いい若いもんがクリスマスに一人でいるのは寂しいことだ、という風潮はいつから生まれたのだろう。


確かに周りを見渡せばそこかしこにカップルが点在し、街はもはやカップルの海である。


足の踏み場もないほどにカップルで溢れかえっているので、仕方ないからそのカップルたちの上を歩くしかない。


頭を不躾に踏まれても、カップルたちはみな恋人に夢中だから気にならないのだ。


しかし人の頭というのは当然ながら丸いので、歩きにくくてしょうがない。


とはいえ独り身の者たちは、街に溢れかえるカップルのように溢れかえっている場合ではないので、どうにかして目的地まで辿り着かなければならないという使命感にも似た何かに突き動かされ、歩きにくいカップルたちの頭の上をずんずん歩いていく。


慣れると楽しくなってきて、次第にバランス感覚が鍛えられてくるのが実感できる。


ある女性などは、自分に恋人がいない腹いせにわざとハイヒールを履いてカップルたちの頭を踏みつけるように歩いていく。


ハイヒールの踵というのは、細いぶんそこに力が一点集中するのでたいへん痛い。


それでも街に溢れかえるカップルたちは気にしない。


誰もがみな恋人だけを見つめ、恋人だけを想い、恋人と2人きりの世界にトリップしているのだ。


あまり羨ましいとは思えない。


恋人との逢瀬にトリップしてるあいだ中、道行く人々にガシガシ頭を踏まれまくるのはまっぴらごめんである。


ところでこの話は「クリスマスに一人でいるのは寂しいという風潮」について始めたはずだったのに、なぜか違う方向に流れてしまっている。


ちなみに自分はクリスマスに一人でいて寂しいと思ったことは生まれてこのかた一度たりともないのだけど、それを言うと強がりだと糾弾されたり、可哀想なものを見る目で見られたりするのであまり言いたくない。


しかし事実だ。
こないだ書いたサンタクロースの話と一緒で、自分にとってクリスマスという行事はほぼ他人事なのだ。


クリスマスにクリスマスらしいことをする義理もないし、前々から決めていたその日の予定というものもある。それはクリスマスとはなんら関係ない予定で、世間の風潮に合わせるためにその予定を変更してまでクリスマスらしいことをしようだなんてとてもじゃないが思えない。


そもそも起源を辿れば所詮クリスマスは自分とは無縁のイベントであり、いまさら自分が「最初からいましたよ」という顔をして参加するもの気が引ける。


仮に自分に恋人がいるとして(と書くことによって恋人がいないということが明るみに出たが気にしない)、クリスマスは普通にいつも通り過ごしたいと思う。


その日たまたま一緒にいたいと思ったのならそうするし、そう思わなかったのならそうしない。
大事なのはあくまで2人の気持ちであって、世間が決めたイベントに合わせることではないのだ。


ということを独り身の者が言っても寂寞とした虚しさが吹き荒れ、そんなこと言ってっから恋人がいねえんだよと罵られるだけとは知りつつ、言ってみました。









という深夜のクリスマス小話。


これらはもちろんネタですよ。フィクションです。


クリスマスなので、クリスマスらしいことをしてみようと思って書いてみました。



ハローとはなんの関係もない更新ですが、昔はそういうのもちょいちょい書いてた気がするのに最近書いてないなぁと思ったので、クリスマスを利用して書いた次第。



もう一度言いますが、これはネタです。フィクションです。


唯一本当なところは、恋人たちの頭を踏んで歩くとバランス感覚が鍛えられるというところだけです。おやすみなさい。