ジョージ・R・R・マーティン『氷と炎の歌① 七王国の玉座〔改訂新版〕』


七王国の玉座〔改訂新版〕 (上) (氷と炎の歌1)/ジョージ・R・R・マーティン

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七王国の玉座〔改訂新版〕 (下) (氷と炎の歌1)/ジョージ・R・R・マーティン

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あらすじと感想を書く前に一言。



やっと読み終わった……長かった……。





というわけで、SF/ファンタジー/ホラーとジャンルを超えて活躍する作家ジョージ・R・R・マーティンの大河ファンタジー《氷と炎の歌》第一部『七王国の玉座』の改訂新版、半月以上かかってようやく読み終えたよ。



ローカス賞を受賞し、世界中で大ベストセラーになっているこのシリーズ。


日本ではSF作家として知られていたマーティンの代表作で、現在第五部まで(本国でも日本でも)刊行されてます。




舞台となるのは薔薇戦争時の中世イギリスを思わせる架空の諸国ウェスタロス大陸。


夏と冬が不規則に巡ってくるこの世界はいま、長い夏を終えて、厳しい冬の到来を予感させていた。


かつてはその名の通り七つの王国であった七王国にて、前「王の手(王の右腕的存在)」が死亡し、〈鉄の玉座〉に座る王ロバート・バラシオンの旧友であるスターク家の主エダード・スタークが「王の手」に任命された頃から、七王国に不穏の影が忍び寄る。



とにかく膨大な量の歴史と登場人物と家柄と地名が頻出するので、序盤はそれらの名称と関係性を把握するので手一杯になる。


どうやらキャラだけでも200名を超える模様。


それを全部覚える必要はないけど、この半分くらいはみんな重要な人物となる。



前王エイリスを打ち破って王になったロバート率いる『バラシオン家』。

その王の旧友であり「王の手」にも任命されたエダード率いる『スターク家』。

バラシオン家に仕えると共に、王ロバートと結婚した王妃サーセイがいる『ラニスター家』。

前「王の手」であったジョン・アリン率いる『アリン家』。

前王エイリスとドラゴンの血塗られた歴史を持つが、今はたった2人の子供を残し滅亡に瀕する古代王朝『ターガリエン家』。



他にもまだまだあるけど、めんどくさいので省略w




メインとなるのは、七王国で繰り広げられる王の座をめぐる権謀術数の数々。


ファンタジーと言っても、この第一部ではほとんどファンタジー要素は出てこない。


まさしく西洋戦国歴史絵巻とでも言うべき忠誠と裏切りと名誉と殺戮の饗宴。


基本的にはロバート王率いるバラシオン家と、スターク家(ここが主人公格)と、ラニスター家(ここが悪役格)の危うい関係性を追うかたちで物語は進む。


しかし主人公や悪役とは言うものの、はっきりと勧善懲悪なわけでもなく、それぞれが良くも悪くも人間味溢れるリアルな個性を持ち、なかでもラニスター家の奇形児である〈小鬼(インプ)〉ことティリオン・ラニスターはこの世界で唯一のオールマイティな視点を持つ人物として興味深い。




一方、大陸の北部に存在する《壁》はさらに北にある幽霊の森と七王国を分断しており、そこには終生《壁》の警護に従士することを誓った『冥夜の守人(ナイツウォッチ)』たちがいた。


スターク家の私生児であるジョン・スノウは新たにナイツウォッチに志願するが、そこでは何やら人知を超えた脅威が現れ始め、さながらホラー小説の様相を呈していたりする。




さらに他方、前王であり古代王朝の末裔であるターガリエン家の2人の兄妹は、その手に王の座を奪還せんと陰謀を巡らせていた。


ドラゴンを自称する高慢な兄ヴィセーリスは、妹のデナーリスをとある部族と結婚させて強大な兵力を手に入れようとする。


この兄貴がまたムカつく野郎なんだけど、最初はオドオドと兄に付き従うだけだった妹、通称《嵐の申し子(ストームボーン)デナーリス》が少しずつ成長してたくましくなっていく過程も面白い。




それら、大まかに言えば3つのパートを、幾人もの登場人物の視点から描いていく大群像劇がこの大河ファンタジーの醍醐味。





あらすじを説明するだけでこんなにかかることからもわかるように、やたら長い。とにかく長い。


文庫版上下巻合わせて1400ページを超える分量。


書店で本を手に取っただけで読書意欲が減衰しそうなレベルである。



だけど心配は無用。
「現代最高のファンタジー」と称されたのも頷けるほどに面白い。


上巻の前半は世界観の把握でもたつくものの、以降はページをめくる手が止まらずにグイグイ読める。(それでも時間はかかりますw)



まず読み始めることに勇気が必要なこのシリーズだけど、読んで損はなかった。
むしろ、なぜ今まで読まなかったのかと自分を責めたいデスorz






しかし長い長いとは言ったものの、この第一部はシリーズでは一番短いお話なのだ。なんてこった。


読むのに半月もかかったのに、まだ全体のほんのプロローグに過ぎないとはね(苦笑)


物語が本格的に動き出す第二部『王狼たちの戦旗』も、近いうちに読みたいと思います。







ちなみに本作は『ゲーム・オブ・スローンズ』のタイトルでテレビドラマ化もされており、本を読む踏ん切りがつかないという人はまずドラマから入るのもいいかもネ。


You Tubeにダイジェスト映像があったので貼っておきます。








一応、全七部作で完結予定とのことだけど、元々は三部作が六部作に伸び、それがさらに七部作まで伸びた経緯があるからどうなるのかはわかりません。
きっと作者にもわからないのでしょうよw




とにかく面白いことは間違いないので、濃密な読書がしたい方におススメの傑作シリーズ開幕編でした。









あ、この文庫版に「改訂新版」と付いているのは、単行本刊行時の第四部から翻訳者が代わり、一部用語や人物名が変更され物議をかもした経緯があるからです。


でもこれから読もうという人はこの上下巻の文庫から読み始めれば問題ないし、すでに他の版を読んでる人には説明するまでもないことだろうから詳細は省く。


最初は第二部までは全五巻形式で文庫化されてたんですけどね。
すでに絶版になってるので、書店ではこの改訂新版(上下二巻)しか手に入らないと思うから大丈夫でしょう。