『LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-感謝祭』初日と千秋楽の二公演に行ってまいりました。
先日も言いましたが、とても幸せな空間でした。
なんで1年以上経ったあとやねんとか、なんで他のイベントと同じ時期やねんとか、少々文句も言ってしまいましたが、なにはともあれこのイベントを企画してくれてありがとうございます大人のみなさま。
大好きすぎるあの空間、あのキャラクター、あの物語が再び。
どうやら永遠の繭期から抜け出すことは不可能のようです。
聞くところによると千秋楽にはちゃんとしたカメラが入っていたそうなので(例によって自分は二階席なので確認はしてない。ステージ手前にハンディを設置したのは見えた)、たぶん映像化されるでしょう。たぶん。
とりあえず、自分の記録用も兼ねて二公演のレポを書いていきたいと思います。
二日間で変わったところはその都度書き、あとは基本的に一緒なのでご了承ください。
(私信ですが、初日の開演前ありがとうございました!またどこかで!)
さて第一部、永遠の繭期の情景「LILIUM新作短編演劇~二輪咲き」から。
思いっきりネタバレします。
どう書けばいいのかわからないので、思い出せる範囲で、ト書き風に書いていきたいと思います。
なので、まんまストーリーをなぞります。
細かいセリフや言い回しが違ってるかもしれませんが(結構曖昧です)、そこはご了承ください。
さすがに隅から隅まで記憶するのは厳しい。そんな特殊能力が欲しい。
大体の流れだけ把握していただければ、と。
さっきも言ったように千秋楽ではカメラが入ったようなのでたぶん映像化されるでしょうし、末満さんも(小説にするとか)なんらかの動きを見せる可能性がないとは言えないので、そっちでちゃんと知りたいという方はスルーが賢明かと思われます。
すでに観た、あるいは観てないけどどうしてもいまストーリーを知りたいという方だけ↓へ。
いいですね?
本当にいいですね?
では。
めちゃくちゃ長いよ。
ちなみにセットは、他のクールジャパン道イベにもあった低めの階段のみ。
こちらの殺陣道の写真にある階段です。他の装飾はなし。
冒頭、『LILIUM』と同じくリリー(鞘師)のモノローグ「かつて……ヴァンプは……」から始まる。
スモークが焚かれ、幻惑的な雰囲気のなか、ゆっくりと集まってくる繭期の少女たち。
そこには男子二人とリコリス(飯窪)以外の全員がいる。
そして『LILIUM』と同じように一斉に薬を飲み下す。
やがて去っていく少女たち。
シルベチカ(小田)だけが残る。ぼうっとした、心ここにあらずな表情。
そこに後方からゆっくりとやって来るリコリス「どうしたの?シルベチカ」
シルベチカ「あれ……?わたし、死んだはずじゃ……」
そこへリリーとチェリー(石田)が登場。
二人で「ああー!いたー!」と叫び、シルベチカを指さす。
リコリスが「こんにちは」と言ったあと、シルベチカが「こんにちは」と挨拶。
チェリー「こんにちはじゃないわよ!一緒にお昼食べようって約束したじゃない!」
シルベチカ「わたし、どうしてここにいるんだろう……」と、まだ心ここにあらずな雰囲気。
リリーとチェリー「「はあぁ?」」と困惑。
シルベチカ「わたし、飛び下りて死んだはずなのに……」
チェリー「し、死んだって……。あんた、ここにいるよ?」
リコリス「繭期の具合がよくないのね」
リリー「薬が足りてないんじゃない?」
そこへ新キャラ、ピーアニー(野中)登場「お姉様方!」
ピーアニーがお気に入りなのか、彼女をやたら可愛がるチェリー
「ピーアニー!か~わいいね~♪」
リリー「ちょっとチェリー!ピーアニーが困ってるわよ!」
チェリー「困ってなんかないわよね……?」
ピーアニー「いや……ちょっと困ってます……」
チェリー「困ってるピーアニーも可愛いな~♪この~♪(ヘッドロックのように捕まえる)」
ぼうっとしたままのシルベチカ「ピーアニー……。久しぶり」
チェリー「いやさっき薬の時間に会ったでしょう!あんた本当に大丈夫?」
シルベチカ「大丈夫。大丈夫!(と「鶴の舞い」みたいな変なポーズで客笑い)」
チェリー「いや全然大丈夫じゃないし!」
ピーアニー「それよりみなさん――」
チェリー、ピーアニーに向かって「あんたもさらっと流すわね!?」
シルベチカ「わたし、なんだか眠くなってきちゃった……」
チェリー「会話の途中で眠らないで!?」(ちなみにチェリーの勢いはLILIUM以上に激しくなってます)
(ここでリコリスも何か言ってたけど忘却。言葉自体はたぶん重要ではない)
リリー「それでピーアニー、なんの用なの?」
ピーアニー「紫蘭お姉様と竜胆お姉様が、集まるようにと」
リリー「紫蘭と竜胆が?」
ピーアニー「新入生が来るそうです」
(暗転)
段上に紫蘭(福田)と竜胆(譜久村)が一人の少女(マリーゴールド(田村))を連れて立っている。
リコリスを除く女子全員がその前に立っている。
紫蘭、少女に自己紹介するようにと促すも、マリーゴールド「どうしてそんなことしなくちゃいけないの?」「どうしてって……普通新しく入ってきたらそうするのが当たり前だろう」「それはあなたの当たり前であってあたしの当たり前じゃない。(その後も長々と暗い口調で文句を垂れる)あたしにとって当たり前なのは……みーんな大っ嫌いってこと……」
ドン引きしてざわざわする少女たち。
