法律用語は正確に | 法律税務研究会ブログ

法律税務研究会ブログ

ブログの説明を入力します。

民事事件で、「被告」と呼ばれることに反発を持つ人がいます。自分は何も悪い事をしていないのに、なぜ「被告」と呼ばれるのか、という反発です。

その原因は、マスコミが、刑事事件の「被告人」を「被告」と表記していることにあります。マスコミでは、起訴された段階(もっといえば、逮捕された段階)で、事実上犯人であるかのように報道しますから、民事事件でも「被告」と呼ばれると、自分が犯人扱いされていると思うのでしょう。

これと同じく、マスコミが好んで使う言葉に「容疑者」という言葉があります。これは正しくは「被疑者」のことを指しています。法の趣旨からすれば、「疑わしきは罰せず」、「無罪推定」という大原則があるため、刑事事件の確定判決が出ていない段階の「被疑者」は、あくまで「疑いをかけられている(被害)者」という意味です。

しかし、容器の「容」を用いる「容疑者」という言葉には、反対に「疑いが入る者」、さらに言えば、「疑われてしかるべき者」という印象を受けます。すなわち、有罪推定の発想があることがわかります。

このように言葉の選択の背後には、実は隠された思想が潜んでいることが多いのです。そのため言葉を取り扱うマスコミは、この点を理解して、正確かつ慎重に法律用語を使用してもらいたいものですね。

(弁護士:佐々木 章)