フランスに住み始めて、生クリームもバターも最高の国に来たからにはぜひともお菓子をつくりたい、とハンドミキサーを買った。
その当時はまだひとり暮らしだったし、いつまでフランスにいられるかも分からなかったので、とりあえず安物を家電屋で買った。
それを惰性でずーっと使い続けていたところ、さすがにもっと性能の良いものが欲しくなった。
コレとかコレ良さそう〜と物色していると、「高いっ。ただ泡立てるだけなのに !? 」と夫が驚く。そうなのよねえ。いいお値段なのよう。
「それ買うくらいならロボ買いなよ、ロボのほうが機能多いでしょ」あ、そっち?
夫の言うロボというのは、スタンドミキサーのこと(キッチンエイドみたいな)。
単機能マシンを買うくらいなら、大きくていろいろ搭載されてるほうが良い、ということね。夫は大きければ大きいほど、重ければ重いほど良いと思ってる節があるからね...
夫よ、ロボは安くてたぶん500ユーロ前後、良いのは1000ユーロとかするのよ。 まあ、値段はともかく。あまり必要性を感じないのよね、ロボ。
私たちは2人暮らし、料理するのは2人ぶん。少量なのだ。大きなケーキも焼かない(私が持っている型は最大で16㎝)。ロボで卵白1個ぶんの泡立てとか、かえってやりにくくない?
タルト生地もキッシュ生地も、5分あれば手作業でパッとできてしまう。
そのうえ、私はパンをつくらない。
ここはパリですもの、良いパン屋がたくさんある。安定のおいしさでお気に入りのパン屋がいくつかあるし、新しいパン屋を試す楽しみも無限にある。食べきれないほどに。
私は、ここパンの国の、真摯なパン職人を尊敬している。おおげさに言えば、パンづくりはある種の聖域だと思っている。だから手をださない。
パンをつくらないなら、ロボのありがたみはあまり無いのよね。場所とるし...
いろいろ迷っていたところ、とある展示会で、検討中のハンドミキサーがその場で25%も割引になるというので買ってしまった。
新しいのは、パワー調節が細かくできるのが嬉しい。
違いを確かめるには、ベーシックなものをつくるのがいちばん。まずはパウンドケーキ。
パワフルでつくりやすい! パウンドケーキはバターをふんわり泡立て、さらに卵を加えてふんわり泡立てるところまでが重要なので。
切ったときボッソボソにならない、きめ細やかなパウンドケーキは、なんといっても泡立てが決めて。
続いて、メレンゲでもこもこウフアラネージュ。夫の大好物で、つくるととても喜ばれる。
ただし手間がかかる。卵黄でソースつくって、卵白を泡立ててメレンゲにして、それを茹でる。3つも工程が!鍋も道具もいっぱい使う。
それぞれの作業はかんたんシンプルだけどね、と夫に言ったら「いや、むかし僕がつくったときはソースがこんななめらかでなくボロボロの塊になった...」
分かる、アングレーズソースは油断するとスクランブルエッグになるからね。さらに「メレンゲ茹でたら散り散りになって必死で寄せ集めて...」それは分からないわ、なんでそうなる。
もっとも違いを実感したのは、やはりシャンティ。生クリームの泡立てがこんなにもあっという間だなんて。パワー大事!
甘さひかえめ濃厚ガトーショコラには、私はぜひともシャンティを添えたい。
春夏は、食後のデザートにフルーツサラダがよく登場する。夫が「種とってあるさくらんぼ食べやすい! 」と無邪気に喜んでいる。でしょうね。
1つ1つ、種とり器でパチンパチンと種をとる。かんたんであっという間のひと手間。ただ、汁がそこらに飛び散って血しぶきみたいな惨状になる。 コツがあるのかしら。