竜胆、取り繕うように「マ、マリーゴールドさんです」と紹介。
暗い表情のまま、不確かな足取りで去っていってしまうマリーゴールド。
やがて集まりはお開きに。
その場に残ってお喋りする少女たち。
チェリーとリリーに向かって、ローズ(鈴木)「ねえ聞いた?さっきの子、ダンピールなんですって」
カトレア(竹内)やナスターシャム(勝田)も加わり、「え~。ダンピールなんかと一緒に暮らすのやだ~」
明らかに挙動不審で落ち着かなくなるチェリー「ダン!ピー!ルッ!?」
ローズ「ダンピールなんかと一緒にいたら、身の毛がよだつわよねぇ」
チェリー「そ、そおーよね!?よだつわよね!?」と大声で挙動不審。
その様子を見てリリー「……なに動揺してんのよ」
チェリー「はあー!?動揺なんてしてませーん!?!これがあたしの普通ですけどー!?」と物凄い剣幕で拒否。
「それもそうか」「それがあんたの普通よね」とリリーやローズに納得されて「なによそのトゲのある言い方!」とチェリー。
カトレア「あ~それにしても退屈。退屈すぎて涅槃像」(千秋楽だけ涅槃像をやりましたw)
ナスターシャム「ねえ!相撲とろうよ!」
ローズ「よっしゃー!任しときんしゃーい!!」とやる気満々で去っていき、客喝采w
それを見送るチェリーとリリーの間に無理矢理割って入ったマーガレット(佐藤)「そんなの、どー!でも!いいー!!」とこれまたLILIUM以上のテンションで叫ぶ。
マーガレットがなんやかんや騒いで(曖昧)「今夜はダンスパーティーよ♪」
マーガレット、オダマキ(生田)を見つけ「あ!爺や~~!」と突撃するも、「爺やじゃない!」と叫ぶオダマキに頭を抑えられてジタバタ。
「爺やじゃないなら……婆や~~!」と同じ展開。
親衛隊に向かって田吾作だか与平だかなんだか変な名前で呼び、「ヒマワリ(室田)です」「モンステラ(相川)です」「ミモザ(佐々木)です」「名前なんて、ど~でもいい~!!」とおなじみのやりとりで去っていくマーガレットたち。
やがて他の少女たちも去り、チェリーとリリーとシルベチカが残るが、それを遠くから見つめるスノウ(和田)の姿が。
リリー「あれ……スノウ……」
しかしスノウは焦ったように足早に去ってしまう。
チェリー「なによあいつ。感じ悪いやつ」
リリー「スノウ……すごく寂しそうだった……」
チェリー「気にすることないって!あいつ、誰が話しかけても無視するんだから!」
リリー「でもスノウ……いつも悲しそうな顔であたしを見るの……。まるで何かを諦めたみたいな表情で……」
そこへキャメリア(中西)が登場。
「シルベチカ!」と嬉しそうに呼ぶ。
シルベチカも「キャメリア!」と嬉しそうに返し、二人で走り寄って抱きつく寸前にちょっと溜めてから思いっきり抱擁。(溜めるのは初日はなかった)
チェリー「ちょっとキャメリア!なにしに来たのよ!」「なにしにって……シルベチカに会いに来たんだ」「そういうのはもうちょっとこう、こそこそやるもんでしょ!」「どうしてこそこそなんてしなくちゃいけないんだよ!」また挙動不審なチェリー。
ついにLILIUMと同じように喧嘩が勃発。
リリー「仲が良いのね、あなたたち」
二人「「仲良くなんかない!!」」
そこにまたLILIUMと同じように「あぁぁぁぁ貧血がぁぁぁぁぁ!」と登場するファルス。
リリー、倒れ込むファルスに駆け寄って「ファルス!大丈夫……?」と心配する。
ファルス「リリー。僕を心配してくれてるのかい?」と嬉しそう。
「僕は大丈夫。いつもの貧血さ。よかったらこのあと、お茶でもどうかな……?」
「お茶は……ちょっと……」と恥ずかしがるリリー。
去っていこうとするも、ファルスがLILIUMと同じ要領でまさかのエア壁ドン。
「バンッ!」と自ら声に出してエア壁ドンするファルスw
リリー「はっ!壁ドン!壁がないのに壁ドン!」
キャメリア「これが噂のエア壁ドンか!」
逆方向に逃げようとするリリーを追いかけてもう一回エア壁ドン「バンッ!」
「ねえ、いまどんな気分だい?」といやらしく訊ねるファルス。
「当ててあげようか。いまとてもドキドキしてるだろう」と続けるファルスの後ろから、準備運動後に走ってきたチェリーが思いっきりどつく。
吹き飛ばされるファルス。
そこへ紫蘭がやってきて「こらー!お前たち(男子二人)、また女子寮に入り込んだな!」
ファルス「貧血がぁぁぁぁ」と逃げる。それを追いかけて去る紫蘭。
キャメリア、シルベチカに向けて「じゃあ僕たちも行こうか。こんなバカ(チェリーのこと)と一緒にいたらバカがうつる」
シルベチカ、チェリーのことを気にしながらも「じゃ、じゃあまたね」と二人で手を繋いで去っていく。
チェリー「なによー!バカって言うほうがバカなんだからー!!」
リリー、チェリーの肩をぽんと叩いて「素直じゃないんだから」「はぁっ!?なにが!?」とわかりやすいチェリー。
「まぁそう落ち込まずに」「落ち込んでなんかない!」「はいはい」
リリー、チェリーに腕を絡めて「今夜はとことん呑むぞー!」とこぶしを天に突き上げる。
チェリー「新橋のサラリーマンみたいなこと言わないでよ!」
(暗転)
またも一人でぼうっとしているシルベチカ。
そこにやって来たリコリス「どうしたのシルベチカ」
シルベチカ「なんだか眠れなくて……」
