関心領域     ★★★★

 

今年のアカデミー賞で国際映画賞と音響賞を受賞した作品で、第二次大戦中のアウシュヴィッツ収容所の隣に住んでいた所長のルドルフ・ヘスの一家の日常を描いていて、最初に川辺でピクニックしている一家の風景は鳥のさえずりなんかが聞こえてのどかな感じですけど、家に戻ると隣から常に重苦しい音が響いていて、きれいな庭があってプールもある裕福で平和そうな家族の風景が、不穏なものと感じて、夫から定期的に贈られる毛皮のコートや下着や高級そうな口紅など、明らかに“どこか”から押収した物を横流ししていて、家では幹部が集まって効率的な処理方法を議論していたり、誕生日プレゼントで贈られたボートで息子と川下りをしていたら、よからぬものが流れてきて、急いで帰宅して子供を風呂に入れたり、妻の母親が訪問してきて、最初は庭を褒めていたりしたけど、鳴り止まぬ重苦しい音などから数日で逃げるように去っていったりなど、壁一枚隔てた向こうではおぞましい出来事が進行しているのに、それが正しいこととして、必死に作り上げた平和的に暮らす日常を失いたくない妻の態度や、現実を知りすぎていて、ふとした瞬間にそれが思い出されて吐き気がしてしまう所長の姿を含めて、壁の隣の建物から出てくる煙や壁の向こうに見える機関車の煙など、音響、構図、台詞の全てが秀逸にコワいですね。