけ避けて選定するのも一つですが、中~高レベル帯の戦闘においては避けては通れない要素です。


その理由と、魔法を行使する魔物を選定する際のコツについて解説したいと思います。


典型的な敵の陣容

ルールブックやサプリメントに掲載されている公式シナリオでは、ボス戦において複数の魔物が登場するのが一般的です。


よくある例は、1体のボスと、(PC人数-1)体の取り巻きが登場するものです。


複数の敵が登場することで、「どの敵から倒すか」といった戦略の分岐が生まれるといったメリットがあります。


また、PCと同様に敵も前衛と後衛に分かれてパーティを組んでいれば、それらしさが生まれるでしょう。

※たとえば、人族の神官はレベル4で【セイクリッド・ウェポン】を習得します。蛮族側の神官が【ヴァイス・ウェポン】を行使すると、人族対蛮族の構図が描写できます。


もっとも、複数の敵を出すとGM側の処理が増えるため、処理が煩雑になることを望まないGMはオリジナルシナリオで少数の敵を出す傾向があります。

 

ただ、個人的な見解として言えるのは、できる限り公式シナリオの布陣に近い編成で戦闘を行った方がバランスがよくなる可能性が高いということです。

 

また、技能によって得意な敵、苦手な敵が分かれることがありますが、多様な敵を出すことでそれぞれのPCに活躍の機会を与えられる可能性があります。

 

また、魔法に関していえば、敵の中で魔法を行使するのは1体と決めておくのが無難と考えています。

 

なぜ魔法の敵を出すのか

低レベル帯の戦闘においては、PCレベル+1~2レベルの物理ダメージ主体の敵が全く脅威とならない展開は考えにくいです。

 

したがって、緊張感のあるボス戦を演出する点で、魔法を行使する敵は必須ではありません。

 

ただ、ある程度レベルが上がってくると、物理主体の敵が脅威とならなくなる可能性があります。

 

目安は7レベル以上の作成です。

 

5レベル以上のPCは、常時特技《武器(防具)習熟S/○○》を習得することが可能です。

 

物理タンク型のファイターであれば、7レベル以上の作成なら高確率で《防具習熟S/金属鎧》を習得しているでしょう。

 

経験点を500点ずつ使用して、練気【ビートルスキン】と賦術【バークメイル】を習得すれば、防護点が20点を超えることも珍しくありません。

 

《タフネス》を自動習得したファイターはHPが増加するため、物理ダメージが20点以上軽減されるような状況では物理主体の魔物では緊張感のない戦闘となってしまうでしょう。

《全力攻撃Ⅱ》を習得した魔物なら相応のダメージを与えることができますが、その場合グラップラーやフェンサーが回避に失敗すると一撃で残りHP一桁まで削られることも多く、調整が悩ましいところです


また、より高レベルの作成では回避タンク型の回避力が大きく上昇するため、武器攻撃がまともに当たらないような状況も増えてきます。


予測可能性が高い戦闘は、途中から流れ作業になる可能性があります。

※筆者はそう考えるので予測可能性が低い急戦の展開を好みますが、淡々と続く戦闘でクリティカルを狙ってダイスを振るのが好きな人もいるので、最終的には好みによる、といったところです


そこで浮かび上がる選択肢が、魔法を行使する魔物の採用です。


魔法ダメージは防護点で軽減することができず、魔法行使は回避力判定ではなく精神抵抗力判定を要求するため、回避盾型に完封される可能性も排除することができます。


ダメージを与える魔法の多くは「抵抗:半減」です。


着実にダメージを与えることができるため、抵抗されてもある程度は脅威となるでしょう。


一方、多くの魔法はダメージ決定でクリティカルする可能性があることも踏まえると、敵の中で魔法を行使するのは1体に留めておくのが無難です。


また、「剣の加護/運命変転」は魔法行使と組みわせると非常に強力です。


「剣の加護/運命変転」はPC側にとってはゲーム内で1日に1回の制限ですが、敵として登場するなら実質1戦闘に1回の特性であることに留意しましょう。


邪教を崇める神官など、人間の敵に魔法を行使させるときは特にバランス調整に注意しましょう。


ボス戦の具体例

7レベルのPC3~5人向けのシナリオのエネミー編成を考えてみました。


地下迷宮の遺跡調査の依頼を受けてやってきたPC達は、道中の戦闘や罠を乗り越えながら、最奥に辿り着くことができました。


扉を開けると、中には部屋の奥には一際大きな宝箱と、4体の何者かが見えます。


重装歩兵のような人型の魔物が3体と、空飛ぶ魔法使いがあなた達を認識すると襲い掛かってきます。


 魔物側(4体)