シルベチカ「最近おかしいの。わたしがここに来たのは1年くらい前のはずなのに、もう何年も昔のことのような気がする。それだけじゃない、昔のことが思い出せなくなるの……。忘れてるんじゃなくて、まるで誰かに“思い出すな”って言われてるみたいに……。それにね、夢を見るの。嵐の夜に、塔の上から飛び降りて死ぬ夢。誰かがわたしの名前を泣きながら叫んでいた……」
リコリス「ふ~ん。それは予知夢かもしれないわね」「予知夢?」「そう。繭期のヴァンプはイレギュラーと呼ばれる特殊な能力を持つことがあるの。繭期で研ぎ澄まされた感覚が、鋭い嗅覚を持ったり、危険を察知したり……(自分の左手のひらとシルベチカの右手のひらを合わせて)触れた相手の死を見ることができたり」「相手の……死を……?」「そう。あなたの夢は、繭期が見せる予知夢、未来の出来事なのかもしれないわね」「繭期が見せる……夢……?」
(暗転)
暗く物々しい雰囲気。
監督生二人に無理矢理連れて来られるマリーゴールド「なにするのよっ!」と戸惑う。
ゆっくりと妖しげに現れるファルス。さっきまでとは別人の雰囲気。
「そう恐がらなくても、別に君を取って食ったりはしないさ。でもこのクランで暮らすには、儀式を受けてもらわなくちゃならない」
マリーゴールド「儀式……?」
ファルス、マリーゴールドに近づき、一気に咬む。
マリーゴールドの悲鳴。
倒れ込むマリーゴールド。
イニシアチブを発動して立ち上がらせ、ひざまずかせるファルス。
紫蘭「これでお前もイニシアチブの虜だ」
ファルス「安心して。ここにいる限り、君の幸せは僕が守ってあげる」
紫蘭「歓迎するぞ、マリーゴールド」
ファルス「ようこそ、クランへ」
(暗転)
チェリーがシルベチカを呼び出して話をする。
シルベチカ「チェリー、話ってなに?」
チェリー「シルベチカ、話をする前に言っておきたいんだけどさ……あんたとあたしはクランに来る前からの幼馴染。あんたのことはとても大切に思ってる。それを前提に聞いてほしいんだけど……。あんたってさ、キャメリアと付き合ってるの?」「わたしと……キャメリアが?」「べ、別に誤魔化さなくてもいいわよ!(挙動不審)クラン中のみんなが噂してる。あんたとキャメリアは付き合ってるって。……なんていうかさ、あたしも、あんたなら割り切れるっていうか……。だから、もしあんたとキャメリアが付き合ってるんなら、あたしはあんたを応援しようと思って!(挙動不審で変な動き)」
しかしシルベチカ、戸惑いながら「ちょっと待って。わたしとキャメリアが付き合ってるだなんて、そんなことあるわけない」
「え……?」と逆に戸惑うチェリー。
「それにチェリー、キャメリアのことが好きなのはあなたのほうでしょう?(にこやかに)わたしはキャメリアなんかより、あなたのほうがずっと大事なの(チェリーの手をとるシルベチカ)だからわたしは、あなたのことを応援するよ」
そこへリコリスが(チェリーの背中側から)来て、シルベチカが「リコリス!」と気付く。
リコリス「シルベチカ、ちょっと調べ物を手伝ってほしいんだけど、いい?」と呼ぶ。
シルベチカ「うん、わかった。じゃあねチェリー」
残されたチェリー「どうなってんのよ……」
(暗転)
さっきの続き、リコリスと歩くシルベチカ。
シルベチカ「リコリス、調べものって……?」
リコリス「調べもの?」「リコリスが自分で言ったんじゃない」「ああ。あれは嘘」「嘘?」「そう。あなたをチェリーから引き離すための嘘」「どうしてそんなこと……」「だって、チェリーはキャメリアのことが好きなんでしょう?」「そうよ。だからわたしは二人のことを応援してあげようと――」「それが困るのよ!」「え……どういうこと……?」「あなたには言ってもわからないわ」
今までにない暗い声音でリコリス「キャメリアは……わたしのものよ」と言って去っていく。
(暗転)
青白い照明。逃げ惑うピーアニーの姿。
逃げた先には竜胆。
逆の方向へ逃げるも、紫蘭。
突破を試みるが、竜胆に捕まって地面に倒される。
ピーアニー「紫蘭お姉様!竜胆お姉様!どうしてこんなことを……!」
紫蘭「喜べピーアニー。お前はウルの適合試験者に選ばれたのだ」
ピーアニー「適合試験……?」
竜胆「そう。御館様はあなたの可能性を認められたのですよ」
そこへ現れるファルス。
ピーアニー、ファルスの足元にすがるように抱きついて叫ぶ「ファルスお兄様助けてください!紫蘭お姉様と竜胆お姉様が、繭期でお狂いになられてしまいました……!」
竜胆「御館様、準備が整いました」
それを聞いてファルスから離れるピーアニー「え……?御館様って……そんな……。だって御館様は血盟議会の偉い人で……」
ファルス、微笑みながら「本当はね、御館様なんていないんだ。このクランは、僕が作ったクランなんだよ」
ピーアニー「そんな!このクランはもう何百年も前に作られて――」「そうだ!僕が何百年も前に作ってずっと過ごしてきた!ずっと、たったひとりで……」「まさかあなたは……TRUMP?」「……TRUMP?僕がTRUMP?TRUE OF VAMPだって……?」
アハハハハハハハ!!!と笑い出すファルス。
「僕をあんなやつと一緒にするな!!」と激昂。
「クラウス!!僕から死を奪った……!!あんなやつと僕を一緒にするんじゃない!!!」
「僕はTRUEなんかじゃない…………僕は、FARCE(FALSE?)だ……!」
竜胆「……それでもわたしたちにとっては、あなたがTRUMPです」
紫蘭「さあ御館様、彼の者にスティグマをお刻みください」と言って短剣を渡す。
ファルス、ピーアニーの腕を取って強引に立ち上がらせ、一気に腹を刺す。
