恩田陸 『蛇行する川のほとり』


蛇行する川のほとり (集英社文庫)/恩田 陸

¥580
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これもまた再読。




ある平凡な夏休み、毬子は憧れの先輩(女子)2人に誘われ、一緒に美術部の絵を仕上げる約束を交わす。


それは一生忘れることのできない夏への扉だった。




本書は3つの章に分かれていて、第一部は毬子視点、二部は芳野視点、三部は真魚子視点となっている。


キーとなるのは、久瀬香澄という女の子。


完璧な少女。憧れの少女。
そして香澄と深く繋がっている芳野から見ると、決して椅子の背もたれに寄りかからない少女。





とまぁ、あらすじや設定を軽く説明してみたはいいが、この本に関しては感想が書けない。


あまりに好きすぎて、もう何度読んだかも把握していないのです。
いまさら感想が書けるはずもない。



昔は毎年夏の終わりに読んでいた。


展開やセリフも半分以上覚えてしまったけど、いまだに読了後は新鮮な感動と切なさが味わえる。



何がそんなに良いのかと聞かれても、自分でもよくわからない。


設定。キャラクター。ストーリー。空気感。
そういったものが全部、自分と波長が合うのかもしれない。
読んでいて、心地いい。


そして何より、読者である自分も、大半の登場人物と同じように、香澄に囚われてしまったのでしょう。


香澄に。
香澄になった芳野に。


それぞれの罪に。






……ああダメだ、思い入れが強すぎる本は上手く感想が書けない。


とにかく読んでみてとしか言えません。


いや、むしろ読んでほしくないかな。
自分だけの物語にしておきたい。(すでに大勢の人が読んだことは百も承知で)









蛇足ですが、この本は色んな版があります。



最初は新書サイズで三分冊され、章ごとに四ヶ月おきに刊行されました。
自分が持ってるのはこの三冊バージョン。


しかし、この二部のラストから四ヶ月も待たされるとか、地獄すぎる……。(読めば意味がわかります)



そしてその後に1冊にまとめられて中央公論新社にて単行本化され、のちに文庫化。


それが今度は集英社に移り、集英社文庫に収められたという具合。



つまりこの本は4つのバージョンがあり、一番新しいのが↑に貼った集英社文庫版。値段も一番安い。



いま読むなら、集英社文庫版をどうぞ。