澤村伊智 『ぼぎわんが、来る』


ぼぎわんが、来る/澤村伊智

¥1,728
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幸せな新婚生活をおくっていた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。原因不明の噛み傷を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、今は亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか?愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん”の魔の手から、逃れることはできるのか…。第22回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。(Amazonより)





すごい新人が現れた。


第22回日本ホラー小説大賞の大賞受賞作だが、近年の同賞のなかでは頭一つ抜けた傑作だ。



物語は、古典的ともいえるド直球の王道ホラー。


三重県の地方に伝わる怪異。
第一章の語り手、田原が子供のころに遭遇した“それ”が、幸せな家庭を持った現在、驚異となって迫りくる。


その怪異、最強にして最兇の化け物の名は、ぼぎわん。


乱杭歯の化身のようなその化け物は、人を頭から喰らい、子供を山へと攫っていく。


そんなぼぎわんから家族を守るべく、田原はオカルトライターの野崎を介して比嘉真琴という霊能者と出会う。


しかしぼぎわんは、真琴ですら太刀打ちできないほどの強大で凶悪な化け物だった。




第一章では田原の、第二章では田原の妻である香奈の、第三章では野﨑の視点で語られる構成。


この構成が上手い。
視点人物の一人称からは視えなかった出来事やその人物の側面などが、他の章で徐々にわかってくる仕掛けになっている。


なにより、新人のデビュー作とは思えないほどの筆力。リーダビリティ。


誰かベテランの別名義なのでは?と疑いたくなるほど達者だ。



そんな抜群の筆力で語られる物語はめちゃくちゃ面白く、それと同じくらい、怖い。


ホラーが平気な自分でも、真夜中に読んだときはちょっとビクビクしてしまったほどに←


それくらい読ませる力がある。
一度読みだしたら、もうページをめくる手は止まらないだろう。




いずれは貴志祐介や小野不由美レベルの作家さんになるんじゃないだろうか。


この波に乗り遅れてはいけない。


ホラー好きもそうでない人も、いますぐ読みましょう。