※ 赤字部分を追記しました。
「異星人」と「異邦人」を見間違えたのをキッカケに、betcover!! (ベットカバー) を聴いた。
「betcover!!」の名前は見かけてたけど、みんなが騒ぎ出すと避けてしまうという癖で聴かないでいた。が、お?この人たちも「異邦人」をカバーしてるんだ? と思ったら、「異星人」だった。それで聴いてみて、
音楽的には違うかも知れないけど、私は、Age Factory を知ったときにこのバンドは “何か違う” と感じたことを思い出した。
betcover!! には油断したら殺られるようなヒリついたもの…殺気があると表している人がいて、そうか、これは「殺気」なのか?と思った。
そして私は、向井秀徳(ZAZEN BOYS)がエレファントカシマシについて書いた文章を思い出していたのだ。
福岡のライブハウスでの思い出です。
張り詰めた会場の空気の中、4カウントで “おはよう こんにちは” がはじまった瞬間、バンドの音圧に脳天が震えました。さらにそれを凌駕する宮本さんの歌のやかましさに圧倒され、そして地獄の米俵をずるずると引きずっていくような、超スローなモタリに時空が歪みました。
“珍奇男” でパイプ椅子に座り、アコギを掻きむしりながら目を見開き歌う姿にホンキの殺意を感じ、「殺される」と思いました。それはもうホントに恐かったのです。
(『ロッキング・オン・ジャパン 2017年5月号』より)
そしてそれは、驚くことに、2020年、「異邦人」を歌う宮本浩次にも存在しているのではないか。
しかし、
2021年10月13日に発売されたアルバム『縦横無尽』。
この『縦横無尽』に「殺気」があるかと問われれば、私は正直わからない。
無いかも知れない。
そして、そここそが、エレファントカシマシもソロも含めたうえで、今までと決定的に違う点かも知れない、と思った。
ソロのファーストアルバム『宮本、独歩。』にはあったと思う。
カバーアルバム『ROMANCE』にもあったと思う。
しかし、ソロになってからの三部作だというその三作目『縦横無尽』には、その「殺気」が無いかも知れない。
殺気だなんて言うと物騒だけれど、前にはあった何かが抜け落ちているかも知れない。
そして、そここそが昔からのファン、いや、もしかしたら昔に限らず、最近エレファントカシマシのファンになった人も、戸惑う要因かも知れない。
いや、みんなが戸惑ったと勝手に決めつけてしまったけど、私自身が戸惑った。そして、その要因はそこかも知れないと思ったのだ。
それでも、その「殺気」は、完全になくなってしまったのではなく、時おり顔を出しているような気もする。
そしてそれは、「stranger」や「just do it」のような激しい曲にではなく、「光の世界」や「春なのに」のような静かな曲にあるような気がする。
もっと言えば、カバー。「春なのに」はカバーである。『ROMANCE』はカバーアルバムだった。
今の宮本浩次には、自作の曲よりも、カバー曲に「それ」が宿るということなのだろうか。
でも感じる。
匕首(あいくち)をうなじにあてて笑うような「stranger」はどこかに存在していると。
…と、ここまで書いて思ったのが、というか重要なことを見落としていたのは、その違いは「音」にあるのではないか?ということ、つまり、エレファントカシマシの宮本以外の 3人にこそ、その「殺気」があるのではないか?ということだ。
宮本は『縦横無尽』ではじめてその 3人を振り切ったのだろうか。
いや、そうではない。
宮本にだけあるのではない。3人にだけあるのではない。
(宮本にもある。3人にもある)
あの 4人が揃ったときにこそ、「それ」が現れるのだ。きっとそうだ。
エレファントカシマシ=宮本浩次も間違いではないだろう。
しかし、エレファントカシマシが「バンド」であることを見落としていたのは誰より私だったのではないか。
前回のアルバム『縦横無尽』の記事の副題は、1曲目「光の世界」でした。そして今回の副題は、2曲目「stranger」。そんな風にして、13回記事が書けたらいいですね~。(たぶん無理)