(8レベル)スペクター(→Ⅱ413頁)

(7レベル)スケルトンガーディアン(→Ⅱ412頁)×3

※スケルトンガーディアンは(PC人数-1)体

※剣のかけらはスペクターのみ8個


 PC側(4人)例

ファイター&レンジャー

グラップラー&スカウト

ソーサラー&スカウト

プリースト&セージ


スケルトンガーディアンは前衛、スペクターは後衛に配置します。


上級戦闘の場合、PCからスケルトンガーディアンまでの距離を10~15m、スペクターはスケルトンガーディアンの後方5mといった具合に決めておきます。


スケルトンガーディアンの打撃点は2d+8です。


期待値は15で、ファイターであれば大きな脅威にはならないでしょう。


この戦闘におけるスケルトンガーディアンの役割は盾役です。メイン火力はスペクターとなります。

 

ただし、先攻1ラウンドでスケルトンガーディアンを倒しきれなかった場合、回避盾型のグラップラーにとってはやや厳しい展開になるかもしれません。


この場合は、防具習熟型のファイターが《かばうⅡ》を習得していると活躍の場になるかもしれません。

 

レベル7以上の作成でグラップラーやフェンサーのPCがいる場合、キャラクター作成段階で《頑強》を習得しているか確認しておきましょう。

 

スペクターはレベル8の魔物ですが、魔力12(知力ボーナス4相当)の強敵です。

 

真語、操霊魔法を8レベルまで習得しており、威力40の【エネルギー・ジャベリン】を《魔法拡大/数》を宣言して行使することもできます。

※殺意が高いと苦情が来ることもあるので卓の雰囲気をちゃんと把握しましょう


レベル7のPCは、精神抵抗力が11以下である可能性が高いです。


したがって、アイテム等の使用がなければ50%以上の確率で抵抗を突破されてしまいます。


GMとして工夫できる点を挙げるとすれば、道中で月光の魔符を配布するイベントを用意することです。

※GMで魔法行使、威力決定ともにクリティカルさせてしまった経験もありますがその時は諦めましょう


ギルドマスターが渡してくれた、遺跡探索中に見つけた宝箱に入っていた、等の展開が考えられるでしょう。


近接攻撃を行う敵を出す際は、物理タンクのPCに対しては敵の打撃点とPCの防護点、回避タンクのPCに対しては敵の命中力とPCの回避力を比較して、脅威度を推測します。


魔法を行使する敵を出す際は、敵の魔力とPCの精神抵抗力を比較して、脅威度を推測することができます。

※魔物レベルに対して行使可能な魔法レベルが低く設定されている魔物は、魔力も下がるためクリティカルによる事故は起こりづらくなります


敵の魔力がPCの精神抵抗力を上回る状況では、クリティカルによる事故が発生しやすくなるため、月光の魔符等のアイテムの活用を検討しましょう。


防護点で軽減ができず、抵抗に成功しても原則として半分はダメージを受けてしまう魔法はPC側の対策手段が限られているのが実際のところです。


抵抗に成功しても、2体から攻撃を受けると100%のダメージを受けてしまうと考えると、前衛が全員ファイターのような高HPのパーティでもない限り、魔法を行使する敵は1体に留めておくのが無難です。


理不尽さが高い戦闘は(普通の人にとっては)ストレスが高いものとなってしまうでしょう。

※ドMの知り合いの顔が思い浮かびましたがあくまで例外です


まとめ

近接攻撃の敵だけでは脅威とならないケースがある


魔法を行使する敵の調整は、PCの精神抵抗力を参照する


魔法を行使する敵は1体までに留めるのが無難


次回