恩田陸 『黄昏の百合の骨』
- 黄昏の百合の骨 (講談社文庫)/講談社
- ¥680
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これまた再読。
この本は、『麦の海に沈む果実』の主人公・水野理瀬のシリーズ第二弾なので、できれば『麦の~』から読むことをおススメします。
あの学園を去った理瀬は高校生になり、かつて祖母と暮らしていた館、通称《魔女の家》に戻ってきた。
そこには血の繋がりはない叔母たちが2人暮らしており、梨南子と梨耶子、そして理瀬の3人が互いの腹を探りながら緊迫の日々を過ごすことになる。
やがて理瀬の従兄弟の稔と亘も合流し、事態は更に緊張感を増していく……。
どこか寓話的だった前作とは打って変わって、誰も彼もが秘密を抱えた心理サスペンスとなっている。
前回で「覚醒(と言っておこう)」した理瀬とはいえど、こうも腹を探り合い、誰も信用できず、緊張の連続では参ってしまいそうになる。
こんな生活絶対したくないわw
闇の住人・水野理瀬。
それは理瀬だけでなく、従兄弟の稔もそう。
そのことが、前作が好きな自分としては少し寂しいかも。
理瀬がどんどん遠くへ行ってしまい、理解不能な人間になっていく。
そのことを代弁してくれるのが、もう一人の従姉妹である亘だ。
亘は理瀬や稔と違ってまともな世界の住人で、理瀬たちの側には来れない。そしてそれをもどかしく思っている。
わかるよ亘。
自分だけが蚊帳の外。どうあっても足を踏み入れられない領域がある。
でも心から大切に想う理瀬は、あちら側の住人。その絶望と疎外感。
そしてそんな亘よりも普通の世界の住人である、地元の高校生の雅雪。
彼がいてくれて良かった。
物語の後半、理瀬と雅雪が二十六聖人で会話するシーンが、なぜか無性に切ない。
決して普通の世界では生きられない理瀬が、ほんの一瞬だけ見せた儚さ。
雅雪、そのまま本当に理瀬を連れて飛んでいってやってくれよ、と思ってしまった。
果たして理瀬はこの先どうなっていくのだろう。
前作で出会った闇のパートナーと共に、世界を牛耳ることになるのだろうか。
そうなってほしいと思う反面、そこか寂寞とした想いも募る。
理瀬はどうあってもこちら側の住人にはなれない。これは《血》だ。
それでもなぜか、「本当にそっちの世界に行ってしまっていいのか?」と問い質したい衝動に駆られてしまうのである。
まぁ実際どうなるのかは、連載が終わった(?)続編、『薔薇のなかの蛇』で明らかになるでしょう。
気になってしょうがないので、どうか早く本にまとめてください。