森博嗣 『地球儀のスライス』


地球儀のスライス A SLICE OF TERRESTRIAL GLOBE (講談社文庫)/森 博嗣

¥720
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《S&Mシリーズ》完結後に刊行された(という情報は別に重要ではない)、森博嗣の第二短編集。




収録作は、


「小鳥の恩返し」

「片方のピアス」

「素敵な日記」

「僕に似た人」

「石塔の屋根飾り」

「マン島の蒸気鉄道」

「有限要素魔法」

「河童」

「気さくなお人形、19歳」

「僕は秋子に借りがある」





お気に入りは、「小鳥の恩返し」、「石塔の屋根飾り」、「僕は秋子に借りがある」かな。「河童」も良かった。



「石塔~」と「マン島~」は《S&Mシリーズ》の短編であり、「僕に似た人」もそれに近い作品である。


このあたりは、注意深く読めば(あるいは深読みすれば)理解できるでしょう。


「僕に似た人」、こういうキャラクターの仕掛け?は、第三短編集『今夜はパラシュート博物館へ』に収録されている「卒業文集」とも共通するところがある。


いずれも、一般的な人物の一人称ではないという点がポイントだ。


とはいえ作者的にはハッキリとした答えがあるわけではなく、そう読めないこともない、という感じなんだとは思うけど。






「気さくなお人形、19歳」は、、《Vシリーズ》に出てくる練ちゃんのお話。


どうやらこれの続編が、長編の『朽ちる散る落ちる』らしいのでそっちも要チェック。





ラストの「僕は秋子に借りがある」は、素敵な寂しさの余韻を醸し出す名品。


著者の自選短編集の表題になったのも頷ける。









どの作品も森氏特有のセンスに彩られ、長編に比べて文学的/詩的な要素が目立つのも特徴。


今後、何度か読み返したい作品です。