先日、工藤遥ちゃん主演の映画『のぼる小寺さん』を見てきました。
いい映画でした。とても。
軽く感想などを。
なにがネタバレとかよくわからないし、そういう感じの映画でもないんだけども、これから見る予定だという方はまず映画をご覧くださいね。
どういう映画かといえば、見ての通りボルダリングをする小寺さんという女の子の話――と言っても、小寺さんが主役ではあるけど、彼女自身は周囲をあまり顧みずただひたすら壁をのぼっているだけ、とも言える。
青春映画としては、たぶん地味なほうでしょう。
劇的な展開があるわけでもなく、手に汗握るシーンがあるわけでもない。(汗はかく)
静か動かで言ったら静で、だけどそんな空気がとても心地いい。
たとえば野郎同士が相手の胸倉掴んで怒鳴り合うとか、何か良くないことがあって主人公が落ち込むとか、そのあと挽回してハッピーエンドにもつれ込むとか、そういうわかりやすい展開はない。
でもそういう、ちょっとイヤな言い方をすると“ありがち”な映画やドラマに食傷気味だった自分としては、この『のぼる小寺さん』のある種淡々とした空気感が非常に心地よかったです。
好き。こういうの。
そういえば登場人物の誰も、泣いたり挫折したり、青春モノの定番なシーンもなかった。
そこがいい。そもそも小寺さんがそういう感じじゃないし、それでもちゃんと伝わってくるものがある映画でした。
とはいえなんにも起こらないわけではなく、基本的に小寺さんをとりまく周囲の人たちの変化こそが、この映画の物語の流れと言えるでしょう。
小寺さん。
この小寺さんがすごい良いのよ。
周りからは不思議ちゃんだと思われていて、たしかにそんな感じではある。
ボルダリングのこと以外あまり関心を持たず、どこか世俗を超越したような雰囲気すらある。でも基本ぽわ~っとしてるから近寄りがたいわけではない。だけどみんなから好かれてるわけでもなく、嫌われてもいない。
小寺さんを見てると、なんか「小寺さんみたいに生きてみたい」と思っちゃうんですよね。
憧憬というかなんというか、単純に「羨ましい」って。
あんな風にひとつのことに熱中して、周りにどう言われても気にしなくて、断固たる信念があるってわけでもなさそうなのに全然ブレなくて、その姿がとても眩しく見えて。
羨ましいなと思っちゃう。
どうしようもなく、惹かれてしまう。
ある意味、異端ですよ。
日々空気の読み合いをしている思春期の男女が集う教室内において、小寺さんみたいに自分の世界を貫く子は異端。
でも異端だからこそ、一部の人間にとっては妙に気になってしまう存在でもある。
そうやって勝手に小寺さんに惹かれた人たちが、小寺さんの言動に勝手に背中を押されて一歩を踏み出していく青春。
良い。
良いんだよこれが。とても。
それにしても小寺さんがあまりにも小寺さんでさ。
演じてる工藤遥ちゃんのことはデビュー当時(小学生)から応援してきたけども、映画のなかの彼女は何から何まで小寺さんでしかなかった。顔つきからして違う人。ちょっと信じられないくらいに。
(そしてそれは近藤くんを演じた伊藤さんに対しても思いました。テレビや動画で見ると雰囲気が別人なんですよね。役者さんてすごい)
ボルダリングもほとんど本人がやってたわけですが、大会のあれとか素人には単なる変な出っ張りにしか見えず、そこを掴んで壁をのぼるなんてできるわけないでしょうがと言いたくなったけど、それを小寺さんはのぼっていく。
スゲェなぁ……と思ったのは映画を見た帰り道で、見てる最中は「小寺さんならできる!」なんて思っていた自分がいました。
あの工藤遥ちゃんがあれをやっていたのだと思うと、いったいどれだけ頑張ったんだろう……なんて野暮なことまで考えてしまったな。
すごい。すごいよどぅー。
そしてラストシーンね!
ラストカットというのかな、あれはもう!素晴らしい!
別にものすごいことが起こるわけでは全然ないんですよ。
でも良いよね。
あの瞬間、ようやく小寺さんという人物の内面が見えたような気がしたよ。ラストにしてようやく。
思わず顔がほころんでしまいました。
というかわりと終始ニヤニヤしていた気がする。
顔の筋肉が若干疲れた。それくらい、ニヤついてしまうところがたくさんある。
さて、悪い癖でまたダラダラと長くなってしまった。
ただシンプルに、「いい映画だった」で充分なのに、つい。
こんなご時世なので無理にとは言えませんが、できたらぜひ劇場で、この映画を楽しんでいただきたい。
どぅーが立派な女優として、銀幕の向こうで輝いている姿を。
どうかその目で。
工藤遥ちゃんのファンとして、どぅーの初主演映画がこの『のぼる小寺さん』で本当によかったと心から思える作品でした。
もう一回くらい見に行きたいなー。