奥泉光 『シューマンの指』


シューマンの指 (講談社文庫)/奥泉 光

¥700
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音大のピアノ科を目指していた私は、後輩の天才ピアニスト永嶺修人が語るシューマンの音楽に傾倒していく。浪人が決まった春休みの夜、高校の音楽室で修人が演奏する「幻想曲」を偶然耳にした直後、プールで女子高生が殺された。その後、指を切断したはずの修人が海外でピアノを弾いていたという噂が……。(Amazonより)




ひとりの音楽家の卵が、かつての友との日々を回想する。


そこで展開されるのは、これでもかというほどのシューマン論。


読むだけでそれなりにシューマンに詳しくなれます。
しかしそっち方面への興味が皆無だと、読むのは苦痛になるかもしれない。


個人的にクラシック音楽はわりと好きなほうだけど、それでも語り手によるシューマン論や音楽論があまりに続き、加えて、語り手が心酔する天才ピアニスト永嶺修人への過剰な持ち上げ、ご機嫌取りに勤しむ様子などに辟易し、読んでて辛くなってくる。


永嶺修人が天才なのはわかったけど、いつも気まぐれで自己中で、おまけに肝心のピアノも全然弾かないし、こいつの何がそんなに凄いわけ?と語り手に聞きたくなるわ。



なので、途中まで読んでしばらく放置してました。



ところが、そこからが面白いところだった。


半分を過ぎたころ、とある女子高生の殺人事件が起こったあたりから急激に面白くなり、あとは一気呵成に読了。


読み進むうちに「もしやこれは信頼できない語り手では……」と気付き、ラストは、ああやっぱり……!


これ以上は言えません。


中盤までのシューマン論はすっ飛ばしてもいいから、殺人事件が起こるところまで我慢して読むと良いことがあるよ。