恩田陸 『六番目の小夜子』
- 六番目の小夜子 (新潮文庫)/恩田 陸
- ¥578
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再読。
著者のデビュー作である。
とある地方の学校に伝わる《サヨコ伝説》。
3年に一度、3年生の誰か一人が「サヨコ」となって卒業までの日々を過ごす。ある《使命》を抱えて。
代々影ながら受け継がれてきたその伝説も、今年が六番目。
そんな六番目の年に、津村沙世子という美少女が転校してきたときから歯車は狂い始めた。
簡単に言えば、学園モノのホラーミステリーなんだけど、すべてに於いて上手い。
「デビュー作には作者のすべてが詰まっている」とはよく言ったものだが、まさにこの本はそれだ。
学校という空間、謎の美少女、作中劇、恐怖や青春、そして残される謎などなど、のちの恩田作品に見られる様々な要素が盛り込まれ、それらの萌芽ともなっている。
そういう意味でもこれは恩田陸入門として相応しいし、できることなら学生(高校生まで)であるうちに読んでおきたいかも。
ミステリーもホラーも感じる本作だけど、やはり一番は青春要素だろうか。
青春だねぇ、って思うよ。
ミステリーもホラーも含めて、ああ青春だなぁ、と。
自分は爽やかな、汗と涙の青春物語とかはあまり好きではないので、こうした妖しげなホラー調で書かれたもののほうが青春を感じることができます。
特に、キーとなる津村沙世子という存在。
謎の転校生。
誰もが惹かれる美少女。
この特異な個性を持ったキャラがいるだけで、もうこの本は面白いこと間違いなし。
恩田さんは、こういうキャラ描くのが上手いよなぁとつくづく思う。
デビュー作からしてこうなんだから、のちのあのキャラとかあのキャラとか、もっと良くなってるわけだ。
学園モノを読むならこれ、という傑作です。