SJ・ワトソン 『わたしが眠りにつく前に』


わたしが眠りにつく前に (ヴィレッジブックス)/SJ・ワトソン

¥950
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「わたし」クリスティーン・ルーカスは、特殊な記憶障害を負っている。毎朝目覚める度、前日までの記憶が失われてしまうのだ。いまは長年連れ添った夫とふたり暮らし。毎日彼が誰かすらわからなくなるわたしを、夫は献身的な愛で受け入れてくれている。そんなある日、医師を名乗る若い男から電話がかかってくる。聞けば、すこし前から夫に内緒で彼の診察を受けているのだという。医師はここ数週間、あなたは毎日の出来事をひそかに書き綴ってきたと言い、日誌を見るように告げる。わたしは言われるまま、それを読み始めた。その先に何が待つのかも知らずに…。CWA最優秀新人賞受賞作。





1日分の記憶しか保つことができず、毎朝目覚めるたびに夫のベンは見知らぬ人になり、自分は知らず歳をとっている。


そんな障害を負っている主人公クリスティーンはある日、医師からかかってきた電話で、自分はここ2週間ほど「日誌」をつけていることを知らされる。


恐る恐る日誌をめくってみると、そこには自分の字で「ベンを信じちゃだめ」と書かれていた……。




物語の半分以上がこのクリスティーンの「日誌」からなる。


毎日、眠るたびにその日の記憶を失っていく主人公が、徐々に思い出してきた過去をその日誌に綴り、次の日の自分はそれを読んで過去を(思い出したことを)理解するのだ。


そうやって少しずつ過去の自分を取り戻していくクリスティーンだが、甲斐甲斐しく自分を世話してきてくれた夫のベンは、自分にいくつかの嘘をついていることもまた判明する。


日誌をつけていることは夫には内緒だ。自分と医師しか知らない。


果たして自分はベンのことを信用していいのだろうか?
自分はなぜこんなことになったのか。
何が本当で、何が嘘なのか。


徐々に過去を取り戻していく主人公と同じ視点で、読者も徐々に真相に近づいていく構成。




特殊な設定なので、ある程度ラストが予想できてしまうけど、読ませる力で最後まで楽しめる。



いかにも映画になりそうなサスペンスミステリーだなぁと思ってたら、どうやら映画化の予定があるらしいのでぜひ見たい。




文章も読みやすいので、翻訳モノは苦手という人でもたぶん大丈夫でしょう。傑作です。