エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命      ★★★☆☆

 

19世紀にイタリアで起こった事件を描いた作品で、ボローニャのユダヤ人街に平穏に暮らす一家の7歳になる少年が、突然枢機卿の命令で派遣された軍隊によって連れ去られて、両親は手を尽くして連れ戻そうとするけど、事情を聞いてみると、少年は家族と同じユダヤ教徒でありながら、赤ん坊の時にキリスト教の洗礼を受けているので、ユダヤ教の家族と切り離してキリスト教徒としての教育を施すことになった、ということらしいけど、何でそんなことになっているのか、訳がわからないまま、裁判で争うことになるけど、枢機卿の決定は覆らず、時の教皇ピウス9世は少年の教会での保護を容認したことで、少年の返還はますます困難になってしまう、という展開は、少年が産まれた当時法王庁はオーストリア軍が駐屯して護っていたけど、少年が連れ去られるくらいにオーストリア軍が撤退して、教皇に対する風当たりが強くなるような社会運動が広がって、教皇が少年を心の拠り所にした、みたいな描き方になっていて、ピウス9世は悪役として描かれていますが、実際は第一バチカン公会議を開いた人物であり、日本の二十六聖人の列聖に尽力したとも言われていて、性格的にはどのような人物だったのかはわかりませんけど、当時はまだ異端審問官が存在して、宗教による理不尽な出来事もあった、という時代だった、ということなのでしょうけど、このようなことで少年が家族から引き離されてしまう、ということがあったら、家族としてはやりきれないと思いましたけど、このような背景やキリスト教に関する知識が無いと理解が難しいとも思えて、堅信式で少年のユダヤ教との決別が決定的になる、みたいな描き方は感覚としてわからないのだろうな、とは思いましたね。