恩田陸 『EPITAPH東京』


EPITAPH東京/恩田 陸

¥1,836
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東日本大震災を経て、東京五輪へ。少しずつ変貌していく「東京」―。その東京を舞台にした戯曲「エピタフ東京」を書きあぐねている“筆者”は、ある日、自らを吸血鬼だと名乗る謎の人物・吉屋と出会う。吉屋は、筆者に「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」と囁きかけるのだが…。将門の首塚、天皇陵…東京の死者の痕跡をたどる筆者の日常が描かれる「piece」。徐々に完成に向かう戯曲の内容が明かされる作中作「エピタフ東京」。吉屋の視点から語られる「drawing」。三つの物語がたどり着く、その先にあるものとは―。これは、ファンタジーか?ドキュメンタリーか?「過去」「現在」「未来」…一体、いつの物語なのか。ジャンルを越境していく、恩田ワールドの真骨頂!!(Amazonより)




なんとも形容しがたい、不思議な一冊。


Kという語り手の“筆者”が東京を舞台にした戯曲を書くため、東京を歩き、観察する。
それは著者の東京にまつわるエッセイのようでもあり、しかしそのなかに出てくる吉屋という吸血鬼を自称する男が不穏分子として混じる。


それが「Piece」という章であり、そこに吉屋の一人称による「drawing」、“筆者”が書いた戯曲「エピタフ東京」の章が挿入されていく。


それらが混然一体となった、断片の集積のような風変わりな小説だ。



ストーリーを追うタイプの小説ではないけど、この著者特有の“ものを見る目”が好きなファンにとっては大いに楽しめると思う。



装丁もまた凝っていて、パッと見ただけでもそのカラフルなページが目につき、中をパラパラめくればアートのようなイタズラ書きのような絵や写真がおもしろい。


ぜひとも書店で現物を見てほしい。


表紙カバーを外した写真も綺麗です。