宮木あや子 『雨の塔』


雨の塔 (集英社文庫)/宮木 あや子

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とある最果ての地。


お金持ちしか入れない特殊な学校にやってきた、少年のような容姿の少女、矢咲。


そこは決して楽園などではなく、むしろ牢獄である。


憂鬱と倦怠の牢獄の中で、ルームメイトの小津。他部屋の住人、三島と都岡。


登場するのは(ほぼ)この4人だけ。


いわば大富豪の両親たちに「島流し」あるいは「厄介払い」された少女たちの、あまりにも絶望に侵された日常。




特に派手なことが起きるわけではないが、誰もがみな自分ではどうすることもできない滓を抱えている。


滓はいつしか心のすべてを多い尽くして、残るのは空虚だけだ。




これもまた少女たちの百合小説と読めるけど、百合というには些か重苦しい。


みんな誰かを求めていて、たまたま近くにいたのが4人の少女たちだったのだ。(男子禁制)


何かを断ち切ってここに来た人間も、ここでまた繋がりを欲してしまう。


誰かと繋がるということは、その繋がりを失うかもしれないという恐怖と寄り添うことだとわかっているはずなのに。






タイトル通り、憂鬱な雨の日に似つかわしい物語でした。