エレファントカシマシ CONCERT TOUR 2011 “悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~”
2011年6月18日(土)19日(日) TOKYO DOME CITY HALL (JCBホール)
エレカシのツアー、“悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~” が、TOKYO DOME CITY HALL での二日間のライヴで終わった。
私はどうしてエレカシを聴き続けているのだろう。
私は、エレカシが好きだと言いながら、「一番好きなアルバムは?」とか「一番好きな曲は?」とか聞かれても、すぐには答えられない自分がイヤだった。
全部好きなんだよ、と言ってしまえばそれまでだけど、本当にそれまでだ。
考えてみれば、私のエレカシとの出会いはスマートなものではなかったと思う。
エレカシ良さそうだなぁと思って、初めて買ってみたアルバム『愛と夢』。もちろん、素晴らしい作品だけど、私の中に生まれた「あれ?」。
ひたちなかで初めてライヴを観てガツンとやられたけど、そのときの最新アルバム『グッドモーニング』。もちろん、それも素晴らしい作品だけど、なくならない「あれ?」。
その次の『ライフ』。これもまた、素晴らしい作品だけど、まだある「あれ?」。
そして、その「あれ?」が爆発した。
それが、『DEAD OR ALIVE』、そして、『俺の道』だった。
これだ!って思った。
やっとエレカシに出会えた!そんな気がした。
それから、『扉』、『風』、ドキドキしっぱなし。この時期の、バンドが転がりだしていく感じの感動、興奮。引き裂かれていた心と体が、再びぶつかり合い、転がりだしていく音が怒涛のように鳴り出した。私の中で、確かに。「再生」の音が聴こえた。
『風』で、まさしく風通しが良くなったかのように、「ポップ」を獲得しようとしていた、、、かに見えた。
しかし、『町を見下ろす丘』――。
『風』から一気に「ポップ」に突き抜けるのかと思ったら、エレカシは、「見上げる」んじゃなくて、「見下ろし」た。
『町を見下ろす丘』は、渋くて、温かくて、心に染み入る、大好きなというよりは、とても大切なアルバムだ。最初は、よくわからなかったよ。それこそ、「あれ?」だった。もっと「ポップ」に行けるのにって思った。
だけど、すごい、なんていうか、ここにこのアルバムがあるのとないのとでは、何かが大きく違っていた気がする。それが何なのかは、まだよくわからないのだけれど。
そして、『STARTING OVER』。
私は驚いた。本当に驚いたんだ。このアルバム単体にというより、あの『町を見下ろす丘』のあとに、『STARTING OVER』を作れてしまうことに。
今でもわからない。
レコード会社が変わったとか、新しいプロデューサーやスタッフに出会ったからといったって、何これ、だよ。
ほんとにすんごいんだから。何をどうしたら、『町を見下ろす丘』のあとに、『STARTING OVER』なんて作れるのか。
(でも、耳を澄ませてみれば、「俺たちの明日」には、『町を見下ろす丘』からの流れを感じるかも知れない。確かに、つながってるんだ)
そして、『昇れる太陽』。
『悪魔のささやき ~そして、心に火を灯す旅~』。
はたして、私が初めてエレカシの CD を買ったときから生まれた「あれ?」は、今は消えたのだろうか――。
わからない。
でも、今も、ずっと、爆発しつづけているよ。
(「あれ?」って書いてるけど、全部、大好きなアルバムですからね! 素晴らしいアルバムですし、そのときそのときの最良って思ってます! いつも最新作を薦めたくなるしね)
私、ライヴ中、ずーっと、感極まってた。
不思議でたまらないんだ。
どうして? いつのまに? 何なんだこれは!
これがロックだ!
私はおそらく、エレカシに出会うまで「ロック」を知らなかった。ビートルズも大好きだったけれど、「ロック」を知らなかったんだ。
私の近くにいた男性二人組が、「悪魔メフィスト」に興奮していた。叫んでいた。
そうなんだ。エレカシは、宮本さんは、こうやって、悩める男子を解放しているんだ!!