刺したまま抱きしめるようにして叫ぶファルス「大丈夫……君は僕が必ず救ってみせる……!僕が君を死なせやしない!!」
そして短剣を抜き、数歩よろめいて倒れるピーアニー。
ファルスはその傍らに膝をつき叫ぶ「さあ立ち上がるんだ!僕のしてきたことが間違いではないと教えてくれ!!不老不死を証明してみせろ!!!」
しかし動かないピーアニー。
よろめくように立ち上がるファルス「……君もウルにはなれなかったか……」
紫蘭「また失敗か……」
竜胆「どうすれば薬との完全な適合が果たせるのでしょう……」
紫蘭「やはり我々が不老不死になるなど、夜空に浮かぶあの星を摑まえるのと同じように無理なことなのか……」
ファルス「星を……」
そしてゆっくりと、かつてのクラウスやアレンと同じように、星を掴もうと手を伸ばすファルス。(照明とBGMが大きくなる)
だがその手はなにも掴めない。
俯いて床にくずおれるファルス。
それを優しく、包み込むように抱きしめる紫蘭と竜胆。
しばらくのち、ファルス「……すまない、紫蘭、竜胆」と言って顔をあげる。
「確かに、星を掴むようなことかもしれない……。でも僕は諦めない……必ず手にしてみせる……。永遠の繭期を」
と、ガサッという物音がする。
竜胆「誰だ!」と叫び、追いかける。
連れてきたのは、スノウだった。
ファルス「スノウ……」
紫蘭「聞いていたのか」
ファルス「スノウ、こっちへおいで」と言ってイニシアチブで自分の元へひざまずかせる。
スノウ「ファルス……どうしてあなたがわたしのイニシアチブを……」
ファルス、イニチアチブでスノウの記憶を改変する。
倒れ込むスノウをまた起き上がらせ、「スノウ、こんなところでどうしたんだい?」と明るい口調で話しかける。
スノウ「あれ……わたし、どうしてこんなところに……」
竜胆「もう夜も遅いですよ。早く部屋に帰ってお休みなさい」と優しく促す。
素直に帰っていくスノウ。
しかし途中で立ち止まり、三人のほうを振り向いてつぶやく
「……TRUMP」
紫蘭が驚いた声で「いまなんと?」
スノウ「あれ、わたし、なに言ってるんだろう……。ちょっと疲れてるみたい……。ごめんなさい……それじゃあ……」と、自分が何を言ったのか、自分でもわかっていない様子で去る。
竜胆「御館様、いまのは……」
紫蘭「まさか、記憶の改変が完璧ではなかったというのか」
呆然とするファルス「スノウ……どうして……。そうか、スノウ……。君は…………僕になりかけているのか……」
(暗転)
クランの少女たちのあいだで噂が立つ。
(ここは明確なシーンというより、ファルスの行いのイメージ的な演出)
少女たちが奥からゆっくりと歩いてくる。
手前から、ファルスもゆっくりと歩いていく。
すれ違う両者だが、互いに相手に反応はしない。
茫洋とした雰囲気のなかで、少女たち(LILIUM出てなかった組)の不安気なお喋りが飛び交う。
「ねえ知ってる?ピーアニーが死んじゃったんだって……」「殺されたらしいよ……」「血まみれのピーアニーを紫蘭と竜胆が庭に埋めてるのを誰かが見たって……」「じゃあわたしたちもここにいたら殺されちゃうの……?」
全員が横一列に並び、一斉に「嫌!殺されるのなんて嫌!」と叫ぶ。
そのとき、イニシアチブが発動して倒れる少女たち。
少女たちの後ろに立つファルスが、狂気を含んだ声で叫ぶ「……大丈夫。嫌な記憶はみんな消してあげる……。ここには幸せなことだけがあればいい……!」
やがて立ち上がった少女たち「ピーアニーって……誰?ピーアニーなんて子、このクランにはいなかった」
笑いながら去っていく少女たち。
両手で顔を覆って俯き、泣いている様子のファルス。
(暗転)
(LILIUMラストシーンと同じBGMがかかっている)
泣いているファルスと入れ替わるようにして、泣いているリコリスがそこにいる。
それを見たシルベチカ「リコリス!どうしたの?泣いてるの?」
リコリス「ピーアニーが……死んでしまったの……」「ピーアニーって……誰?あなたのお友達?そんな子、クランにはいないわ」「みんな忘れてしまったの……。シルベチカ、ここは箱庭よ。誰かがわたしたちのイニシアチブを掌握しているの」「誰かって誰が?」「そんなのわからないよ」
リコリス「でも大丈夫。あなたとわたしは二人で一人。あなたがわたしを忘れてしまっても、わたしがあなたを覚えているわ」シルベチカの頬に手をやる。
シルベチカ、急に茫洋とした表情になり「ごめんリコリス……。わたし、眠くなってきちゃったからもう行くね……」と言って去っていく。
そこへやって来たキャメリア「あ、ここにいた。話ってなに?」
近づいてくるキャメリアに抱きつくリコリス。
キャメリア、リコリスを抱きしめながら「なにかあった……?」と優しく訊ねる。
リコリス「キャメリア、わたしを抱きしめていて。こうしているととても安心するの。ずっとこうしていたい……」
キャメリア「僕は離れたりしないよ。僕たちはずっと、永遠に一緒にいよう。時が経って二人がお爺ちゃんやお婆ちゃんになっても一緒にいよう。……死が、二人を分かつまで」
リコリス「ありがとうキャメリア。でも……もしわたしたちが一緒にいられなくなるときが来たら……お願いがあるの」
(無音)
キャメリア「なんだい……? シルベチカ」
(暗転)
シルベチカとリコリスの声、
「「わたしを、忘れないで」」
《了》
は!?はぁ!?うあがぼえらあぁぁ!?
