またまたお久しぶりの読書感想ブログ。
とはいえ今回は全部同じ作者の本です。
本当はガッツリと翻訳SFでも読んでやろうと思ってたのに、いろいろあってそんな気分ではなくなってしまったので国内作品でなにかいいものは……と探っていたところ、森見登美彦がツボにハマりました。
ちなみにほとんどが再読です。
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太陽の塔 (新潮文庫)
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森見センセイのデビュー作。
一言でいえば、京都の阿呆な大学生が恋に遊びにうつつを抜かす青春小説……のようなもの。
水尾さんという彼女にフラれた腐れ大学生が、元カノを日夜追いかけて「水尾さん研究」にいそしむ物語でもあり。
しかしストーリーは正直どうでもよくて、特異な文体で綴られる主人公とその友達の、阿呆すぎる語りと思考を楽しむのが正しい。
若干クセが強めなので、初めて森見作品を読むならば別のやつがいいかも?
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四畳半神話大系 (角川文庫)
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二作目。
デビュー作と同じく京都の腐れ大学生の阿呆な日常を描いたものですが、パラレルワールドもののSFと言えなくもない。
全四章で、ありえた別々の選択肢による人生を描きつつ、最後は「なるほど」といったところに落とし込むのが上手い。
ちなみにこちらはアニメ化もされたので、知ってる方も多いでしょう。
わたくしはアニメも大好きです。神がかってますねあれは。
アニメを散々見たあとに再びこの原作を読むことで、さらに楽しめるでしょう。
こちらもデビュー作同様文体が特殊でクセが強いので、「読みづらい……」と感じた方はアニメを見てから読むとすんなりいけるはず。
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夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
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本屋大賞や山本周五郎賞を受賞し、森見作品では一番売れているであろう一冊。
一番売れているだけあって、べらぼうに面白い。
例の文体はそのままに、可愛らしい「黒髪の乙女」の一人称によってポップさが加わっているのが良い。
前二作はどちらかといわなくても文系男子の男臭い物語であり、女性キャラはあまり出てきません。
しかしここで黒髪の乙女を語りの一人に加えることにより、男臭さのなかに華やかな香りを漂わせることに成功している。(気がする)
前二作で出てきた様々なモチーフやキャラクターも再登場しているので、初期の集大成と言ってもいいでしょう。
ちなみに本作も「四畳半」と同じ制作チームによってアニメ映画化されてます。ちょっと前にDVD&BDが発売されたようなので、ぜひ見たい。
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きつねのはなし(新潮文庫)
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これまで狂騒的で阿呆な大学生の日常を独特な文体で描いてきた著者が、それまでと打って変わって淡々とした筆致で綴った怪奇文学的短編集。いわば裏モリミー。
はっきりしたオチがない分、気味の悪い読後感が残り、そこがいい。
この本もまた京都を舞台にしており、↑の三作と併せて京都の表と裏を見るような感覚で読もう。
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新釈 走れメロス 他四篇 (角川文庫)
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タイトルにもある走れメロスや、山月記、藪の中、桜の森の満開の下、百物語など、日本の古典文学を“新釈”というかたちで著者が綴る。
『四畳半神話大系』や『夜は短し歩けよ乙女』とも共通のモチーフが登場する陽モリミーから、『きつねのはなし』系の幻想文学まで幅広い作風。
短編集なので、ここから森見作品を読み始めてもいいかもしれません。
ちなみにハロヲタ的エピソードを言うと、本作を原作とした『詭弁・走れメロス』という舞台にがきさんが二度出演しましたね。(初演を観に行きました)
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([も]3-1)恋文の技術 (ポプラ文庫)
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今回、唯一初読の作品がこちら。(あとは全部再読)
いわゆる書簡小説というやつで、主人公の手紙を読む感じで物語が進んでいきます。
大学院生である主人公が、うら寂しい土地に飛ばされた寂しさを紛らわせるためにいろんな友人知人に手紙を送り、文通をしていくというストーリー。
とにかく徹頭徹尾、主人公の手紙だけが綴られています。なのにここまで面白いのが凄い。
著者自身まで登場し、ちょっとメタっぽい要素もあり。(そんな大げさなものでもないですが)
とまぁ、最近読んだのはこんな感じ。
著者の本は他にも、狸が主人公の『有頂天家族』シリーズや、珍しく少年が主人公で舞台が京都でもない『ペンギン・ハイウェイ』などなど面白い作品があるのでおすすめです。
ひと月ちょっと続いた森見祭りも一旦落ち着き、最近はミステリー(探偵小説)にハマっているわたくし。
SFはしばしお休み中です。