2月17日、ロサンゼルスは再び記録的な大雨に見舞われ、またまた大変な目にあった。
数日前からはニュースで大々的に大雨予報が出て、親切なお隣さんもポンプを用意するように忠告しに来てくれていたし、夫は早めに仕事を切り上げて帰り、非常食や停電に備えた懐中電灯などの用意も完了し、準備万端のはずだった。
それなのに、である。雨が激しくなってきて、前回同様ポンプを2台稼働させたが、今回は水が溜まる前に用意したので、水がさほど溜まっておらず、ポンプに通じるホースを触ってみても動いているか分からなかったので、ホースを出している壁の外に回って夫と様子を見てみることにした。壁がかなり高いので、庭側からでは見えないのだ。
米国の家は、日本でも多くのホテルで採用されているように、ドアを閉めると自動的にロックされるタイプが多い。我が家もそのタイプで、夫に鍵を持っているか聞いたら、「もちろん」というので、いつも通り自動ロックでドアを閉め、壁側に回ってポンプが稼働しているのを確認し、家に戻ろうとした。
「あっ」と夫が叫ぶ。そうなのだ。夫はいつも鍵を持って出歩くので鍵を持っていると思い込んでいたが、直前に用事があって、鍵を自宅内においてきていた。
それからが大変だった。ほんの数分出るつもりだったので、軽装で携帯電話しか持っていない。幸い、庭に通じる居間の窓は開けてきたので、お隣さんに梯子を借り、お隣さんの庭から境界の壁を乗り越えれば、家に入って鍵を開けられる。
そこで、お隣さんにお願いして梯子を借り、ずぶ濡れになりながら、お隣さんち側から、梯子に上って壁を越えようとしたが、境界に備えている雨どいが邪魔になり、「この雨どいが壊れたら、今は大変なことになる」と、夫もお隣さんも頑強に拒んでくる。
こちらでは、鍵開け専門会社「ロックスミス」というのがあり、締め出されたら開けてくれる。携帯電話は持っていたので、すがる思いで「ロックスミス」に電話したが、至るところで通りが冠水しているロサンゼルス。想像通り留守番対応だ。仕方ないので、お隣さんも手伝ってくれ、同業者に片っ端から電話して、ようやく何とか別の業者を見つけた。
「2、30分で来ます」というし、お隣さんは親切に家で待たせてくれたので、一緒にニュースを見ながら到着を待っていた。しかし、軽く30分が経っても来る気配がない。夫が電話すると「あと50分はかかる」と言う。所要時間が増えとるやないか。
50分経ったが、やはり梨のつぶてだ。「豪雨だし、そんなこともあろう」とは思っていたが、念のためまた電話したら、「今高速にいる。あと数10分はかかると思うが、どれだけかかるか分からない。高速のどこを走っているか分からないし」とめまいがしそうな答えだった。
自慢ではないが、私は短気である。50分待ったのでさえ、奇跡的だったが、いつ来るか分からないのに、ずっとお隣さんちで待たせてもらうわけにもいかない。腹をくくり、お隣さんにまた梯子を借り、今度は通り側の壁から庭に降りたつことにした。
うちの家の前の通りは結構通行量が多く、警察も時折通る。警察が見たら、完全に職務質問対象者だ。ずぶ濡れの中、壁に梯子を立てかけ、「昔取った杵柄」と壁越えをしようとしたが、私の重そうな体を心配したのか、夫が梯子を上って高い塀を越え、我が家の庭に別の梯子を下してあっけなく降り立った。こんなことなら、初めからこうすればよかった。
間もなく、鍵を開けた夫が玄関から出てきて、「こっちに向かっている」というドライバーに自力で何とかした旨連絡したら、サービス料として19ドルを請求された。全く役に立っていないので、ちょっと阿保らしい気もしたが、豪雨の中、本当に出動してくれているなら、申し訳なかったので、支払うことにした。
ちょっと気になるのは、我々の壁越えを見ていた泥棒が同じように我が家の壁を越えてこないかどうか。時々しょっちゅうドキドキのロサンゼルス生活。