という気持ちになりました。
これはまさに『LYCORIS』のエピソード0。
『LYCORIS』もやってくれなきゃいかんやつですよ。切実に。
それにしても長かった。
書いてる途中、何度か心が折れそうになりましたorz
30分の演劇でこれか……。
大まかな流れは合ってると思いますが、「それ違くない?」とか「その曖昧なところはこうですよ」という部分があったらご教示くださると助かります。
このまま一気に自分流の考察まで書こうと思ったんですが、果てしない長さになりそうなのでまた次の更新で書きたいと思います。
とりあえずここまで。
先日も言いましたが、とても幸せな空間でした。
なんで1年以上経ったあとやねんとか、なんで他のイベントと同じ時期やねんとか、少々文句も言ってしまいましたが、なにはともあれこのイベントを企画してくれてありがとうございます大人のみなさま。
大好きすぎるあの空間、あのキャラクター、あの物語が再び。
どうやら永遠の繭期から抜け出すことは不可能のようです。
聞くところによると千秋楽にはちゃんとしたカメラが入っていたそうなので(例によって自分は二階席なので確認はしてない。ステージ手前にハンディを設置したのは見えた)、たぶん映像化されるでしょう。たぶん。
とりあえず、自分の記録用も兼ねて二公演のレポを書いていきたいと思います。
二日間で変わったところはその都度書き、あとは基本的に一緒なのでご了承ください。
(私信ですが、初日の開演前ありがとうございました!またどこかで!)
さて第一部、永遠の繭期の情景「LILIUM新作短編演劇~二輪咲き」から。
思いっきりネタバレします。
どう書けばいいのかわからないので、思い出せる範囲で、ト書き風に書いていきたいと思います。
なので、まんまストーリーをなぞります。
細かいセリフや言い回しが違ってるかもしれませんが(結構曖昧です)、そこはご了承ください。
さすがに隅から隅まで記憶するのは厳しい。そんな特殊能力が欲しい。
大体の流れだけ把握していただければ、と。
さっきも言ったように千秋楽ではカメラが入ったようなのでたぶん映像化されるでしょうし、末満さんも(小説にするとか)なんらかの動きを見せる可能性がないとは言えないので、そっちでちゃんと知りたいという方はスルーが賢明かと思われます。
すでに観た、あるいは観てないけどどうしてもいまストーリーを知りたいという方だけ↓へ。
いいですね?
本当にいいですね?
では。
めちゃくちゃ長いよ。
ちなみにセットは、他のクールジャパン道イベにもあった低めの階段のみ。
こちらの殺陣道の写真にある階段です。他の装飾はなし。
冒頭、『LILIUM』と同じくリリー(鞘師)のモノローグ「かつて……ヴァンプは……」から始まる。
スモークが焚かれ、幻惑的な雰囲気のなか、ゆっくりと集まってくる繭期の少女たち。
そこには男子二人とリコリス(飯窪)以外の全員がいる。
そして『LILIUM』と同じように一斉に薬を飲み下す。
やがて去っていく少女たち。
シルベチカ(小田)だけが残る。ぼうっとした、心ここにあらずな表情。
そこに後方からゆっくりとやって来るリコリス「どうしたの?シルベチカ」
シルベチカ「あれ……?わたし、死んだはずじゃ……」
そこへリリーとチェリー(石田)が登場。
二人で「ああー!いたー!」と叫び、シルベチカを指さす。
リコリスが「こんにちは」と言ったあと、シルベチカが「こんにちは」と挨拶。
チェリー「こんにちはじゃないわよ!一緒にお昼食べようって約束したじゃない!」
シルベチカ「わたし、どうしてここにいるんだろう……」と、まだ心ここにあらずな雰囲気。
リリーとチェリー「「はあぁ?」」と困惑。
シルベチカ「わたし、飛び下りて死んだはずなのに……」
チェリー「し、死んだって……。あんた、ここにいるよ?」
リコリス「繭期の具合がよくないのね」
リリー「薬が足りてないんじゃない?」
そこへ新キャラ、ピーアニー(野中)登場「お姉様方!」
ピーアニーがお気に入りなのか、彼女をやたら可愛がるチェリー
「ピーアニー!か~わいいね~♪」
リリー「ちょっとチェリー!ピーアニーが困ってるわよ!」
チェリー「困ってなんかないわよね……?」
ピーアニー「いや……ちょっと困ってます……」
チェリー「困ってるピーアニーも可愛いな~♪この~♪(ヘッドロックのように捕まえる)」
ぼうっとしたままのシルベチカ「ピーアニー……。久しぶり」
チェリー「いやさっき薬の時間に会ったでしょう!あんた本当に大丈夫?」
シルベチカ「大丈夫。大丈夫!(と「鶴の舞い」みたいな変なポーズで客笑い)」
チェリー「いや全然大丈夫じゃないし!」
ピーアニー「それよりみなさん――」
チェリー、ピーアニーに向かって「あんたもさらっと流すわね!?」
シルベチカ「わたし、なんだか眠くなってきちゃった……」
チェリー「会話の途中で眠らないで!?」(ちなみにチェリーの勢いはLILIUM以上に激しくなってます)
(ここでリコリスも何か言ってたけど忘却。言葉自体はたぶん重要ではない)
リリー「それでピーアニー、なんの用なの?」
ピーアニー「紫蘭お姉様と竜胆お姉様が、集まるようにと」
リリー「紫蘭と竜胆が?」
ピーアニー「新入生が来るそうです」
(暗転)
段上に紫蘭(福田)と竜胆(譜久村)が一人の少女(マリーゴールド(田村))を連れて立っている。
リコリスを除く女子全員がその前に立っている。
紫蘭、少女に自己紹介するようにと促すも、マリーゴールド「どうしてそんなことしなくちゃいけないの?」「どうしてって……普通新しく入ってきたらそうするのが当たり前だろう」「それはあなたの当たり前であってあたしの当たり前じゃない。(その後も長々と暗い口調で文句を垂れる)あたしにとって当たり前なのは……みーんな大っ嫌いってこと……」
