
RADWIMPS、Base Ball Bear、9mm Parabellum Bullet、APOGEE、サカナクションなどなど、たくさんの新しいバンドが出てきてますが、今回取り上げたいのは the ARROWS(ジ・アロウズ) です。
このアロウズに限らず、「ダンスを取り入れたロック」だとか「踊れるロック」だとか、そういった謳い文句がもてはやされたりしますが、いまどき、四つ打ちのロックなんて珍しくもなんともないし、そもそも、ロックはずっと前から踊れる音楽だったんじゃない!?
そんな中で、なんだかこの the ARROWS が気になったのです。
メジャーでのセカンドアルバムであるこの作品、『GUIDANCE FOR LOVERS』(2007年)を聴いて、私がこのバンドに引っかかってしまったのは、“懐かしさ” にあるのではないかと思いました。もっと分かりやすく言ってしまえば、“童謡っぽさ” です。
キュートに口ずさみたくなってしまう甘いメロディにあるのか、キザとダサさの間をいくヴォーカルにあるのか(キモ・カッコいい?)、アロウズを聴いていると、童謡を聴いているような懐かしさを覚えるのです。そのメロディとそのヴォーカルで発せられると不思議な吸引力を持つ言葉選びのセンスも絶妙で、そんなところもまた、童謡度を上げていると思います。明るく能天気そうなメロディとは裏腹に、悲しく残酷なことを歌ってたりするところもまた、なおさら。
だからといって、現在から距離を置き、現在を無視してたり、現在から目を背けてたり、現在を侮辱するような音楽じゃありません。
アロウズの音楽を聴いて浮かんでくるのは、とても都会的な景色でありシチュエーションであり心象風景です。だから、現在や未来の中にある懐かしさというか、「現在進行形の懐かしさ」とでも言うべきものが漂っているのです。
都会で生きる若者の揺れ動く気持ちを描きながらも、童謡にも通じる極めて原始的な気持ちを呼び起こす。
現代を生き抜くための音楽や新しく洗練された音楽、古き良き時代を思い起こさせる音楽など、いつだって世の中には色んな音楽が鳴っていますが、現在や未来の先に見つけた懐かしさ、そういった “懐かしさ” を持っている音楽っていうのが、やっぱり強いんじゃないかなぁって思います。
レゲエやスカ、ファンク、そしてダンス・ミュージックを取り入れ、それをあくまで現代的に鳴らしながら、童謡のように原始的に響かせる。そういうことに成功している音楽だと思う。
うわっ、ここでイエー!とか言っちゃうの?みたいな、ベタすぎるのかハズしているのかっていう、歌謡曲的なノリってあるじゃん。それが根っこにあって、で、それは音楽の根っこでもあると私は思うからさ。
前作の『ARROW HELLO WONDERFUL WORLD』(2006年)も聴いたんですが、前作に比べて、とにかく “強くなっている” と感じました。自分達の音楽に対して、曖昧だったものがより明確になっている感じがする。書いてきたような “童謡っぽさ” も、この作品でより明確になっていると思うし。
「月光の街」という、真夜中のひとり言のような、ひたすら自分に疑問を投げかける曲がある。
なぜ歌うのか――。
きっと制作中、同じように自らに疑問を投げかけたのだろう。
その答えが出たのかどうかは分からない。(歌詞は「君に会いたいんだ」で終わっているけど)
けれど、投げかけ続けたことが、そして、そんな “真夜中のひとり言” を曲にできたことが、彼らにとって大きな力になっているんだと思う。
この曲自体が、「歌う理由」になり得る。
そんな力を持った曲だ。
「歌う理由」を持ち得たから、このアルバムはこんなに力強くなったんだと思う。
「月光の街」の後に配された、「ONE NIGHT STAR」。
メンバーのバイオを見てみると、「ブリットポップ」を通ってきてるみたい。
この、ブリットポップを通ってきてるかどうかってのが、私の中でその音楽との距離感を大きく左右すると思う。
どっちが良い悪いじゃなくね。