概要

日本発TRPGで最大級のプレイヤー人口を誇るソード・ワールド2.5を最近始めた、またはこれから始めたい方向けにキャラクター作成の指針について解説します。


今回は、種族と技能についての考察です。前衛、後衛それぞれについて、お勧めの種族を紹介します。


目次

1 前衛向け能力値

2 後衛向け能力値

3 前衛向け種族(評価)

4 後衛向け種族(評価)

5 パーティ例


1 前衛向け能力値

ソード・ワールドのプレイヤーキャラクター(PC)は6つの能力値が設定されています。

種族の評価を考えるにあたって、各能力値の重要度を分類しました。

前衛の純戦士に必要な能力値の評価です。

※魔法戦士を除く


 重要

生命力、敏捷度 or 筋力の少なくとも一方


 必要

器用度、精神力


 不要

知力


まず前衛はタンク(盾役)の能力が必須です。生命力(HP)は高い方が理想です。


近接、遠隔攻撃は回避することができますが、魔法は抵抗力判定で比べあいを行います。


ダメージを与える多くの魔法は「抵抗:半減」です。抵抗に成功しても半分はダメージを受けるため、HPが高いに越したことはありません。敵の魔法を考慮すると、精神力も必要な能力値です。


また、前衛は敵の近接攻撃を受けることになります。近接攻撃に対処する方法は2つあります。


1つ目は、防護点を上げて適用ダメージを減らす(ゼロにする)方法です。

2つ目は、回避力を上げて、敵の攻撃を失敗させる方法です。


防護点を上げるなら、必筋の高い鎧を装備する必要があります。このとき、筋力が重要です。


グラップラーやフェンサーには鎧に制約があるため、防護点を上げるアプローチはファイター向けです。


回避力を上げるなら、敏捷度が重要です。また、一部の鎧や防具は回避力にプラスの修正があります。


グラップラーやフェンサーは防護点に限度があるため必然的に回避を重視することになります。


ファイターも《防具習熟A(S)/非金属鎧》を選択すれば回避力を重視した構成にすることは可能です。


なお、魔動機術を習得した射撃武器を持つ魔物の攻撃は魔法ダメージとなり、防護点が適用されません。


生命力が高く、筋力敏捷度の少なくとも一方は高いことが前衛の条件です。


防護点は固定値です。回避タンクよりも防御タンクの方が、運要素は小さくなります。


防御タンクは魔動機術の敵に対して苦戦する可能性がありますが、回避タンクは運要素が大きく、また必中の攻撃に対して無力です。どちらが優れているとは、一概に言えないでしょう。


個人的には、初めての人には運要素が強い構成は勧めたくないので、技能選びで迷っているならファイターを勧めます。


戦士系技能は、命中しなければダメージを与えることはできません。したがって器用度も必要です。ただ、魔法行使判定と比較すると命中力判定にボーナス修正を得る手段は多いです。


基本的に、知力を成長させる必要はありません。


ゆえに、知力を除く5つの能力値が前衛に必要な能力値です。


2 後衛向け能力値

ソード・ワールドのプレイヤーキャラクター(PC)は6つの能力値が設定されています。

種族の評価を考えるにあたって、各能力値の重要度を分類しました。


後衛の魔法使い系技能に必要な能力値の評価です。

※マギテックシューターを除く


 重要

知力精神力


 必要

生命力


 不要

器用度敏捷度筋力


後衛の魔法使いはとにかく知力が重要です。魔法行使判定で敵の抵抗を突破することに命を懸けましょう。


精神力が上がると、魔法の行使で消費するMP最大値が増えます。また、敵の魔法に抵抗しやすくなります。


後衛も遠隔攻撃や魔法を受けることがあります。生命力は高いと望ましいです。


基本的には敏捷度を伸ばす必要はありません。ただ、スカウト技能を習得するなら先制判定に必要です。


筋力器用度は基本的には不要です。

※マギテックシューターを除く


3 前衛向け種族(評価)

前衛の純戦士は生命力が重要です。

ファイターは筋力、フェンサーやグラップラーは敏捷度も重要です。

以上を踏まえて、適性を評価しました。


◎(すべての技能で推奨)

人間、ナイトメア、リカント、リルドラケン、ティエンス


○(一部の技能で推奨)

ドワーフ、ルーンフォーク、グラスランナー


△(難あり)

エルフ、メリア、レプラカーン


×(非推奨)

