東山彰良 『ブラックライダー』


ブラックライダー/東山 彰良

¥2,808
Amazon.co.jp




こういう大傑作に出会えることがあるから、読書はやめられない。





ようこそ。ここは地球の歴史がいちど終わったあとの新しい世界―弱肉強食の大西部。人を食糧とする者。それを許さない者。暴れる牛。蟲の蔓延。アウトローと保安官。人と牛の子。異形の王。虐殺。征伐。慈悲。突き抜けた絶望の先に咲く、希望の花―「世界」で闘える愛と暴力の暗黒大活劇。(Amazonより)





去年の《このミステリーがすごい!》国内編第3位の本書だけど、ジャンル分けは無意味。
ただただ小説の持つ力に圧倒される。



「6・16」と呼ばれる大災厄によって一度終わった世界。人が人を食べ、その命は道端の石ころよりも安い。
そんな世界も少しずつ変わってきた頃、アメリカ西部の連邦保安官バード・ケイジが追うのは悪名高きレイン兄弟とその仲間クロウ・フィッシュ。
どいつもこいつもクレイジーな連中が近未来のアメリカを舞台に西部劇をやってのけるのが第一部。


第二部では、メキシコにて牛と人間のハイブリッドである牛腹の子マルコの生い立ちと遍歴が語られる。
アメリカでは「ユダの牛」と呼ばれる牛腹の子は、稀に高い知性を持って生まれてくることがある。
高い知性と美しい容姿を授かったマルコは、世界中に蔓延しつつある〈蟲〉グサーノ・デ・エジョスを駆逐することを使命とし、やがて蟲に感染した人間たちへ慈悲の虐殺を施す旅に出た。


やがてマルコはジョアン・メロヂーヤと名を変え、その元には救いを求めるたくさんの人間が集まった。愛する者を蟲とジョアンに虐殺された怒れる人々で結成された討伐体と、ジョアンを守ろうとする人々との果てしない戦争が第三部にて描かれる。





まさに、暗黒大活劇黙示録。


これはちょっと、いやかなり凄まじい。



黙示録的な物語も凄いが、なにより文体の妙。


ちょっと翻訳調でありながら流麗で、粗暴に見えながらも敬虔。


この文章を読んでるだけでも楽しい。こんな日本人作家がいたとは。




正直万人受けする内容ではないけど、ハマればこれ以上のものはない。


この本に出会えてよかった、と自分は思いました。





ちなみに小口(ページの部分)は全面黒く塗られており、その黒さはページ内部まで染み込んでいるような作りになってます。


こんな感じ。






小口だけをあとから黒く塗った本なら珍しくはないが、最初からページに黒く印刷してあるのは初めて見た。金かかってる。


実際お値段もなかなかのものだけど、値段以上の価値がある傑作。




その辺のありきたりな物語に飽きたら、本書をどうぞ。