ドン引きしてざわざわする少女たち。
竜胆、取り繕うように「マ、マリーゴールドさんです」と紹介。
暗い表情のまま、不確かな足取りで去っていってしまうマリーゴールド。
やがて集まりはお開きに。
その場に残ってお喋りする少女たち。
チェリーとリリーに向かって、ローズ(鈴木)「ねえ聞いた?さっきの子、ダンピールなんですって」
カトレア(竹内)やナスターシャム(勝田)も加わり、「え~。ダンピールなんかと一緒に暮らすのやだ~」
明らかに挙動不審で落ち着かなくなるチェリー「ダン!ピー!ルッ!?」
ローズ「ダンピールなんかと一緒にいたら、身の毛がよだつわよねぇ」
チェリー「そ、そおーよね!?よだつわよね!?」と大声で挙動不審。
その様子を見てリリー「……なに動揺してんのよ」
チェリー「はあー!?動揺なんてしてませーん!?!これがあたしの普通ですけどー!?」と物凄い剣幕で拒否。
「それもそうか」「それがあんたの普通よね」とリリーやローズに納得されて「なによそのトゲのある言い方!」とチェリー。
カトレア「あ~それにしても退屈。退屈すぎて涅槃像」(千秋楽だけ涅槃像をやりましたw)
ナスターシャム「ねえ!相撲とろうよ!」
ローズ「よっしゃー!任しときんしゃーい!!」とやる気満々で去っていき、客喝采w
それを見送るチェリーとリリーの間に無理矢理割って入ったマーガレット(佐藤)「そんなの、どー!でも!いいー!!」とこれまたLILIUM以上のテンションで叫ぶ。
マーガレットがなんやかんや騒いで(曖昧)「今夜はダンスパーティーよ♪」
マーガレット、オダマキ(生田)を見つけ「あ!爺や~~!」と突撃するも、「爺やじゃない!」と叫ぶオダマキに頭を抑えられてジタバタ。
「爺やじゃないなら……婆や~~!」と同じ展開。
親衛隊に向かって田吾作だか与平だかなんだか変な名前で呼び、「ヒマワリ(室田)です」「モンステラ(相川)です」「ミモザ(佐々木)です」「名前なんて、ど~でもいい~!!」とおなじみのやりとりで去っていくマーガレットたち。
やがて他の少女たちも去り、チェリーとリリーとシルベチカが残るが、それを遠くから見つめるスノウ(和田)の姿が。
リリー「あれ……スノウ……」
しかしスノウは焦ったように足早に去ってしまう。
チェリー「なによあいつ。感じ悪いやつ」
リリー「スノウ……すごく寂しそうだった……」
チェリー「気にすることないって!あいつ、誰が話しかけても無視するんだから!」
リリー「でもスノウ……いつも悲しそうな顔であたしを見るの……。まるで何かを諦めたみたいな表情で……」
そこへキャメリア(中西)が登場。
「シルベチカ!」と嬉しそうに呼ぶ。
シルベチカも「キャメリア!」と嬉しそうに返し、二人で走り寄って抱きつく寸前にちょっと溜めてから思いっきり抱擁。(溜めるのは初日はなかった)
チェリー「ちょっとキャメリア!なにしに来たのよ!」「なにしにって……シルベチカに会いに来たんだ」「そういうのはもうちょっとこう、こそこそやるもんでしょ!」「どうしてこそこそなんてしなくちゃいけないんだよ!」また挙動不審なチェリー。
ついにLILIUMと同じように喧嘩が勃発。
リリー「仲が良いのね、あなたたち」
二人「「仲良くなんかない!!」」
そこにまたLILIUMと同じように「あぁぁぁぁ貧血がぁぁぁぁぁ!」と登場するファルス。
リリー、倒れ込むファルスに駆け寄って「ファルス!大丈夫……?」と心配する。
ファルス「リリー。僕を心配してくれてるのかい?」と嬉しそう。
「僕は大丈夫。いつもの貧血さ。よかったらこのあと、お茶でもどうかな……?」
「お茶は……ちょっと……」と恥ずかしがるリリー。
去っていこうとするも、ファルスがLILIUMと同じ要領でまさかのエア壁ドン。
「バンッ!」と自ら声に出してエア壁ドンするファルスw
リリー「はっ!壁ドン!壁がないのに壁ドン!」
キャメリア「これが噂のエア壁ドンか!」
逆方向に逃げようとするリリーを追いかけてもう一回エア壁ドン「バンッ!」
「ねえ、いまどんな気分だい?」といやらしく訊ねるファルス。
「当ててあげようか。いまとてもドキドキしてるだろう」と続けるファルスの後ろから、準備運動後に走ってきたチェリーが思いっきりどつく。
吹き飛ばされるファルス。
そこへ紫蘭がやってきて「こらー!お前たち(男子二人)、また女子寮に入り込んだな!」
ファルス「貧血がぁぁぁぁ」と逃げる。それを追いかけて去る紫蘭。
キャメリア、シルベチカに向けて「じゃあ僕たちも行こうか。こんなバカ(チェリーのこと)と一緒にいたらバカがうつる」
シルベチカ、チェリーのことを気にしながらも「じゃ、じゃあまたね」と二人で手を繋いで去っていく。
チェリー「なによー!バカって言うほうがバカなんだからー!!」
リリー、チェリーの肩をぽんと叩いて「素直じゃないんだから」「はぁっ!?なにが!?」とわかりやすいチェリー。
「まぁそう落ち込まずに」「落ち込んでなんかない!」「はいはい」
リリー、チェリーに腕を絡めて「今夜はとことん呑むぞー!」とこぶしを天に突き上げる。
チェリー「新橋のサラリーマンみたいなこと言わないでよ!」
(暗転)
またも一人でぼうっとしているシルベチカ。
そこにやって来たリコリス「どうしたのシルベチカ」
シルベチカ「なんだか眠れなくて……」
シルベチカ「最近おかしいの。わたしがここに来たのは1年くらい前のはずなのに、もう何年も昔のことのような気がする。それだけじゃない、昔のことが思い出せなくなるの……。忘れてるんじゃなくて、まるで誰かに“思い出すな”って言われてるみたいに……。それにね、夢を見るの。嵐の夜に、塔の上から飛び降りて死ぬ夢。誰かがわたしの名前を泣きながら叫んでいた……」