タビット


ドワーフ、ルーンフォークは筋力が高く、ファイター推奨種族です。ドワーフは精神力が高く、種族特性で炎属性ダメージを受けないことから、物理だけでなく魔法にも耐性があります。

 

一方、これらの種族は敏捷度が低く、グラップラーやフェンサーへの適性は高くありません。


グラスランナーは筋力と知力が低く、それ以外の能力値が高めです。ファイターは不向きですが、種族特性で魔法を「抵抗:消滅」として処理することから魔法耐性もあり、回避フェンサーの適性が高いです。


エルフ、レプラカーンは生命力が低めです。メリアは生命力が高めですが、筋力、敏捷度のいずれも高くはありません。


4 後衛向け種族(評価)

後衛の魔法使いは知力精神力が重要です。

以上を踏まえて、適性を評価しました。

※マギテックシューターを除く

※タビット、ルーンフォークはプリースト不可


◎(すべての技能で推奨)

人間、エルフ、ナイトメア、メリア、ティエンス、レプラカーン


○(一部の技能で推奨)

ドワーフ、タビット


△(難あり)

ルーンフォーク、リカント、リルドラケン


×(非推奨)

グラスランナー


タビットは習得不可となるプリースト以外の魔法使い系技能はすべて推奨です。


なお、マギテックシューターは知力や精神力以外に、器用度も重要です。


ドワーフはシューターの適性がありますが、タビットは器用度が低く工夫が必要です。


ルーンフォークのサンプルキャラクターがマギテックシューターですが、精神力が低く、性能だけで言えばむしろ使いにくいです。筋力が高いルーンフォークは〈ボウ〉シューターには適性があります。


ファンタジーの世界観に即していえばエルフの弓使いは定番ですが、残念ながら筋力が低く、不向きです。一方、世界観に齟齬が生じますがエルフのマギテックシューターは適性があります。


個人的にエルフが大好きなのですが、世界観の問題でエルフのマギテックシューターは使わないです。一度だけ単発セッションで使いましたが、ロールプレイの方針は「合理主義で、実用的な技術としてマギテックを学ぶことにした」でした。

 

ルーンフォークは残念ながらマギテックシューターに適性があるとはいい難いですが〈ボウ〉シューターには適性があります。ただ、世界観と合っていると言い難いです。エルフと逆の関係になっています。


話が逸れましたが、大事なのは「ルールブック掲載のサンプルキャラクターは、世界観に沿って作成された例も多く、必ずしもステータス上、その種族が優れているとは限らない」ということです。


ほかにも、エルフのサンプルキャラクターは神官戦士ですが、レベル4以下のセッションでは基本的に初心者に魔法戦士は勧めていません。立ち回りが難しくなるためです。

※レベル5以上の作成は《マルチアクション》を習得した神官戦士を勧めることもあります。ただ、魔物の編成から短期決戦が想定されるとき、通常移動となる先攻1ラウンド目に魔法行使できないため、純戦士か後衛魔法使いを勧めることになります。


5 パーティ例

レベル帯ごとに3~4人のパーティ例を考察しました。


 低レベル帯(初期作成)

「前衛2+後衛1」の初期作成(3000経験点)パーティ例です。


PC1(リルドラケン)

ファイター2

レンジャー1

(残り500点)

《全力攻撃Ⅰ》

※経験点を使い切る場合、エンハンサー1


PC2(人間)

グラップラー2

スカウト1

(残り500点)

※《武器習熟A/格闘》

※経験点を使い切る場合、エンハンサー1


PC3(エルフ)

プリースト(キルヒア†)2

セージ1

(残り500点)

