バースで最初の目的を果たした私は、とりあえず半年という猶予の中で
できる限り行きたい場所へ行ってみよう、と旅を仕切りなおした。

バースの次に向かったのはCanterbury(カンタベリー)。
バースからロンドンのVictoria(ビクトリア)駅までバスで行き、
そこからnational expressでカンタベリーまで向かった。
なんと6時間の長旅だ。

けれど、電車よりバスの方が安いことと、電車で通り過ぎる
街並みをバスならゆっくり見れることを優先した。
時間にはゆとりがあった。

カンタベリーまでは高速道路を走ったのだが、周りの村々は
小さなwoodに囲まれていて、緑豊かなイギリスの風景は
6時間という長旅を感じさせないくらいワクワクさせた。

カンタベリーのコーチステーションから歩いて、
予約していたホステルに向かった。
バースでは3泊、カンタベリーでの宿泊も当初3泊の予定だった。

到着して、通されたドミトリーは広い屋根裏部屋のような部屋で、
それぞれ個々のシングルベッドが4つ、2段ベッドが2つ、そして
シャワールームとトイレ、洗面所が一緒になっている広めの
バスルームがついていた。

スタッフは誰もが優しく、毎日夜の8時くらいからホステルのガーデンで
イベントを催すらしかった。
ガーデンは、このホステルのマネージャーCarmenの趣味らしかった。

可愛らしい庭と、小さなテラスに食事をするための長いテーブルがあった。
バースでのドミトリーは陽が入りにくく、10人部屋なんて息が詰まりそうだった。
だから、カンタベリーのホステルKippsはそれはもう、私には天国のように感じた。
広い部屋、綺麗なバスルーム。温かいスタッフと、食事。
とにかく居心地が良かった。

このホステルに私は約1週間滞在した。
カンタベリーの周りにあるいくつかの村と町を訪れ、
イギリスの海と大きなガーデン、そして可愛らしいお城を見て回った。

どの場所もとにかく綺麗だった。(写真はFacebookを参照)

そして、このホステルで出会った、イギリスで最初の友達は
Jamesというニュージーランド出身の21歳の男の子。
金髪に、色白の肌に、ブルーの瞳。ニュージーランドは"妖精が住む場所"と
称されるほど自然も豊かで周りを囲む海はとてもきれいだ。
なるほど、この国が"妖精"と言われるのは納得できるな…というくらい
容姿は絵に描かれる妖精の要素そのものだった。

彼と同日、私はカンタベリーを出て、Brighton(ブライトン)という街へ向かった。
カンタベリーと同じKipps Brightonというホステルがあり、カルメンが
もしもそっちの方に行くのなら…と、宿泊を手配してくれたのだ。
彼女のお陰で、忙しい時期にも関わらず、私はブライトンで宿泊コストを
抑えながら、朝食も込で3日滞在することができた。

週末はどのホステルもいっぱいになる。
まして、ブライトンはリゾート地らしく、また大きな街でもあったため
金曜日から日曜日にかけての宿泊予約を前日にして取れることは
めったにないのだという。
また、Kipps Brightonの立地も好条件で、観光シーズン真っただ中の
イギリスシーサイドは簡単に予約は取れない時期らしかった。
それでも、運よく私が宿泊したい日数にキャンセルで空きが出て
3泊の予約をとりつけることができた。

カルメンのおかげ。
それ以外、言いようがなかった。

彼女は、カンタベリーが大好きだったし、何よりガーデンが大好きだった。
人柄はたとえようもないくらい素敵な人!
それ以外には説明しようがない。
少し甲高い声、トゥイーティーみたいにぷくっとしたほっぺた。
彼女の話し方は独特で、「~OK?、~OK?」テンポがよく、
歯切れがよく…何だか小鳥のさえずりみたいだった。

カンタベリー周辺を回る時も、相談すればバスのタイムテーブルを
検索してくれ、私の行きたい場所への情報を常にいっぱい持ってきた。
Kipps Canterburyを去る日、彼女はこのホステルの庭の写真を
私にプレゼントしてくれた。

私は、歴史や文化や謂われなど知らない。
そしてそれを知ろうという気もなかったが、美しいと感じるものは
大好きだった。イギリスのガーデンや、お城や、教会、町の家々、雑貨…
それらは絶えず私の乙女心を刺激した。

イギリスは、私の大好きなものがたくさんつまった宝箱みたいな国なのだ。

彼女は、私と好みが一致していた。
歴史や文化や謂われじゃなく、素敵!と感じるものが好き。
花々が咲き乱れるガーデンをめぐるのが大好きだったのだ。

Kippsの可愛いガーデンの写真をスーツケースにしまいこみ、
私は電車でブライトンへと向かった。

Jamesはカンタベリーの近くでFarmの仕事を得たらしく、彼とは
その日で別れた。



その後、私は拠点をブライトン、ブリストル、カーディフと移していく。
どこも大きな街で、人の多い街だった。

どうやら私には、まだ街に出る前にしなければならないことが
あるらしかった。
大きな街であっても、イギリスはいたるところに公園があり、
緑に囲まれた空間に、人々は家族や友達や恋人たちと
語らい、食事をし、穏やかな時間を過ごしていた。

大好きなPark,Garden…でも、私の心はなぜか落ち着きがなく、
拠り所がなく、とても不安定になっていった。


"私は一体、何を探しているんだろう?"

ただ旅をして、何が楽しいのだろう?
私が住みたい場所は?
私の運命の人は?
私のやりたいことは?

何だか全くゴールが見えないなる観光旅行に
私は段々嫌気がさしていた。
人の多さも、何だか疲れるだけだった。

欲しいものはいつも問題なく手に入ったし、
食べたいものも食べていたし、環境だって悪くなかった。
行きたい場所にも必ず行けたし、バスの中での出会いもあった。
誰かがいつも必ず助けてくれ、やりたいことは必ずできた。

それでも、私は、何だか自分の居場所を失っている感覚だった。

日本に居た時と同じような息苦しさが、また私を襲い始めた。
1月の旅の"自由さ"はなぜかそこにはなく、私はなりたい自分に
なれるはずだったのに、そうなれていない自分にとても悲しくなった。

自分の中から湧いてくる憤りを無視していた。

そして、Wales地方の主都Cardiff(カーディフ)に移った時、
私はどうしても街から抜け出したくなった。

3泊予定していたホステルから飛び出すように、1晩経った日の朝、
私は急きょ宿泊をキャンセルして、Ross-on-wyeという小さな町へ
移動することにした。