七河迦南 『アルバトロスは羽ばたかない』


アルバトロスは羽ばたかない/七河 迦南

¥1,995
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シリーズ前作『七つの海を照らす星』で鮎川哲也賞を受賞してデビューした作家の2作目。




前作は、児童養護施設「七海学園」で起こる日常の謎を、新米職員である北沢春菜が解決していくストーリーだった。


今回もそれは変わらず、春・夏・初秋・晩秋と事件が起こり、その合間にメインとなる転落事件《冬の章》が挿入されていく構成。




それぞれの事件も見事ながら、プロローグから始まった冬の章の転落事件のほうも気になる。


いわば縦軸である転落事件を解くカギが、四つの日常の謎の中に隠されているのも良い。



一通り手がかりも揃い、さーてあとは冬の章の解決編……と思っていたら、最後にとんでもない衝撃が待ってたよ。



自分は前評判を多少聞いていたので、そういう感じなんだろうなーとは思っていたものの、斜め上からカウンターを喰らったような衝撃である。


これは凄い。まさかこうくるとは。


前作のような日常の謎もきちんとやりつつ、本格ミステリの大ネタをぶち込んでくる手腕。


ちゃんと伏線も張ってるし、あとから読みなおすと「これはそういうことかー!」と思うこと間違いなし。




あんまり言っちゃうとアレなのでこの辺にしておきますが、できれば前作から読んだほうが衝撃も大きくなるかと思います。


いやー、これは見事。よくこんなことやったな。



傑作です。



トリック以外の部分も、児童養護施設に入ることになった子供たちの心の機微、思春期の葛藤、孤独などなど、小説としても素晴らしい。


読みながら色々と考えてしまったのは久しぶりかもしれない。







そして物語はほろ苦い、というか切ない方向へ。


あぁどうか……と願わずにはいられません。(←読めばわかる)





これは3作目の短編集『空耳の森』も買うしかないかな。