リコリス「ふ~ん。それは予知夢かもしれないわね」「予知夢?」「そう。繭期のヴァンプはイレギュラーと呼ばれる特殊な能力を持つことがあるの。繭期で研ぎ澄まされた感覚が、鋭い嗅覚を持ったり、危険を察知したり……(自分の左手のひらとシルベチカの右手のひらを合わせて)触れた相手の死を見ることができたり」「相手の……死を……?」「そう。あなたの夢は、繭期が見せる予知夢、未来の出来事なのかもしれないわね」「繭期が見せる……夢……?」
(暗転)
暗く物々しい雰囲気。
監督生二人に無理矢理連れて来られるマリーゴールド「なにするのよっ!」と戸惑う。
ゆっくりと妖しげに現れるファルス。さっきまでとは別人の雰囲気。
「そう恐がらなくても、別に君を取って食ったりはしないさ。でもこのクランで暮らすには、儀式を受けてもらわなくちゃならない」
マリーゴールド「儀式……?」
ファルス、マリーゴールドに近づき、一気に咬む。
マリーゴールドの悲鳴。
倒れ込むマリーゴールド。
イニシアチブを発動して立ち上がらせ、ひざまずかせるファルス。
紫蘭「これでお前もイニシアチブの虜だ」
ファルス「安心して。ここにいる限り、君の幸せは僕が守ってあげる」
紫蘭「歓迎するぞ、マリーゴールド」
ファルス「ようこそ、クランへ」
(暗転)
チェリーがシルベチカを呼び出して話をする。
シルベチカ「チェリー、話ってなに?」
チェリー「シルベチカ、話をする前に言っておきたいんだけどさ……あんたとあたしはクランに来る前からの幼馴染。あんたのことはとても大切に思ってる。それを前提に聞いてほしいんだけど……。あんたってさ、キャメリアと付き合ってるの?」「わたしと……キャメリアが?」「べ、別に誤魔化さなくてもいいわよ!(挙動不審)クラン中のみんなが噂してる。あんたとキャメリアは付き合ってるって。……なんていうかさ、あたしも、あんたなら割り切れるっていうか……。だから、もしあんたとキャメリアが付き合ってるんなら、あたしはあんたを応援しようと思って!(挙動不審で変な動き)」
しかしシルベチカ、戸惑いながら「ちょっと待って。わたしとキャメリアが付き合ってるだなんて、そんなことあるわけない」
「え……?」と逆に戸惑うチェリー。
「それにチェリー、キャメリアのことが好きなのはあなたのほうでしょう?(にこやかに)わたしはキャメリアなんかより、あなたのほうがずっと大事なの(チェリーの手をとるシルベチカ)だからわたしは、あなたのことを応援するよ」
そこへリコリスが(チェリーの背中側から)来て、シルベチカが「リコリス!」と気付く。
リコリス「シルベチカ、ちょっと調べ物を手伝ってほしいんだけど、いい?」と呼ぶ。
シルベチカ「うん、わかった。じゃあねチェリー」
残されたチェリー「どうなってんのよ……」
(暗転)
さっきの続き、リコリスと歩くシルベチカ。
シルベチカ「リコリス、調べものって……?」
リコリス「調べもの?」「リコリスが自分で言ったんじゃない」「ああ。あれは嘘」「嘘?」「そう。あなたをチェリーから引き離すための嘘」「どうしてそんなこと……」「だって、チェリーはキャメリアのことが好きなんでしょう?」「そうよ。だからわたしは二人のことを応援してあげようと――」「それが困るのよ!」「え……どういうこと……?」「あなたには言ってもわからないわ」
今までにない暗い声音でリコリス「キャメリアは……わたしのものよ」と言って去っていく。
(暗転)
青白い照明。逃げ惑うピーアニーの姿。
逃げた先には竜胆。
逆の方向へ逃げるも、紫蘭。
突破を試みるが、竜胆に捕まって地面に倒される。
ピーアニー「紫蘭お姉様!竜胆お姉様!どうしてこんなことを……!」
紫蘭「喜べピーアニー。お前はウルの適合試験者に選ばれたのだ」
ピーアニー「適合試験……?」
竜胆「そう。御館様はあなたの可能性を認められたのですよ」
そこへ現れるファルス。
ピーアニー、ファルスの足元にすがるように抱きついて叫ぶ「ファルスお兄様助けてください!紫蘭お姉様と竜胆お姉様が、繭期でお狂いになられてしまいました……!」
竜胆「御館様、準備が整いました」
それを聞いてファルスから離れるピーアニー「え……?御館様って……そんな……。だって御館様は血盟議会の偉い人で……」
ファルス、微笑みながら「本当はね、御館様なんていないんだ。このクランは、僕が作ったクランなんだよ」
ピーアニー「そんな!このクランはもう何百年も前に作られて――」「そうだ!僕が何百年も前に作ってずっと過ごしてきた!ずっと、たったひとりで……」「まさかあなたは……TRUMP?」「……TRUMP?僕がTRUMP?TRUE OF VAMPだって……?」
アハハハハハハハ!!!と笑い出すファルス。
「僕をあんなやつと一緒にするな!!」と激昂。
「クラウス!!僕から死を奪った……!!あんなやつと僕を一緒にするんじゃない!!!」
「僕はTRUEなんかじゃない…………僕は、FARCE(FALSE?)だ……!」
竜胆「……それでもわたしたちにとっては、あなたがTRUMPです」
紫蘭「さあ御館様、彼の者にスティグマをお刻みください」と言って短剣を渡す。
ファルス、ピーアニーの腕を取って強引に立ち上がらせ、一気に腹を刺す。
刺したまま抱きしめるようにして叫ぶファルス「大丈夫……君は僕が必ず救ってみせる……!僕が君を死なせやしない!!」
そして短剣を抜き、数歩よろめいて倒れるピーアニー。
ファルスはその傍らに膝をつき叫ぶ「さあ立ち上がるんだ!僕のしてきたことが間違いではないと教えてくれ!!不老不死を証明してみせろ!!!」
