島田荘司 『アルカトラズ幻想』


アルカトラズ幻想/島田 荘司

¥1,995
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日本ミステリー界の巨人、島田荘司のノンシリーズ長編。




※以下、ちょっとだけネタバレしちゃってるかもしれないのでご注意を。たぶん問題ないレベルだとは思うけど念のため。






物語は全部で4章に分かれており、第1章《意図不明の猟奇》では1939年のアメリカで起こった猟奇事件から始まる。


性器や腹部を抉り取られて木に吊るされた死体が発見され、その意図不明の猟奇性に街と警察は騒然となった。


と、事件とはなんの関係もなさそうな「恐竜と惑星と重力」について書かれたとある論文がそのまま掲載された第2章《重力論文》で犯人バーナードは逮捕される。


そして第3章《アルカトラズ》では、その名の通りアルカトラズ刑務所(孤島にある刑務所)でのアレコレが展開され、バーナードは不本意ながら脱走を余儀なくされる。


そこで諸々あって、気付いたらバーナードは不思議な地下世界《パンプキン王国》にやって来るのが第4章《パンプキン王国》。





こうしてあらすじを書いただけでも、この物語のカオスっぷりが分かろうというもの。


普通にミステリーが始まったかと思えば重力についての論文を読まされ、脱出不可能な監獄での生活を送ろうとした矢先に奇妙奇天烈な王国での大冒険。


ミステリーなのに、話が進めば進むほど「これどうなっちゃうの?w」感が増していくのである。


4章の後半なんて、もはや「これはファンタジーなのでしたー」とでも言わない限り〆られないだろうと思う展開ながら、そこは御大のとんでもない奇想と剛腕にねじふせられてしまうから恐れ入る。


そんなカオスが、エピローグでようやくその形を見せる。
しかしこんな話だとは思わなかったよ。確かに作中で何度もその話題(ネタ)は臭わせてたんだけどねぇ。




いやはや参った。
これを思いついて、実際にここまで書けてしまうのはさすがの大ベテランか。


正直、ミステリーとしてのロジックや整合性を求めると瑕疵もあるんだけど、そんなことはどうでもよくなるくらいに読んでる最中にワクワクさせてくれるから許しちゃう。


端正なロジックも良いけど、行きつく先がわからない奇想もミステリーには大事よね。


少なくとも自分は、このわけのわからなさ凄く好きです。





一風変わったミステリーが読みたい人はどうぞ。







読み終わると、このタイトルは秀逸だなと気付きます。