父の教え | 弁護士 金英哲のブログ

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大阪のKIM法律事務所の弁護士です。

今年の2月に父が亡くなりました。

それからなかなか気持ちの整理がつかなかったのですが、今日は父のことを書いてみます。

 

父は大阪市淀川区で空手道場「昌武館」を経営し、そこで25年ほど空手や古武術を教えました。

理屈よりも感覚で教えるタイプでした。

突きを指導する際には、「『ドーン』ではなく『ピシャーン』や!」などと擬音で教えることもありました。

道場訓は「頭足拳鍛未踏難越」。

「とうそくけんたんみとうなんえつ」と正座で三回唱え、互いに礼をして練習が始まります。

この意味は、「頭と足と拳を鍛えれば、これまで誰も踏み入れたことのない難関を超えることができる」というものでした。

道場が1階で、家族が2階から上に住んでいたので、毎日練習生の気合、ミットやサンドバックをたたく音、そして道場訓を唱える声が聞こえてきました。

 

私も幼い頃から習っていましたが、家であたりまえのようにやる空手よりも、学校のクラブ活動でやっていたサッカーが楽しくてのめり込みました。

父は自分の道場を無理に継がそうともせず、そんなに裕福ではなかったけれど、私が大学、大学院、法科大学院に進学して勉強を続けることも許してサポートしてくれました。

そして、司法試験に合格したときには、誰よりも喜んで自分のこと以上に自慢してくれました。

 

今は道場もなく、父もいませんが、心に刻まれた道場訓を忘れることはありません。

父のおかげで頭、足、拳を鍛えることができました。

誰も踏み入れなかった難関や難事件を乗り越えられる人になれればと思います。