東山彰良 『ジョニー・ザ・ラビット』


ジョニー・ザ・ラビット (双葉文庫)/東山 彰良

¥648
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ハードボイルドというジャンルはあまり好みじゃないが、主人公が兎だというなら読まないわけにはいかない。




マフィアのドンに飼われ、雄としての誇りを胸に生きてきたジョニー・ラビット。いまはシクラメン通りに探偵事務所を構える彼のもとに、行方不明の兎の捜索依頼が舞い込んだ。兎の失踪なんて珍しくもなんともない。だが、単純なはずの事件は思わぬ展開をみせ、やがてジョニーは仇敵の待つ人間の街に―。ユーモアとペーソス溢れるピカレスク・ハードボイルド。(Amazonより)




というわけで、登場人物……いや登場兎物は、兎である。


後半は人間も出てくるが、視点はあくまで兎の側。


かつて人間に飼われていたジョニー・ラビット。
今は同胞相手に探偵稼業を営む日々。



兎だからといって、ファンシーな物語になるわけではまったくない。


最初に言ったようにこれは、ハードボイルド。男の物語なのだ。


むしろ人間よりも人間らしく、「人間になりたい」と密かに願ってしまう兎の業とでもいうべき懊悩と葛藤する内面描写が興味深い。


しかし依頼人に美しい雌兎が来るやいなや即座に交尾をしてしまうあたり、兎である。





著者のことは、個人的に『ブラックライダー』を読んで惚れた。


軽やかな文体の中に、深遠な哲学が含まれる文章がいい。



愛と哲学と野蛮さに満ちた、兎(と人間)の物語。


面白いよ。






ちなみについ最近、この『ジョニー・ザ・ラビット』の2年3ヶ月後を描いたという続編『キッド・ザ・ラビット ナイト・オブ・ザ・ホッピング・デッド』という作品が出たらしい。


どうやら兎の世界で「ゾンビもの」をやるんだとか。


そちらも要チェック。