《魔法拡大/数》

※経験点を使い切る場合、スカウト1


3000経験点の初期作成では、キャンペーンで引き続き同じキャラクターを使用する可能性を考慮し、経験点を余らせて作成することもあります。


一般的なシナリオの場合、基礎経験点は1000点です。ファイターやプリースト等のテーブルA技能を2レベルから3レベルに上げるには、1500経験点が必要です。


500点残して作成すれば、次のシナリオからレベル3で遊ぶことができます。


今回は、経験点を残す作成例です。3人パーティで探索に重要なスカウト、レンジャー、セージを1人ずつ担当しています。


敏捷度が高いキャラクターがスカウト、器用度が高いキャラクターがレンジャー、知力が高いキャラクターがセージを担当するのがお勧めです。


なお、戦闘で重要となる先制担当が1人だけになるため[剣の加護/運命変転]を使用する人間がスカウトを習得しています。


また、戦闘準備で魔物知識判定に+2するキルヒア神官がセージを習得し、判定を成功させやすくします。


初期作成の神官はダメージ魔法を習得しません。先攻1ラウンド目に【フィールド・プロテクション】を行使します。


「分類:蛮族(アンデッド)」なら【バニッシュ】も候補です。その後【キュア・ウーンズ】で回復を行う流れとなるでしょう。

※味方の戦況が順調だと神官の仕事がなくなる可能性があるため、初心者向けセッションであっても、初期作成ではなくレベル3-4の作成レギュレーション(5500経験点)を採用するのも候補です。【ターゲッティング】を習得し、暇なときは【フォース】で攻撃します。


 中レベル帯(作成レギュレーション6-7)

「前衛2+後衛2」のレベル7(23000経験点)パーティ例です。


PC1(ドワーフ)

ファイター7

レンジャー7

エンハンサー1【キャッツアイ】

※《武器習熟A/アックス》《薙ぎ払いⅠ》《武器習熟S/アックス》《頑強》


PC2(ナイトメア)

ファイター7

スカウト7

エンハンサー1【キャッツアイ】

※《武器習熟A/アックス》《斬り返しⅡ》《武器習熟S/アックス》《頑強》


PC3(エルフ)

フェアリーテイマー7

スカウト7

アルケミスト1【バークメイル】

※《ターゲッティング》《魔法収束》《魔法制御》《武器習熟A/スタッフ》


PC4(メリア)

プリースト(ダリオン†)7

セージ7

アルケミスト1【バークメイル】

《魔法拡大/数》《ターゲッティング》《MP軽減/プリースト》《武器習熟A/スタッフ》


レベル7は《タフネス》を習得するファイターが相対的に有利です。


そのため、前衛は2人ともファイターです。

※宣言特技は《斬り返しⅡ》《薙ぎ払いⅠ》などがお勧めです

《斬り返しⅡ》は「用法:2H」武器限定です。1回目の命中力判定で命中するとダメージを+4します。レベル7の作成は《全力攻撃Ⅰ》の上位互換となります。


《武器習熟》か《防具習熟》か、に関しては、ボス戦で魔法を主体に戦う敵が出てくることを考慮すれば、《防具習熟》を習得すると敵によっては役に立たない可能性もあります。


その他系技能はスカウト2人、レンジャー1人、セージ1人です。


このレベル帯は敵の火力がかなり上がるため、先制に必ず成功したいところです。

《ファストアクション》の自動習得が目的で、スカウトを冒険者レベルと同じ7レベルまで上げています


賦術は【ヴォーパルウェポン】【バークメイル】が18ラウンド継続して経済的です。探索中に役立つ魔動機文明語を自動習得します。


 高レベル帯(作成レギュレーション11-12)

「前衛1+後衛2」のレベル12(85000経験点)パーティ例です。


PC1(グラスランナー)

ファイター7

フェンサー12

スカウト9

レンジャー9

エンハンサー2

アルケミスト2

※《防具習熟A/非金属鎧》《挑発攻撃Ⅱ》《防具習熟S/非金属鎧》《回避行動Ⅱ》《頑強》《防具の達人》


PC2(レプラカーン)

ソーサラー12

コンジャラー10

スカウト8

※《ターゲッティング》《魔法収束》《魔法制御》《魔力強化Ⅱ》《クリティカルキャストⅡ》《魔法拡大/数》


PC3(エルフ)

フェアリーテイマー12

プリースト(キルヒア†)10

セージ8

※《ターゲッティング》《魔法収束》《魔法制御》《魔力強化Ⅱ》《クリティカルキャストⅡ》《魔法拡大/数》


グラスランナーは《挑発攻撃Ⅱ》を習得した回避特化型フェンサーです。《回避行動Ⅱ》《防具の達人》を習得し、装備と特技を合わせて回避力を+5します

※鎧は〈アストラルガード〉、盾は〈ハーフムーン〉です


後衛の2人がダメージディーラーです。《魔法制御》を宣言し、複数の敵を同時に攻撃します。

《ルーンマスター》で宣言特技を2回宣言できるため、もう一方の宣言特技は《バイオレントキャストⅠ》《クリティカルキャストⅡ》等が候補です


前衛が少ない構成となっていますが、このレベル帯はゴーレムや妖精召喚等、魔法で対処します。


種族と技能の組み合わせの参考になれば幸いです。


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