山田正紀 恩田陸 『読書会』


読書会 (徳間文庫)/山田 正紀

¥680
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小説ではなく、人気作家の2人、山田正紀と恩田陸(+α)による読書会の記録である。


司会進行に日下三蔵・牧眞司・三村美衣などの有名書評家、ゲスト作家に笠井潔と萩尾望都という豪華すぎる顔ぶれ。



取り上げられる本もまた豪華で、


半村良 『石の血脈』『岬一郎の抵抗』

アイザック・アシモフ 『鋼鉄都市』『はだかの太陽』

アーシュラ・K・ル・グィン 『ゲド戦記』

沼正三 『家畜人ヤプー』

小松左京 『果しなき流れの果に』

山田正紀 『神狩り』

スティーヴン・キング 『呪われた町』『ファイアスターター』

萩尾望都 『バルバラ異界』

恩田陸 『常野物語シリーズ』



などなど。



作家や書評家であると同時に、とにかく読書家な人たちが集まってるので、議題の本以外にもたくさんの本について語られていくのが楽しい。


そしてさすがに作家や書評家なだけあって、示唆に富んだ論考が目白押しで非常に勉強になります。


こういう感性や論理性を持ってるからこそ小説家になれるんだろうなーとか思ったり。


比べるつもりもないけど、自分がいかに平凡な本読みかということを思い知ったりもしましたorz




出てくる小説家3人(山田・恩田・笠井)の中では、自分は一番恩田陸のファンなんだけど、笠井潔による恩田陸へのさりげない評が深く頷ける。


「恩田陸は何を書いても恩田陸なので、ジャンルによる違いはあまり感じないね」とか、


「恩田さんというのは”語り部”だと思うね。自我が強すぎると、理想的な語り部にはなれない」とか。



特に「自我が強すぎると理想的な語り部にはなれない」というのは自分もなんとなく思っていたことで、恩田さんはあんなに面白くて個性的な作品を書くのに、ほとんど作家の顔(自我)が見えないよなーと思っていた。


自我が強くて面白い作家ももちろんいるけど、そういう作家は「語り部」ではなく「小説家」なんだよねぇ。


「語り部」という意味では、まさに恩田陸は理想の語り部なんだと再認識。




山田正紀については、デビュー作の『神狩り』は凄すぎるし、読書会の後半にいくに連れて韜晦と自虐が多くなってくるので深くは言及せずにおこうw





というわけで、普通にブックガイドとしても秀逸な読書会。


ぜひ《2》を出してほしいなぁ。