津原泰水 『バレエ・メカニック』
バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)/津原 泰水

¥713
Amazon.co.jp
日本作家の中でも特に上質の文章を書く作家、津原泰水の幻想SF長編。
全体は三章に分かれており、第一章「バレエ・メカニック」では、長年昏睡状態にある少女・理沙が視る夢の具現化の波が東京の街を徐々に浸食するシュールな幻想美が描かれる。
何ひとつ確かなことがない世界、正確には、何ひとつ確かなことが「視えない」混沌の中で、理沙の父親である芸術家・木根原の彷徨が、主治医の龍神による二人称という珍しいかたちで物語られていく。
第二章「貝殻と僧侶」では三人称。
三年前のかつての混沌は《理沙パニック》と名付けられ、かつて死んだはずの理沙の幻影を追い、龍神視点でミステリタッチな展開が続く。
驚いたのが第三章「午前の幽霊」。
ギブスン『ニューロマンサー』もかくやというほどの、いわば津原流サイバーパンクな世界が繰り広げられる。
主に幻想文学を書いてきた津原泰水が、ここまでハッキリとSFを書くとは思わなかった。
先述したように津原泰水は硬質で流麗な文章を書く作家で、その一文一文に痺れる。
思わず「完璧な小説だ」と言ってしまうそうなくらい、美しい。
それ以上言葉は不要で、とにかく読んでこの幻想に溺れるのが吉。
こんな小説がなんの文学賞も獲っていないというのは遺憾であるが、安易な「読みやすさ」や「わかりやすさ」に迎合しない著者の筆にはむしろ似つかわしいのかもしれない。
まさに傑作。
誰が読んでも面白いとは言えまいが、後世まで真に残るべきはこういった小説であってほしいと思う。
バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)/津原 泰水

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日本作家の中でも特に上質の文章を書く作家、津原泰水の幻想SF長編。
全体は三章に分かれており、第一章「バレエ・メカニック」では、長年昏睡状態にある少女・理沙が視る夢の具現化の波が東京の街を徐々に浸食するシュールな幻想美が描かれる。
何ひとつ確かなことがない世界、正確には、何ひとつ確かなことが「視えない」混沌の中で、理沙の父親である芸術家・木根原の彷徨が、主治医の龍神による二人称という珍しいかたちで物語られていく。
第二章「貝殻と僧侶」では三人称。
三年前のかつての混沌は《理沙パニック》と名付けられ、かつて死んだはずの理沙の幻影を追い、龍神視点でミステリタッチな展開が続く。
驚いたのが第三章「午前の幽霊」。
ギブスン『ニューロマンサー』もかくやというほどの、いわば津原流サイバーパンクな世界が繰り広げられる。
主に幻想文学を書いてきた津原泰水が、ここまでハッキリとSFを書くとは思わなかった。
先述したように津原泰水は硬質で流麗な文章を書く作家で、その一文一文に痺れる。
思わず「完璧な小説だ」と言ってしまうそうなくらい、美しい。
それ以上言葉は不要で、とにかく読んでこの幻想に溺れるのが吉。
こんな小説がなんの文学賞も獲っていないというのは遺憾であるが、安易な「読みやすさ」や「わかりやすさ」に迎合しない著者の筆にはむしろ似つかわしいのかもしれない。
まさに傑作。
誰が読んでも面白いとは言えまいが、後世まで真に残るべきはこういった小説であってほしいと思う。