森見登美彦 『ペンギン・ハイウェイ』


ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)/森見 登美彦

¥679
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腐れ大学生の主人公で京都を舞台に狂騒的な作品を書く著者が、今回は小学生を主人公にしたひと夏の出会いと別れとペンギンを描いた。




ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知っている。毎日きちんとノートを取るし、たくさん本を読むからだ。ある日、ぼくが住む郊外の街に、突然ペンギンたちが現れた。このおかしな事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにした―。少年が目にする世界は、毎日無限に広がっていく。第31回日本SF大賞受賞作。





というあらすじ紹介からわかるように、日本SF大賞を受賞したSFでもある。


しかしSFの小難しい論理などは一切ないのでご安心を。
スタニスワフ・レムの名作SF『ソラリス』に似た要素があるから、その筋の層にも受けたということでしょうね。




なにより素晴らしいのは、主人公アオヤマくんの一人称。


小学4年生らしいのからしくないのか、子供でもあり大人のようでもある。実に微笑ましい。



そしてもうひとり、歯科医院のお姉さんがこれまた魅力的。


子供の頃、こんなお姉さんがいたらそりゃ好きになっちゃうよなぁ……というね。



突如街に出現したペンギンたちと、森の奥に現れた謎の〈海〉。


アオヤマくんと友達のウチダくん、可愛い同級生のハマモトさんらと共に、時折いじわるなスズキくん一派に悩まされながらも、ペンギンと〈海〉とお姉さんの研究に勤しんでいく。




ラストはなんとも言えず切ない……。




これは傑作です。おススメ。