岡崎祥久 『ファンタズマゴーリア』
![]() | ファンタズマゴーリア 1,836円 Amazon |
ミラーワールドの少年マルテは、友人の実験に協力するため降り立った地上世界で、リヱカという少女に出会う。リヱカは友情の印にとんぼ玉をマルテにわたし、マルテはお返しに時間を折りたたむことができるピーナツをわたす。
マルテは猿のイススリウス師に導かれ、今度は地中世界アタラクシアへ。マルテはジャッカルの頭を持つマルコシアスや、多くの翼を持つ乙女マリ=ジャンヌら異形の仲間たちと合流。軍隊に追われる彼らを救うべく、剣を手にして立ち向かう。
しかしミラーワールドに戻ると、仲間たちは地中世界へ行った記憶を喪い、一人ずつ姿を消していくのだった。最後のひとりとなったマルタは、再びリヱカと会うことが出来るのか?
とんぼ玉に導かれて、三つの世界を巡る少年マルテ。世界と時空を超える想いを壮大なスケールで描いた、著者の新境地を開く大冒険譚!(Amazonより)
あらすじを読んでもよくわからないと思うが、読んでもあまりよくわからない。
ファンタジーであり、ジュブナイルであり、寓話であり、文学であり、そのどれでもないような、なんとも不思議な読み心地。
ここにはとりあえず三つの世界があり、ひとつは人間の住む地上世界、ひとつは主人公が暮らすミラーワールド、そしてもうひとつが地中世界。(地底世界ではない)
主人公であり、ミラーワールドの住人であるマルテは、ちょっとした理由から人間世界に降り立ち、そこでリヱカという女の子に出会う。
マルテ(少年)はマルタ(少女)でもあり、ピーナッツを噛むことで時間を折りたたむことができる。
やがて祖母となったリヱカと再会したマルテは、いつも悲しそうな顔をしている猿に連れられて、地中世界へと赴き、そこでかつての仲間、ミラーワールドの旧世代たちと再会するのだ。
何を言ってるのかわからないでしょうが、そういう具合に話は進んでいきます。
かといってまったく意味不明ではなく、むしろ面白くてページをめくる手は止まらない。
久々に、読み終えるのが惜しい本でした。
とにかく物語もキャラクターも文章も独特で、唯一無二の魅力がある。
そして読めばわかるけど、これはある“円環”の物語なのだと思う。
その円環も単純なものではなく、実に入り組んでいる。
再読に耐えうる強度を持った、なんとも不思議な傑作です。