しかし動かないピーアニー。
よろめくように立ち上がるファルス「……君もウルにはなれなかったか……」
紫蘭「また失敗か……」
竜胆「どうすれば薬との完全な適合が果たせるのでしょう……」
紫蘭「やはり我々が不老不死になるなど、夜空に浮かぶあの星を摑まえるのと同じように無理なことなのか……」
ファルス「星を……」
そしてゆっくりと、かつてのクラウスやアレンと同じように、星を掴もうと手を伸ばすファルス。(照明とBGMが大きくなる)
だがその手はなにも掴めない。
俯いて床にくずおれるファルス。
それを優しく、包み込むように抱きしめる紫蘭と竜胆。
しばらくのち、ファルス「……すまない、紫蘭、竜胆」と言って顔をあげる。
「確かに、星を掴むようなことかもしれない……。でも僕は諦めない……必ず手にしてみせる……。永遠の繭期を」
と、ガサッという物音がする。
竜胆「誰だ!」と叫び、追いかける。
連れてきたのは、スノウだった。
ファルス「スノウ……」
紫蘭「聞いていたのか」
ファルス「スノウ、こっちへおいで」と言ってイニシアチブで自分の元へひざまずかせる。
スノウ「ファルス……どうしてあなたがわたしのイニシアチブを……」
ファルス、イニチアチブでスノウの記憶を改変する。
倒れ込むスノウをまた起き上がらせ、「スノウ、こんなところでどうしたんだい?」と明るい口調で話しかける。
スノウ「あれ……わたし、どうしてこんなところに……」
竜胆「もう夜も遅いですよ。早く部屋に帰ってお休みなさい」と優しく促す。
素直に帰っていくスノウ。
しかし途中で立ち止まり、三人のほうを振り向いてつぶやく
「……TRUMP」
紫蘭が驚いた声で「いまなんと?」
スノウ「あれ、わたし、なに言ってるんだろう……。ちょっと疲れてるみたい……。ごめんなさい……それじゃあ……」と、自分が何を言ったのか、自分でもわかっていない様子で去る。
竜胆「御館様、いまのは……」
紫蘭「まさか、記憶の改変が完璧ではなかったというのか」
呆然とするファルス「スノウ……どうして……。そうか、スノウ……。君は…………僕になりかけているのか……」
(暗転)
クランの少女たちのあいだで噂が立つ。
(ここは明確なシーンというより、ファルスの行いのイメージ的な演出)
少女たちが奥からゆっくりと歩いてくる。
手前から、ファルスもゆっくりと歩いていく。
すれ違う両者だが、互いに相手に反応はしない。
茫洋とした雰囲気のなかで、少女たち(LILIUM出てなかった組)の不安気なお喋りが飛び交う。
「ねえ知ってる?ピーアニーが死んじゃったんだって……」「殺されたらしいよ……」「血まみれのピーアニーを紫蘭と竜胆が庭に埋めてるのを誰かが見たって……」「じゃあわたしたちもここにいたら殺されちゃうの……?」
全員が横一列に並び、一斉に「嫌!殺されるのなんて嫌!」と叫ぶ。
そのとき、イニシアチブが発動して倒れる少女たち。
少女たちの後ろに立つファルスが、狂気を含んだ声で叫ぶ「……大丈夫。嫌な記憶はみんな消してあげる……。ここには幸せなことだけがあればいい……!」
やがて立ち上がった少女たち「ピーアニーって……誰?ピーアニーなんて子、このクランにはいなかった」
笑いながら去っていく少女たち。
両手で顔を覆って俯き、泣いている様子のファルス。
(暗転)
(LILIUMラストシーンと同じBGMがかかっている)
泣いているファルスと入れ替わるようにして、泣いているリコリスがそこにいる。
それを見たシルベチカ「リコリス!どうしたの?泣いてるの?」
リコリス「ピーアニーが……死んでしまったの……」「ピーアニーって……誰?あなたのお友達?そんな子、クランにはいないわ」「みんな忘れてしまったの……。シルベチカ、ここは箱庭よ。誰かがわたしたちのイニシアチブを掌握しているの」「誰かって誰が?」「そんなのわからないよ」
リコリス「でも大丈夫。あなたとわたしは二人で一人。あなたがわたしを忘れてしまっても、わたしがあなたを覚えているわ」シルベチカの頬に手をやる。
シルベチカ、急に茫洋とした表情になり「ごめんリコリス……。わたし、眠くなってきちゃったからもう行くね……」と言って去っていく。
そこへやって来たキャメリア「あ、ここにいた。話ってなに?」
近づいてくるキャメリアに抱きつくリコリス。
キャメリア、リコリスを抱きしめながら「なにかあった……?」と優しく訊ねる。
リコリス「キャメリア、わたしを抱きしめていて。こうしているととても安心するの。ずっとこうしていたい……」
キャメリア「僕は離れたりしないよ。僕たちはずっと、永遠に一緒にいよう。時が経って二人がお爺ちゃんやお婆ちゃんになっても一緒にいよう。……死が、二人を分かつまで」
リコリス「ありがとうキャメリア。でも……もしわたしたちが一緒にいられなくなるときが来たら……お願いがあるの」
(無音)
キャメリア「なんだい……? シルベチカ」
(暗転)
シルベチカとリコリスの声、
「「わたしを、忘れないで」」
《了》
は!?はぁ!?うあがぼえらあぁぁ!?
という気持ちになりました。
これはまさに『LYCORIS』のエピソード0。
『LYCORIS』もやってくれなきゃいかんやつですよ。切実に。
それにしても長かった。
書いてる途中、何度か心が折れそうになりましたorz
30分の演劇でこれか……。
大まかな流れは合ってると思いますが、「それ違くない?」とか「その曖昧なところはこうですよ」という部分があったらご教示くださると助かります。
このまま一気に自分流の考察まで書こうと思ったんですが、果てしない長さになりそうなのでまた次の更新で書きたいと思います。
とりあえずここまで。