瞳をとじて      ★★★★

 

「マルメロの陽光」以来31年振りの長編となるビクトル・エリセ監督作品で、22年前にある屋敷でファーストシーンとラストシーンのみを撮影した後に主演男優が失踪して制作中止になった作品がある映画監督が、「未解決事件」というテレビ番組に出演して、旧友である元スタッフが保管しているフィルムを借りて、番組で放送することにするけど、放送した後に、失踪した俳優とそっくりの人物を知っている、という報せが入る、というお話しで、俳優と監督は若い頃からの友人で、番組の出演を準備しながら、俳優との思い出に耽ったり、現在は海岸でささやかに漁をしながら、静かに暮らしている監督の日常が描かれますが、ある介護施設で雑用係として働く人物が失踪した俳優らしいことが分かり、22年前に何らかの事故に遭って記憶喪失になったらしいことが分かりますが、監督は何かのきっかけになればと、放送されなかったラストシーンを上映して、一緒に観ることにする、という展開は、フィルムに焼き付けられた22年前の姿と現在の姿が対比されて、フィルムに描かれたドラマの思いが伝わっていくような、時間と記憶を飛び越えるような、不思議な感覚がありましたね。