アーシュラ・K・ル・グィン 『闇の左手』


闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))/アーシュラ・K・ル・グィン

¥950
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〔ヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞〕両性具有人の惑星、雪と氷に閉ざされたゲセンとの外交関係を結ぶべく派遣されたゲンリー・アイは、理解を絶する住民の心理、風俗、習慣等様々な困難にぶつかる。やがて彼は奇怪な陰謀の渦中へと……エキゾチックで豊かなイメージを秀抜なストーリイテリングで展開する傑作長篇(Amazonより)




SF好きなら誰もが耳にしたことはあるであろう名作。


〈ハイニッシュ・ユニバース〉という未来史の中の一篇で、辺境の惑星ゲセンに使節としてやってきた主人公が、エクーメン連合という人類宇宙の総本山と同盟公約を結びにきたもののなかなか上手くいかずに四苦八苦しているうちにあれよあれよと陰謀に巻き込まれ、同じく陰謀によって宰相の地位を剥奪されて国を追放されたゲセン人のエストラーベンと共に、この冬の惑星の大氷原を延々と旅する物語である。



このゲセン人というのが特殊で、男も女もない両性具有人なのだった。


正確には、ケメルと呼ばれる一定期間だけ発情し、そのたびに男性女性いずれかの性を持つ。


ストーリーを楽しむというよりは、このゲセン人の特異な生体と、背後に控えるエクーメン連合の数世紀に渡る歴史が興味深い。


その緻密で奥行きのある世界観だけでも、たしかに名作と讃えられるだけのものはあった。



エンタメというよりは文学寄りなので、スラスラ読めるというわけにはいかないが、一度は読んでおくべき傑作でした。



同じ未来史に属する他の長編や短編も読まねば。