相沢沙呼 『スキュラ&カリュブディス 死の口吻(タナトスのくちづけ)』


スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫)/相沢 沙呼

¥724
Amazon.co.jp



新潮文庫が新たにスタートさせたレーベル《新潮文庫nex》の1冊。



初夏。街では連続変死事件が起きていた。まるで狼に喰い千切られたような遺体。流通する麻薬。恍惚の表情で死んでいく少女たち。自らも死を求める高校生・此花ねむりは鈴原楓との出会いをきっかけに事件を調べ始める。だが、そこには3年前の殺人事件に繋がる驚愕の真実が隠されていた―。性と死、その果てに垣間見える少女の戦い。逸脱者たちが繰り広げる戦慄の新伝奇譚。(Amazonより)




これは面白かった。傑作。



ミステリ、ホラー、伝奇、百合、ちょいエログロなどなど魅惑的な要素を詰め込み、それらを浮ついた装飾にしないだけのしっかりとした文章力もある。



近未来と思しき社会で起こる連続変死事件。
高校生の鈴原楓と、美貌の同級生此花ねむりは知らず事件に深く関わっていく。



本書は、誤解を恐れず言えば、百合好きにはたまらない内容になってると思う。


普通の高校生である楓と、誰もが振り返るハーフ美少女のねむり。


何か暗い過去と罪を背負っている様子のねむりはなかなか心を開こうとしないが、楓の屈託のない優しさにどうしようもなく惹かれていく自分も感じていた。



だが待ってほしい。
百合とか苦手なんですけど~という向きにもおススメしたいわけは、この2人の関係がただの同性愛じみたものではないからなのだ。


ねむりが楓に惹かれる理由。
単に友情や愛情としてというのももちろんあるけど、伝奇ホラーならではの動機もあったりするのでそこはご安心(?)を。




ねむりや、後半に出てくる謎の美女瀬崎秋架、そして犯人の“能力”などなど、まだ残されている謎があるので、ぜひとも続編を書いてほしいところです。