この冬、まだ blanquette de veau (仔牛のブランケット)を食べていない!と気づいて、マルシェの肉屋で仔牛肉を買った。

ブランケット用として売られている肉は気をつけないといけない。脂身ばっかりの部位が混じっていたりするから。そういうときは、自分で部位を選んで指定したほうがいい。

その日のブランケット用仔牛は脂身がなく良さそうなお肉だったので、多めに買った。おいしいから次の日も続けて食べてもいいし、冷凍してもいい。

私はいつも、ポールボキューズさんの家庭向きレシピを参考にする。

セロリ、ポワローの緑のとこ、パセリの茎、ローリエ、タイムなどブーケガルニ的なものを入れた水で、仔牛とニンジンを煮る。

崩れるくらい柔らかくなったら、仔牛とニンジンを取り出し、液体を濾す。バターと小麦粉でルゥをつくり、濾したスープでときのばし、少し煮つめてからクリームと卵黄を入れ、仔牛とニンジンを戻す。好みで、バターで炒めたマッシュルームを添える。

 



日本のクリームシチューとはまったく違う。つくりかたも味も。そもそも、私は日本で仔牛肉を見たことなかったと思う。

仔牛のブランケットの付け合わせは米と決まっているそうだ。私が米を好まないので、うちではやらない。ごめんよ夫... 

ところで、マルシェで並んで順番を待っていたとき。後ろがキャンキャン騒がしくなった。振り返ったらちびっこが5人もいた! 

ベビーカーの赤ちゃんからたぶん5歳くらいまで。ん? ということはこの子たちのママは毎年産んでるの !?

赤ちゃんが泣きわめき、4人がそれぞれ好きにしゃべってチョロチョロしてカオス。引率はママがたったひとりで、なんかもう、げっそりしてた。

あんまり騒がしいから、私の前にいたマダムが「何人いるの!?」と振り返ったので5人いますよと教えてあげたら「多すぎるわ! 私は2人が限界よ!」だそうだ。

ちょっと昔のフランスのカトリックのご家庭では、子どもがたくさんいたらしい。その時代でも5人は多いほうではないかしら。

5人とも、黙っていればきらめくブロンドの可愛い可愛い天使たち。白人の子どもってどうしてこんなに愛らしいんでしょう。夫の小さいころの写真も、キラッキラの金髪に青い目のまさに王子様だ。

一般的に、成長するとみんなそこそこ普通になるのが不思議。いつぐらいの年頃で可愛い天使は去ってしまうのだろう...

パリを歩けばお洒落でかっこいい男がゴロゴロいて恋が始まるだなんて、アメリカンなドラマの中だけですよ。アパルトマンの隣人がイケメンだったわ♡ なんてファンタジーよ。

...と思っていたけれど。

ある日、上の階から水が漏れてきて(パリの日常)、「どうも初めまして下の階の者です。お宅から水が漏れてるようなのでご確認いただけませんか」と夫がご挨拶に行った。

そして、戻るなり「若くてすごくかっこいい男だった!」と報告された。「しかも裸で出てきた!」えっ全裸 !? 「パンツは履いてた」...よかった。

後日、私もお目にかかったら、スラッとしたそれはそれは美形なお兄さんだった。アメリカから来たエミリーちゃんが目をギラギラさせて追いかけまわしそう。

かっこいいお兄さんは外見と裏腹に、のほほーんとしていた。一方そのパートナーは、息継ぎせず喋りまくるセカセカしたタイプのパワーあふれるお嬢さんだった。

良識ある若いカップルで、各所への連絡と書類関係は滞りなく済んで何より。こういうの、話が通じない隣人だと困るだろうなあ。

とはいえ、そもそもの水漏れは何も解決していない。まあそういうものよね、パリですから。

 



というわけで、稀にみる美形が身近に生息している状況も、パリではあながちファンタジーでもないと知った。