深緑野分 『オーブランの少女』


オーブランの少女 (ミステリ・フロンティア)/深緑 野分

¥1,620
Amazon.co.jp



第七回ミステリーズ!新人賞佳作に入選した表題作を含む、《少女》にまつわる中短編が五編。



収録作は、


「オーブランの少女」

「仮面」

「大雨とトマト」

「片想い」

「氷の皇国」




表題作の「オーブランの少女」は、まるで映画を見ているかのように映像が浮かんできた傑作。


今は老姉妹とおぼしき2人が管理人を務める美しい庭には過去の悲劇の残骸が燻り続けており、ある日それは顕現してしまう。


地下に幽閉されていたまるで悪鬼のような様相の女性が、老姉妹の姉を殺害したのだ。


病気の少女たちの養成所だったかつてのオーブラン。


美しくも妖しい花園は、いかにして崩壊し、現在の殺人事件に至ったのか。



広義のミステリとしても、少女たちの輝かしい人生の刹那を描いた青春小説としても素晴らしい。


もっと書き込んで、長編にしてもよかったのではと思えるほど。





それ以外にも、《少女》をテーマにしたミステリ風のゴシック中短編が収められている。


個人的には、日本の女学校を舞台とした「片想い」が好き。





著者はこれがデビュー作とのことだけど、今後が非常に楽しみな作家さんです。