古野まほろ 『群衆リドル Yの悲劇'93』


群衆リドル Yの悲劇’93 (光文社文庫)/古野 まほろ

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かつて『天帝のはしたなき果実』でメフィスト賞を獲ってデビューした異才。


しかし版元(講談社)とのトラブルにより、しばらく新作が出ない状態が続く。


そんな沈黙を破り、復活第一弾として(揉めたのとは違う版元から)刊行したのがこの『群衆リドル』である。





それまでの著作と比べると、過剰なまでの衒学趣味はやや鳴りを潜めて物足りないけど、そのぶん読みやすさは向上。



語り手の渡辺夕佳と、探偵役の八重洲家康をメインに、今や懐かしさすら感じるコテコテの本格推理劇が幕を挙げる。





雪の山荘、偽の招待状で集められたいわくありげな人物たち、マザーグースの見立て殺人、読者への挑戦状。


古き良き探偵小説の楽しみと、著者らしい博学と音楽と情熱が入り混じる傑作だ。





他作品とのリンクもあるようで、あの名前や、あの人物とおぼしき仄めかしも、ファンにとっては楽しい。



まほろ入門書としても、おススメの一冊です。