マックス・ブルックス 『WORLD WAR Z』
WORLD WAR Z 上 (文春文庫)/マックス ブルックス

¥690
Amazon.co.jp
ブラピ主演で映画化もされた、タイトルそのまま、世界ゾンビ戦争についての記録である。
まさに記録。
というのも、これは全編「ゾンビ戦争を生き残った様々な人々へのインタビュー」という体裁になっているのである。
映画は見てないのでよく知らんけど、予告を見る限りでは原作とだいぶ違うっぽい。
そもそもブラピは誰役なんだ?この物語に主役なんてものはいないはずなのに。
主役は人類。あるいはゾンビ。
中国で発生した謎の疫病によって世界中に蔓延した「生きた死者」の群れ。そして勃発する世界ゾンビ戦争。
インタビュアーは、戦争が一応の終結を見たあとに、生き残った人々の話を聞いていく。
ゾンビを見つけた中国の医者から始まり、色んな軍人、色んな民間人、違法渡航の案内役、嘘っぱちのワクチンを売って大儲けした連中、宇宙に取り残された飛行士、その他諸々、これでもかという数の証言者がそれぞれのゾンビ戦争を語る。
もちろん日本人もいたけど、これが違う意味で面白い。
まず出てくるのはオタク。
家族とは疎遠で、パソコンの中が全世界というオタク青年が命からがらマンションを大脱出して最後に見つけた武器はなんと日本刀。
次が盲目の老人。
てんやわんやあって、一人山中で暮らすこととなった老人は、座頭市もかくやというほどの心眼っぷりを発揮してゾンビを一蹴するという具合。
色々とイメージ先行なのは否めないが、まぁ外国人の書く日本人にしてはまだ良いほうだよねw
そんなことよりゾンビなんだけど、話の半分以上はゾンビというよりゾンビに関わる「生きた人間たち」の話。
ゾンビ発生という特殊な状況を除くと、軍事小説とか政治小説とかパンデミック小説としても読める。
人間ときたら、世界がゾンビで埋め尽くされそうだというときにも、政治的・人間的な愚かさを止められないんだから参る。
人類は、たとえ滅亡への道を歩み始めたところで一丸となって敵と戦うなんてことはできない生き物なのかもしれない。
そんな感じで、「世界がゾンビだらけになったらこうなるだろうね」というシミュレーションとして、非常に面白い内容になってます。
しかし、いかんせん長い。
さっきも言ったように、これでもかという人数にインタビューしているので、下巻の中盤辺りから「もうええわ!」となるかも。
おかげで、作中人物と同じような「世界ゾンビ戦争」への倦怠感に包まれることはできたけどね。
いやホント長かったよな、あの戦争は。
語り口が達者で、翻訳モノとしてはかなり読みやすい。
インタビューの一編一編は本当に面白いので、少しずつ読み進めるのが良いかもしれません。
傑作でした。
WORLD WAR Z 上 (文春文庫)/マックス ブルックス

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ブラピ主演で映画化もされた、タイトルそのまま、世界ゾンビ戦争についての記録である。
まさに記録。
というのも、これは全編「ゾンビ戦争を生き残った様々な人々へのインタビュー」という体裁になっているのである。
映画は見てないのでよく知らんけど、予告を見る限りでは原作とだいぶ違うっぽい。
そもそもブラピは誰役なんだ?この物語に主役なんてものはいないはずなのに。
主役は人類。あるいはゾンビ。
中国で発生した謎の疫病によって世界中に蔓延した「生きた死者」の群れ。そして勃発する世界ゾンビ戦争。
インタビュアーは、戦争が一応の終結を見たあとに、生き残った人々の話を聞いていく。
ゾンビを見つけた中国の医者から始まり、色んな軍人、色んな民間人、違法渡航の案内役、嘘っぱちのワクチンを売って大儲けした連中、宇宙に取り残された飛行士、その他諸々、これでもかという数の証言者がそれぞれのゾンビ戦争を語る。
もちろん日本人もいたけど、これが違う意味で面白い。
まず出てくるのはオタク。
家族とは疎遠で、パソコンの中が全世界というオタク青年が命からがらマンションを大脱出して最後に見つけた武器はなんと日本刀。
次が盲目の老人。
てんやわんやあって、一人山中で暮らすこととなった老人は、座頭市もかくやというほどの心眼っぷりを発揮してゾンビを一蹴するという具合。
色々とイメージ先行なのは否めないが、まぁ外国人の書く日本人にしてはまだ良いほうだよねw
そんなことよりゾンビなんだけど、話の半分以上はゾンビというよりゾンビに関わる「生きた人間たち」の話。
ゾンビ発生という特殊な状況を除くと、軍事小説とか政治小説とかパンデミック小説としても読める。
人間ときたら、世界がゾンビで埋め尽くされそうだというときにも、政治的・人間的な愚かさを止められないんだから参る。
人類は、たとえ滅亡への道を歩み始めたところで一丸となって敵と戦うなんてことはできない生き物なのかもしれない。
そんな感じで、「世界がゾンビだらけになったらこうなるだろうね」というシミュレーションとして、非常に面白い内容になってます。
しかし、いかんせん長い。
さっきも言ったように、これでもかという人数にインタビューしているので、下巻の中盤辺りから「もうええわ!」となるかも。
おかげで、作中人物と同じような「世界ゾンビ戦争」への倦怠感に包まれることはできたけどね。
いやホント長かったよな、あの戦争は。
語り口が達者で、翻訳モノとしてはかなり読みやすい。
インタビューの一編一編は本当に面白いので、少しずつ読み進めるのが良いかもしれません。
傑作でした。