いや、その男子が悩んでるかどうかなんて知らないんだけど、男の子のヒーローなんだってことを再確認したの。
「悪魔メフィスト」で泣きそうになったのは初めてだ。
もちろん、男の子だけじゃない。
「starting over」がえらくかっこ良かった。「東京ジェラシィ」が聴けて嬉しかった。「赤き空」ってこんなに素晴らしい曲だったのか。「俺の道」はいつ聴いても凄まじい。最終日の「俺たちの明日」。「待つ男」。
エレカシはまず、何よりもまず、とんでもなく、凄まじく、
かっこ良いロックバンドなんだ!
な~んだ。かっこ良いロックバンドなんて、そこら中に一杯いるじゃないかって、そうかな? 本当にそうかな?
エレカシは、音の一音一音どころか、無音まで叩きつけてくる。
それだけじゃない。エレカシには、
良い曲・良いメロディ・良い歌詞
すべてが揃っているんだよ。最強だよ!
でも、もしかしたら、すべてが揃ってるがゆえの「あれ?」なのかも知れない。
良い曲・良いメロディ・良い歌詞・良い演奏――本当はそれさえあれば良いのかも知れない。でも、それじゃ不安だから、色々やりたがる考えたがる。エレカシだって色々やっているんだろうが、エレカシほど「良い曲・良いメロディ・良い歌詞・良い演奏」に腐心するバンドを私は知らないって思った。
「音楽って素晴らしいですね!」と、宮本さんは言った。しかも二日とも。
私は不思議とエレカシを聴いていて「音楽って素晴らしい!」とか思ったりしたことないかも。あまり「音楽」って意識がないというか。だけど、これほどまでに「良い曲・良いメロディ・良い歌詞・良い演奏」に腐心するエレカシを目の当たりにして、エレカシは「純音楽」なのかも知れないって思った。
そして、
宮本浩次のヴォーカル
腹の底からの、魂の底からの、叫び、祈り、憂い、歓喜……。
もう何も言うことはないよ。
なんだ! エレカシって、最初からぜんぶが揃っているバンドなんじゃないか!!
「生命賛歌」とかさ~、“ひょひょひょ ひょうろく玉” だよ? こんな歌詞つける人いる?
「五月雨東京」だって、“オレはロック歌手!” だなんて歌う人いるかね?
でもね、そうじゃないんだ。ひょっとしたら、いるかも知れないし、それだけなら、ただちょっと変わった歌詞をつければ良いってことになっちゃう。エレカシは、そうじゃない。そうじゃないんだ。
じゃなかったら、“俺を俺を力づけろよ” と歌いながら、こっちを力づけてしまう不思議をどう説明してくれる!
これからエレカシは、どこへ向かうのだろう。宮本さんは、どんな景色を見ているのだろう。
アルバム『悪魔のささやき ~そして、心に火を灯す旅~』を聴いたときは、私は、最終曲「悪魔メフィスト」が次へのイントロのように聴こえて(つまり、「悪魔メフィスト」の延長線上のようなものが次にくるのかと思って)、早くも次が楽しみになったのだけど、今回のツアーもあって、またわからなくなった。
宮本さんは素敵な人だ。だから、きゃーきゃー騒がれるだろう。もちろん、私だって騒ぐ。
それを、「アイドルじゃないんだから!」と言う人がいる。
「これは音楽であり生き様なんだ!」と言う人がいる一方で、「何よりもまず素晴らしいロックバンドなんだ」ということも忘れてはならないと思う。
でもね、もう、そんなことはどうだっていいのよ。
この日、ずーっと、感極まっていた私。
私はただ、エレカシの音楽が、どれだけ素晴らしくて、どれだけ凄くて、救いであり、慰めであり、力であって、希望で光でということを、どうにかこうにかして伝えたくて、そして、それによって、誰かがこの日の私のように涙をこぼしてくれたりしたら、それだけで、それだけで、もう。
宮本さんは言ったよ。
「音楽って素晴らしいですね!」
※ まったくライヴレポでも何でもない、わけのわからない文章ですみません。しかも、「救いであり、慰めであり、力であった」という言葉は、『ベートーベン・ウィルス』からきてます。なんかもう、すみません。